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子羊少年と王様少年
57.一緒にいる資格
しおりを挟むそしてその日の放課後ボクはいつもの様に、ボクにとって最早馴染み深い場所となっている、フウマ達との待ち合わせ場所にと使っている空き教室の前まで来ていた。
教室の扉を開けようとする手が少し震えてしまう…。
フウマはこんなボクを受け入れて許してくれたけれど、ココロやクウガとも同じ様に行くかなんてわからない。
大好きな二人に許して貰えなかったら、また拒絶されてしまったらって思うと凄く怖い。
でもどうしようもなく怖い事にも逃げず向き合って行かなきゃいけないって事を、ボクはもう知っているから。
それに向き合う為の力を二人にだって沢山貰っていたから。
それにそんな怖さを凌駕する程、それ以上にボクは皆とこれからも一緒にいたいから…!
だから震えてしまう手に必死で力を込めて、なんとかボクは扉を開けた。
「み、みんな…こ…こんにちは…!」
「お!来てくれたな!!
な!二人共、だから心配する事ないってオレが何度も言っていただろう!
子羊くんは明日も必ず来てくれるから大丈夫だって。
ほら!本当だったじゃないか!」
ボクが扉を開けて教室へと入るとフウマはそんな元気な声で出迎えてくれた。
だけど…。
教室の隅の方で、ボク達の様子をココロとクウガの二人はとても不安そうな、酷く怯えた様な顔で見つめていた…。
多分ボクのせいで二人にそんな顔をさせてしまっているんだって事実が凄く辛くて、胸が痛い程締め付けられる…。
それに、いつもは毎日ボクと会う度の半ば恒例行事のようになっていた、クウガからの熱烈なハグが迫ってくる事が今日はなかった。
その行為をボクは照れ臭くて、苦しく感じていたはずなのに、今のボクにはもうしてもらえない事だという事が、自分でも驚く程ととても辛くて寂しい…。
だけど、だからといってボクはもう退いたりなんてしない…!
辛くても、苦しくても、全部それは身から出た錆だ。
それにそんな痛みを必死で乗り越えてでも、前に進みたいと思える程ボクは二人の事が大好きなんだ…!
「あ、あの…」
「ソ、ソウジくん…」
「ココロ、クウガ、二人共昨日は本当にごめんなさい!!」
ボクは二人のいる場所へと直ぐに近づき、何かを話しかけようとして言い淀んでしまっている二人に対して、自分の方から謝罪の言葉を口にしていった。
二人から目を反らしたりせずに、二人を真っ直見つめながら、謝罪と共に頭を下げた。
フウマにはリードして貰ってしまっていたから、二人には今度こそ何としてでも自分からちゃんと謝って…。
――そして出来たら仲直りがしたかった――。
「こんなボクを、そしてあんな過去を、二人は優しい言葉で受け入れてくれたのに、ボクはそんな二人を受け止める事が出来ずに、酷い言葉で傷付けてしまった。
そしてそのまま逃げ出してしまった。
本当にごめんなさい…。
謝って済むような事じゃないかも知れないけど、でも本当に今はその事を申し訳なく思っていて 、そしてまた逃げずにちゃんと向き合おうって思えたのだって二人の優しさのおかげでもあるんだ。
だ、だから都合が良すぎるって思われるかも知れないけど、もしココロとクウガが許してくれるなら、またボクは二人と一緒にいさせて貰いたいんだ。
この償いはどれだけ掛かっても絶対にするから…!
だ、だからこれからもよろしく、よろしくお願いします…!
…ダメかな…?」
そうやってボクはとにかく必死で謝罪の言葉と、仲直りをしたい意志をなんとか言葉にした。
しかし、そんなボクへの二人の反応は、ボクにとって色んな意味で予想外なものだった。
「…え…?
ソウジくん…自分達の事…本当に許してくれるんすか…?」
「これからも…一緒に…いて…いいの…?
こんな…こんなぼく達に…そんな資格…あるの…?」
「え!?は!?
ふ、二人共何言って!?」
だって二人はボクの言葉に対してとても申し訳なさそうにしていたんだから…。
ボクはフウマが懐が広すぎるってだけで、あそこまで酷い事を言ったボクに対して、流石に二人も傷付いたし怒っているだろうと思っていた。
だから許して貰えるかわからないけれど、それも覚悟の上で謝ろうとしたんだ。
でも二人の反応はボクが思い浮かべていたものと全然違った。
なんで…!?
二人が申し訳なさそうにする必要なんて全然どこにもない、だって全部ボクが悪かったんだし。
それにその言葉ってまるで…。
「な、なんで酷い事言われた側の二人が謝られてそんな…申し訳なさそうにしてるの…!?
それに許してくれるとか、資格とかって一体どういう…?
…だってそれはむしろこっちの台詞のはずで…。」
だってそれはまるで、フウマに仲直りを提案された時のボクの言葉と丸っきり同じものだったから…。
でもそれはおかしい…!
ボクは酷い事を言ってしまった側だから、そう思うのは普通だろうけど…。
被害者側の二人がなんでボクと同じ様に、許して貰える事が申し訳ないみたいな感じになってるの…?
二人がそんな気持ちになる必要なんてどこにもないのに…。
「だって…ソウジくんの言葉は…その通りだって…そう思ったから…。
前からずっと…ぼくは能力の事で…悩んでるソウジくんを…昔の自分と勝手に重ねて…図々しく理解者面…してしまっていたから…。
でも…ソウジくんは…ソウジくんで…ぼくとは違うんだよね…。
そんな当たり前の事も…気付かず…分かった風に…無神経な事…言って…。
過去の事で…悩んでる…ソウジくんを…更に追い詰めちゃって…。
ああ言われるのも…当然な位…ぼくは最低だったって…思うから…。」
「自分もっす…。
自分はなんていうか、馴れ馴れしいというか、距離なしというか、無神経というか。
そういう所があるのは自分自身でも自覚してはいるつもりはあったんすが。
それでもソウジくんが結局は優しく受け入れてくれていたから、きっとそれに甘えてしまっていた所があったんだなって。
多分今までだってそれに嫌な気持ちになったりしていたけど、我慢してくれていたんだろうなって。
でもそういう自分の悪癖をあんな風にソウジくんが追い詰められている時にも発揮してしまって、無神経なことズケズケと沢山言ってしまって。
ソウジくんがずっと抱えて来た事を何て事ない物みたいな扱いして…。
マジで自分サイッテーっすよね…。
そりゃソウジくんにああ言われても仕方ないっすよ…。」
「「だからソウジくんと…また一緒にいる資格なんて…。」」
そう二人は最後の一言は台詞を揃える様にして、ボクに自身の想いを伝えてくれた。
二人はボクが一番悪いっていうのに、ボクが言いった事に対して申し訳なく感じていて、ずっと胸を痛めていたんだ…。
その事にボクの胸も締め付けられた…。
だけど、それと同時にボクは二人に対して伝えたいある言葉や想いが浮かんでいた。
それはそもそもの発端で加害者側のボクがそんな事を言う資格がある事かどうか、甚だ疑問な言葉ではあるし、どの面を下げていうんだと我ながらも思って、少し躊躇もしてしまうけども。
それでもそれ以上に、大好きな二人がボクの言葉のせいでこんな悲しい顔をさせてしまっているというのがとても嫌だったから…。
だからボクは、もう一人の大好きな人である愛すべき王様から貰った言葉を思い浮かべながら、勇気を出して言葉を吐き出していった。
「そんな事ない…!!」
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