迷える子羊少年と自称王様少年

ユー

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子羊少年と王様少年

55.次の日、教室にて

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 そして、ボクにとって様々な意味で転機になる様な出来事が立て続けに起こった、とても長い一日が終わって。
次の日の早朝、学校へと登校し自分のクラスの教室へ入った瞬間に、いきなりボクはある二人から話し掛けられた。
その二人とはまぁ言うまでもないかも知れないけれど、委員長と副委員長だった。

「「都築くん、おはよう!!」」
「あ…委員長、副委員長、お、おはよう…!」
「都築くん昨日あの後は大丈夫だったか?
不良達にまた出くわしたりとかしなかったか!?」
「ちゃんと家まで帰ることできた!?」
「う、うん。大丈夫だったよ!
あれから別に危ない目に逢ってないし、家まで普通に帰る事できたから。」
「そっか…そっか!
それならマジで良かった…。」
「ボ、ボクより委員長の方こそ大丈夫なの?
昨日凄く怪我してたし、救急車に乗って病院まで行ったんだよね!
それなのにもう次の日に学校に来て平気なの?」
「ああそれなら心配いらない。
直ぐ病院で手当てをして貰えたし 、それに見た目程怪我じゃなかったみたいで、暫く包帯は取れないし体育も見学になるけど普通に授業を受ける分には問題ないって。
本当大事になんなくて良かった。

だから怪我よりも寧ろ門限を完全にぶっちぎっちまった上に、怪我までして帰ったせいで親にこっぴどく叱られた方がよっぽど堪えたなぁ…。」
「私は側でその様子見てたけど、自分のせいだから言い返す余地もないって感じで凄い面白かったなぁ。」
「何が面白いんだよ!
つーかお前だって門限破ったのも全部俺のせいって庇ってやったんだから少しは感謝しろ!」
「それはだって本当にあんたのせいだし。」
「なんだと!」
「ま、まぁその辺にしとこうよ…!
でもそっか、怪我が酷くなくて本当に良かったぁ…。」

 委員長の言うとおり大事にならなくて、あの場所から全員揃って元の日常へと帰って来ることが出来て本当に良かった。
そんな風にボクがその感動を噛み締めていると、委員長は何だかボクに対して凄く申し訳なさそうな顔を向けていた。

  え?…なんで…?

「都築くん昨日は本当にごめん!
俺君を助けなきゃって、それにああいう奴らは許せないって必死で!
それで考え無しな行動をして反ってもっと危険な目に遇わせてしまって。
ほんとこんなんだからお節介焼きとか言われるんだよな俺って。
人の力になれる人になりたいのに全然ダメダメだ…。」
「え!?いやそんな事ないよ!
委員長は全然悪くない、だってあれはボクを助けようとしてくれた事なんだから!
そもそも元はといえばボクがちゃんと前を見て歩いてなかったのが悪いんだし。
それに最後は何とかなったんだし!
ね!だから謝らなくていいし、そんなに気に病まなくて全然大丈夫だからね!」
「…そ、そっか。
ありがと、都築くん励ましてくれて…。
本当都築くんって優しいな…。
それに比べて俺は…。」
「いや、委員長の方こそ優しいって…!」

 どうやら昨日の事で責任を感じてしまっているらしい委員長を、ボクは必死で宥めた。

「そ、そうそう!過ぎた事を気にしても仕方ないんだから…!
それに都築くんが言う通り何とかなった…いや何とか彼にしてもらったんだよね。
暴風魔…ううん皇くんが私達を助けてくれた。
あの後ちゃんと話せなかったけど、都築くんがしていた話はやっぱり嘘なんてなくて、本当に皇くんは人を助ける為に力を使う良い人で、都築くんと仲良しさんだったんだね!」
「う、うん!そうなんだよ!」

 そんなボクたちの様子に見かねてか、副委員長は話題を変えてくれた。

「私、能力者だからって最初から嫌な人だと決め付けるのは良くはないって、頭では分かっていたつもりでも、やっぱり心の方の何処かでどうせ能力者はって思っちゃってたと思うの。
それに皇くんはあまりよくない噂も聞いていたし。
でもそういう偏見とか噂だけで人の事判断したりするのって良くない事だったなぁって昨日の事で凄く反省したんだ。
都築くんが話していた様に、皇くんみたいに力を人を救う為に使う能力者だっているんだもんね!
今回の出来事で私の中の世界や認識が変わったっていうか、能力者っていいなぁとか思ちゃったなぁ。

確かに皇くんはまぁちょっといや本当にほんのちょっとだけど!変な人だとは思ったけど、それでも少し接しただけで同時に凄く良い人なんだって分かったし。
それに不良達に向かって行く姿がとても格好よくて思わず見とれちゃったな!」
「本当に!?そう思ってくれてボクもすっごく嬉しいよ!!」

 どうやら副委員長は今回の出来事で感銘を受けて、能力者に対する認識を改めてくれたようだ。
それがとっても嬉しかった。
しかも言動から色々誤解を受けやすいフウマの事を褒めてくれていて、ボク達以外の人にも大好きなフウマの魅力が伝わったんだって事が、更に嬉しくなってボクの心も舞い上がっていた。


「皇くんの能力本当に凄かったね!
風がビュンビュンなってて!
それに私能力についてあまり詳しくないから知らなかったんだけど、能力を遠隔操作なんて事できるんだね、凄い!
それがあまりにも自然だったから、私彼が説明するまでずっと都築くんが力を使ってるのかって思っちゃってた位だったよ。」

「あ…!あぁ…それはまあ…。」

 その副委員長の言葉にボクは濁した言葉しか返す事が出来なかった。
いや、嘘を付くのは心苦しくはあるんだけど、それでもフウマがせっかくボクの為にと庇ってくれた優しさを、ボクが勝手に無下にしてしまうのも嫌だったし。
それにボクにとって目の前の二人ももう、とても大切な人達の一人だから、こんな風になし崩し的に真実を明かすのも、やっぱり違うなとも思ったんだ。
いつかもっと自分に自信を持てた時に、ボク自身の言葉で勇気を持ってきちんと二人に本当の事を話したい。

 二人に受け入れて貰えるかは分からないけれど、でも二人が大事な友達だからこそ、その事に真剣に向き合いたいって、そう今は思うんだ――。
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