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子羊少年と王様少年
52.君に出会った
しおりを挟む「そしてそんな天命へと目覚めたオレは、貰った言葉のように人に自身を理解して貰う為、そして偉大なる王として民を導く為、弱き人々を助ける王の政活動を開始していった。
活動を続けていく過程の中で、オレと同じ能力者であるココロと出会って、そしてさらにクウガに出会った。
二人共素晴らしき王であるオレを慕ってくれるようになって、オレの考えや活動に共感をしてくれて、王たるオレと行動を共にしてくれる家来にして、同士になってくれた。
一緒に活動する仲間が少しずつ増えていった事で、オレ達が出来る事もどんどん広がっていって、オレ達の王国はどんどん大きくなり今でもまだまだ成長中だ!
そうやって今に至る。
子羊くん、ここまで話を聞いてどうだった?」
「え?え~とその、何ていうかす、凄い話だったかなぁ…。」
フウマからボクへと振られた質問にボクはそんな風に漠然とした回答をする事しかできなかった。
様々な思いが込み上げてくる様な、衝撃的な凄まじい話だったはずなのに、逆にいろんな思いが同時に溢れ出し過ぎていて、上手く纏められず、言葉が全然出てこなかったからだ。
自身の持つ壮絶な過去を語って貰ったというのに、凄く申し訳なくなる…。
「そうか、そうか!凄かったか!!
そうだな!王たるオレが語る話だものな!
凄い話に決まっていたな!!
いや王とは民の為に常に凛々しく強くあらねばならぬ者だからな、だからこういった自分が弱かった頃の話をする事はとても憚られたし、出来れば誰にも話したくなかったんだがな!
それでもそんな過去の話すら君に凄いと思って貰えるとは!
オレは自身の想像すらも越えた偉大なる存在だったんだな、流石オレだ!!」
だけどそんなボクの言葉にフウマはよく分からないけど、なんだかとても喜んでくれているみたいだった 。
上手く言葉が返せず申し訳ない気持ちだったから、良かったといえば良かったのかも知れないけれど、何かちょっと複雑だなぁ…。
「そして君のした質問への回答だが、実はここまではその前振りなんだ。
君の問いへ答える為にはオレの過去の出来事は避けては通れない話だったからな、だから語る必要があった。
なのでここからが話の本題だと言ってもいい。
オレはそうやって民達の為の活動をしていくなかで、先程から語ってきた事以外にも、ある想いが芽生えていくようになったんだ。」
「ある想い…?」
「ああ。
オレは人を助けたいという思いとは別に、同時にオレが今そんな風に思えているのはあの時オレを救ってくれた人がいたからなんだと思った。
オレへと差し伸べてくれた、その手がなかったら、今のオレはいなかった。
だからオレもかつてのオレのように、自身の存在に悩み俯いてしまっている人がいるなら、自分の時と同じように手を差し伸べてあげたい…!
そこから立ち上がる手助けができるな様な人間になりたいと…。
そう思うようになったんだ。」
フウマはボクを真っ直ぐに見つめながら、なんだかまるで親が幼い子供に向けるような、いとおしい存在を見守っているかのような、そんな暖かな表情を顔に浮かべながら言葉を続けていった。
「そんな想いを抱えながら、ココロとクウガと共に日々を過ごしていったそんなある日、オレは君に出会った――。
あの日の放課後、今やお馴染みとなったあの空き教室で、自身の力を抑えきれずに漏れだしてしまっている君を目撃し、教室中の机や椅子が一斉に浮かびあがる程のあまりの能力の素晴らしさに感動したと共に、
必死で力を扱い、まるで周囲や自分自身の力にも怯えきってしまっているようなその姿に、その表情に、オレはかつてのオレの姿を見たんだ。
そんな、迷える子羊かの様な君の姿に、オレは目を離す事が出来なかった。
そんな君をオレは、側にいて支えてあげたいと、オレがして貰ったように君を導いてあげたいと、そう思ったんだ。」
あっ…。
迷える子羊のようだと、確かに出会った頃にボクをフウマはそう言っていて、今でも彼がボクを呼ぶその独特のあだ名はそこから来ているものだったけれど。
そっか…最初から彼は気付いていたんだ…。
ボクの抱えていたものも、押し込めていた想いも、出会ったその最初の瞬間から気付かれて、分かってくれていたんだ…。
だからフウマはボクと一緒にいてくれようと、してくれていたんだ……。
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