53 / 64
子羊少年と王様少年
52.君に出会った
しおりを挟む「そしてそんな天命へと目覚めたオレは、貰った言葉のように人に自身を理解して貰う為、そして偉大なる王として民を導く為、弱き人々を助ける王の政活動を開始していった。
活動を続けていく過程の中で、オレと同じ能力者であるココロと出会って、そしてさらにクウガに出会った。
二人共素晴らしき王であるオレを慕ってくれるようになって、オレの考えや活動に共感をしてくれて、王たるオレと行動を共にしてくれる家来にして、同士になってくれた。
一緒に活動する仲間が少しずつ増えていった事で、オレ達が出来る事もどんどん広がっていって、オレ達の王国はどんどん大きくなり今でもまだまだ成長中だ!
そうやって今に至る。
子羊くん、ここまで話を聞いてどうだった?」
「え?え~とその、何ていうかす、凄い話だったかなぁ…。」
フウマからボクへと振られた質問にボクはそんな風に漠然とした回答をする事しかできなかった。
様々な思いが込み上げてくる様な、衝撃的な凄まじい話だったはずなのに、逆にいろんな思いが同時に溢れ出し過ぎていて、上手く纏められず、言葉が全然出てこなかったからだ。
自身の持つ壮絶な過去を語って貰ったというのに、凄く申し訳なくなる…。
「そうか、そうか!凄かったか!!
そうだな!王たるオレが語る話だものな!
凄い話に決まっていたな!!
いや王とは民の為に常に凛々しく強くあらねばならぬ者だからな、だからこういった自分が弱かった頃の話をする事はとても憚られたし、出来れば誰にも話したくなかったんだがな!
それでもそんな過去の話すら君に凄いと思って貰えるとは!
オレは自身の想像すらも越えた偉大なる存在だったんだな、流石オレだ!!」
だけどそんなボクの言葉にフウマはよく分からないけど、なんだかとても喜んでくれているみたいだった 。
上手く言葉が返せず申し訳ない気持ちだったから、良かったといえば良かったのかも知れないけれど、何かちょっと複雑だなぁ…。
「そして君のした質問への回答だが、実はここまではその前振りなんだ。
君の問いへ答える為にはオレの過去の出来事は避けては通れない話だったからな、だから語る必要があった。
なのでここからが話の本題だと言ってもいい。
オレはそうやって民達の為の活動をしていくなかで、先程から語ってきた事以外にも、ある想いが芽生えていくようになったんだ。」
「ある想い…?」
「ああ。
オレは人を助けたいという思いとは別に、同時にオレが今そんな風に思えているのはあの時オレを救ってくれた人がいたからなんだと思った。
オレへと差し伸べてくれた、その手がなかったら、今のオレはいなかった。
だからオレもかつてのオレのように、自身の存在に悩み俯いてしまっている人がいるなら、自分の時と同じように手を差し伸べてあげたい…!
そこから立ち上がる手助けができるな様な人間になりたいと…。
そう思うようになったんだ。」
フウマはボクを真っ直ぐに見つめながら、なんだかまるで親が幼い子供に向けるような、いとおしい存在を見守っているかのような、そんな暖かな表情を顔に浮かべながら言葉を続けていった。
「そんな想いを抱えながら、ココロとクウガと共に日々を過ごしていったそんなある日、オレは君に出会った――。
あの日の放課後、今やお馴染みとなったあの空き教室で、自身の力を抑えきれずに漏れだしてしまっている君を目撃し、教室中の机や椅子が一斉に浮かびあがる程のあまりの能力の素晴らしさに感動したと共に、
必死で力を扱い、まるで周囲や自分自身の力にも怯えきってしまっているようなその姿に、その表情に、オレはかつてのオレの姿を見たんだ。
そんな、迷える子羊かの様な君の姿に、オレは目を離す事が出来なかった。
そんな君をオレは、側にいて支えてあげたいと、オレがして貰ったように君を導いてあげたいと、そう思ったんだ。」
あっ…。
迷える子羊のようだと、確かに出会った頃にボクをフウマはそう言っていて、今でも彼がボクを呼ぶその独特のあだ名はそこから来ているものだったけれど。
そっか…最初から彼は気付いていたんだ…。
ボクの抱えていたものも、押し込めていた想いも、出会ったその最初の瞬間から気付かれて、分かってくれていたんだ…。
だからフウマはボクと一緒にいてくれようと、してくれていたんだ……。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

王様は知らない
イケのタコ
BL
他のサイトに載せていた、2018年の作品となります
性格悪な男子高生が俺様先輩に振り回される。
裏庭で昼ご飯を食べようとしていた弟切(主人公)は、ベンチで誰かが寝ているのを発見し、気まぐれで近づいてみると学校の有名人、王様に出会ってしまう。
その偶然の出会いが波乱を巻き起こす。

王道にはしたくないので
八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉
幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。
これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。
学園の天使は今日も嘘を吐く
まっちゃ
BL
「僕って何で生きてるんだろ、、、?」
家族に幼い頃からずっと暴言を言われ続け自己肯定感が低くなってしまい、生きる希望も持たなくなってしまった水無瀬瑠依(みなせるい)。高校生になり、全寮制の学園に入ると生徒会の会計になったが家族に暴言を言われたのがトラウマになっており素の自分を出すのが怖くなってしまい、嘘を吐くようになる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿です。文がおかしいところが多々あると思いますが温かい目で見てくれると嬉しいです。
ヤンキーDKの献身
ナムラケイ
BL
スパダリ高校生×こじらせ公務員のBLです。
ケンカ上等、金髪ヤンキー高校生の三沢空乃は、築51年のオンボロアパートで一人暮らしを始めることに。隣人の近間行人は、お堅い公務員かと思いきや、夜な夜な違う男と寝ているビッチ系ネコで…。
性描写があるものには、タイトルに★をつけています。
行人の兄が主人公の「戦闘機乗りの劣情」(完結済み)も掲載しています。

僕はお別れしたつもりでした
まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!!
親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
大晦日あたりに出そうと思ったお話です。

初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
どうしょういむ
田原摩耶
BL
苦手な性格正反対の難あり双子の幼馴染と一週間ひとつ屋根の下で過ごす羽目になる受けの話。
穏やか優男風過保護双子の兄+粗暴口悪サディスト遊び人双子の弟×内弁慶いじめられっ子体質の卑屈平凡受け←親友攻め
学生/執着攻め/三角関係/幼馴染/親友攻め/受けが可哀想な目に遭いがち
美甘遠(みかもとおい)
受け。幼い頃から双子たちに玩具にされてきたため、双子が嫌い。でも逆らえないので渋々言うこと聞いてる。内弁慶。
慈光宋都(じこうさんと)
双子の弟。いい加減で大雑把で自己中で乱暴者。美甘のことは可愛がってるつもりだが雑。
慈光燕斗(じこうえんと)
双子の兄。優しくて穏やかだが性格が捩れてる。美甘に甘いようで甘くない。
君完(きみさだ)
通称サダ。同じ中学校。高校にあがってから美甘と仲良くなった親友。美甘に同情してる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる