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子羊少年と王様少年
47.格好良さについて
しおりを挟むそれから暫くの時間が経ち握手を終えると、フウマの目が何だかキラキラと輝きだし、何かを話したそうにソワソワし始めた。
「え、えっと、どうしたの…?」
「いや仲直りも済ませた事だし、オレはそれ以外でも君とぜひ話したい事があってな!!
その話に移ってもいいだろうか!?」
「え…?いや、別にいいけど…。」
さっきまでしんみりしていたというのに、もういつものハイテンションな感じに戻っていて、本当にフウマはそういうのを引き摺らない。
それがフウマの美徳ではあるとは思うのだけど、やっぱり拍子抜けはしてしまうなぁ。
でもフウマが話したい事って…?
何かちょっと嫌な予感がするような…?
気のせいだといいけど…。
「いやぁ~先程の大勢の集団へと、単身自身の持つ能力を使って立ち向かって行く子羊くんの姿、ほんっっっとうにカッコよかったなぁ!!
実はその事をさっきからずっと伝えたかったんだ!!」
「う、うわぁああああ!!」
嫌な予感的中ーーーーー!!
あぁ…恥ずかし過ぎる…。
そして羞恥と共に、先程からずっとフウマへと感じていた疑惑が核心へと変わった。
そもそもそうじゃなきゃ、不良達へのフウマの発言とか説明つかない事が多いし。
「あ、あの~もしかして助けに入ってくる前から、ボク達の事ずっとご覧になっていたのですか…?」
「なぜ突然敬語なんだ?
ああ…まぁそもそも彼らの声が大分大きくて路地裏の外にも響いていたからな。
君を探してる最中にたまたまあの辺りへ通りかかった時それで気になって近づいていって、路地裏の外から様子を伺っていたんだ。
そしたら子羊くん達が彼らに拘束されているのが見えたり、恐らく君の学友…ファンボーイくんだったが、が集団でリンチを受けていてその時点でも怪我が酷そうだったので、まずは救急車の手配をしたんだ。
そしてそこへどうやって助けに入ろうかタイミングを伺っていたんだが、そしたら君が彼らを助ける為に立ち上がったではないか!!
その姿に思わず夢中になっていたら、助けに入るのがかなり遅くなってしまっていてな!
それは本当にすまないと思うが、でもギリギリのピンチで現れるというのもまた救世主感があって我ながら素晴らしかったのではないかとも思うな!!」
「あぁ…そうですか……。」
どうやら本当に全部フウマに見られていたようだった。
何かもう、恥ずかしいを通り越して情けなくなってくる。
「でも状況も忘れてついつい見惚れてしまうほど、君の姿は素晴らしかったんだ!
あぁ本当にカッコ良かったなぁ…!!」
「そんな事ないよ…。」
フウマの煽てるような言葉が居たたまれなくなって来て、ボクの口からは否定の言葉が漏れだしていた。
「ボク結構決意して頑張ったつもりだったけど、全然ダメダメだった。
自分に余裕がない事も忘れて倒れて、結局何も出来なくて、最後は全部何とかして貰って…。
全然格好良くなんかない、凄く格好悪いよ…。」
結局ボクの行動には何の意味もなくて。
全部フウマが尻拭いをしてくれたから、どうにか事を収められたってだけで…。
本当に自分が情けない。
だと言うのに。
「こちらの方こそ、そんな事ないぞ!!」
「え…?」
「確かにオレが途中で助けには入ったが、オレは君を守ると約束を交わしていたし、そうじゃなくても家来一人で抱えられない案件を一緒に協力してこなすのは王として当然の事だ。
君は学友には能力者である事を嫌わないようにと隠していたんだろう?
それなのにその事がバレてしまう事も恐れず、君は自身の力で目の前の事へ立ち向かって行った、とても立派だと思う。
それに君は先程の能力の暴走や過去を思い出した事で、人を救う為に能力を使う事自体へ大きな迷いや苦悩が生じていたはずだ。
それなのに君はそんな自分の中に生じた心の壁を、誰の力も借りず自分一人で乗り越えて、それでも人を助ける為に力を使う決意をした。
オレはやはり君は能力だけじゃなく、君の持つその心もとても素晴らしいのだと今まで以上に思ったんだ!!
だから君は格好いいんだ!!」
そんなフウマのボクの否定を更に否定する様な言葉に、ボクの心は一転温かい感情で満たされていった。
本当に…どうしてこうこの王様は、言われた本人すらも言われるまで気付いていなかった、
でも心の奥底ではそんな言葉を言って貰いたいと願っていた様な、そんな暖かな言葉を。
当たり前の様にくれるのだろう…。
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