迷える子羊少年と自称王様少年

ユー

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子羊少年と王様少年

46.仲直り

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 ボクがフウマ達へと言ってしまった事は、いくら後悔しても許して貰える訳がない様な最低な言葉で、謝る機会を与えて貰う事すらボクの我が儘にしかならない様な事だって、そう思っていた。

…でも…そうじゃないの…?
ボクの中で皆がとても大きな存在になっていったのと同じ様に、あんな事があっても崩れてしまわない位ボクも皆の中で大きな存在へと育ってくれていた…?
そんな…そんなボクに都合が良すぎることなんてあるの…?

 そんな思考の中フウマの発言からボクはふと気付いた。
そういえばボクって、誰かと喧嘩をしてそこから仲直りした経験って全然ない…?
もしかしたら一度もないかも知れない。

 ボクは昔から内向的な方で、誰かと衝突する位ならその前に自分から一歩引いてしまうタイプだったし、
一番仲が良かったはーくんはボクをどこか弟の様に見ていて、いつもそんなボクを引っ張ってくれていて、ボクが何か失敗をしても優しく許してくれたから喧嘩なんて全くしなかった。
あの決定的な出来事が初めての衝突だったと言って良いだろう。
その一度で全てが台無しになってしまったけれど…。
それ以降は人に常に怯える様に生きて来たから、そもそも喧嘩なんてするほど仲を深められた相手なんていなかったかも知れない。

 ボクは友達との喧嘩の仕方も、仲直りの仕方も知らなかったんだ。

 そのやり方を仮に昔から知っていたからといって、過去の事をどうにか出来たかなんて事は分からないけれど。

 でも…。




「…ボク本当に…仲直りしても良いの…?
…皆とまた…一緒に居てもいいの…?」
「ああ勿論だ!
それにお互いがまた一緒に居たいと思っているなら、もうそれだけで既に仲直りは成立している様なものなんだぞ?」

 人との関係は一度崩れてしまえばそれで終わってしまうものだと思っていた。
一度誰かと衝突をしてしまえばそこから全て失ってしまうと、そう思っていた。
だから人に嫌われないようにって、ずっと怯えながら生きてきた。
だけど。


――1度ほどかれてしまっても、もう1度結び直せるような、そんな関係だってあったんだなぁ――。











「でも、一回ちゃんと言葉にして謝らせて貰ってもいい?
そこを蔑ろにして仲直りをするのはやっぱりダメだと思うから…。」
「あ…ああ。
君がそうしたいのならオレはそれで構わないぞ。」 

 それは謝罪の気持ちというよりは、そうする事で自分の心に整理を着けたいという感情も大きくて、本当ボクは自分の事ばっかりだと自分に呆れてしまうけど、
それでもフウマにきちんと言葉にして伝えたかったんだ。


「さっきはほんとに本当にごめんなさい!
ボク自分の事しか見えてなくて、ずっと友達を傷付けたのを引き摺っていた癖に今度は皆の事を酷い言葉で傷付けてしまった。
ボクは皆と一緒いるのに相応しくない、そんな資格がない様な過去を持っていたのに、それでも受け入れてくれるくらいに皆が優しすぎるから、
ボクがダメな人間なせいでそんな皆にすらいつか拒絶されてしまったらって思ったら凄く怖くて、逃げてしまった。
一緒にいない方がいいとかも多分全部目を背ける為の言い訳。
我ながら最低だよねボク、本当にごめん…。

でも、今はもう逃げちゃいけないって、怖さに向き合う力を皆に貰っていたんだって気付いて 、何よりボクも皆と本当はずっと一緒に居たくて。
だからこんな不甲斐ないボクだけど、許されるのなら、またこれからも一緒によろしく……よろしくお願いします…!」

 ボクの謝罪の言葉に、フウマも真剣な顔で言葉を返してくれた。

「こちらこそ先程は本当にすまなかった。
君の抱えてきた苦悩や重さは痛い程伝わってきていたというのに、それを軽んじる様な事を言って君を傷付けてしまった。
オレの事を信じて貰えるような言葉を、君に投げ掛けてあげる事ができなかった。
王という人を束ねなければならない者として、本当に不甲斐なかったと思う。
でも、それでもオレにとってももう君は大事な存在で、許してくれるならまた一緒に居たいと思うんだ。
だからこちらの方こそ、これからもオレと一緒に歩み続けて欲しい!!」

 そう言い終えると、フウマはボクへと向けて腕を差し出した。

「え?」
「仲直りの握手をしよう!
それをし終えたら晴れてオレ達は元の関係に戻れるんだって、願いも込めて!!」
「あ…!う、うん!!」


 そうしてボクからも腕を差し出し、ボク達はお互いの腕を握り合った。
フウマの腕から伝わってくる感触は、相変わらず温っかくて心地がよくて。
そんなボクの大好きになっていた温もりを、また感じる事が出来るんだって事が凄く嬉しくて。
本当に仲直り出来たんだって事を強く実感できて。
その温かさにずっと浸っていたくなって、ボク達は暫くの間ずっとそのまま腕を握り合っていた。
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