迷える子羊少年と自称王様少年

ユー

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子羊少年と王様少年

43.決着

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「俺達の事をよく知りもしねぇ奴が、知った風な事言ってんじゃねぇっ!!」

 そう言ったヘッドを筆頭に不良達はフウマに殴りかかろうとした。
しかし、

「うわっ!!」

 そうしようと動いた瞬間、フウマが能力で再び風を引き起こし、行く手が阻まれた。


「力を示しても退いてくれないなら、言葉で説得を試みてみようと口を動かしていたのだが、どうやらそれも難しかったようだな。
ならば、仕方ない…!」

 フウマはそう言うと、今度は生み出した風を上手く使いながら、自身の近くに何か大きな物を引き寄せていた。

 あれは……ゴミ箱…か?
確か少し離れた場所に自販機があったから、その近くに空き缶やペットボトルを棄てる用に設置されていたものだろう。
金属で出来ているタイプで重そうかつ、ぶけたりしたらとても痛そうだ。

 フウマは何の為にそんな物を…?

「今からお前達に、王たるオレの素晴らしき力をお披露目してやろう!!」


――グウオオオォオオオ!!!――

 フウマはその宣言と共に、鈍い風の音を響かせながら能力で新たに風を生み出していく。
その風の塊は瞬く間に、暴走したボクの能力を静めた時に見たものにも似た小規模な竜巻の様な形になっていった。
そして出来上がった竜巻を今度はさっき近くに取り寄せたゴミ箱へとぶつけていった!



 ――ガシャーーーーン!!!!――



 そんな大きな音と共に、竜巻をぶつけられたゴミ箱がみるみる内に崩れ去っていく!
金属の固さなど物ともしないといった感じで、中に入っていたペットボトルや空き缶ごとどんどん竜巻に壊されていき、やがて大した時間も掛からず全ては粉微塵となっていた。


 すごい……。

 フウマの力を知る度に感じる事だけれど、本当にフウマの持つ能力はあまりにも凄すぎて規格外だ。
ボク程ではないにしろ彼も今日の活動と、その直後にあったボクの能力の暴走を抑えるのに力をかなり使って、相当疲れていてもおかしくないはずなのに、そんな事を微塵も感じさせない。

 ボクとはレベルが違う。


「さっきのはオレの持つ素晴らしき力の一端に過ぎないと言っただろう?
だからオレの力の強大さを少しお前達へと見せてやる事にしたんだ!
もちろんオレの本気はこんなものじゃない、オレが全力を出せばこの辺り一帯が唯では済まないだろうからな。
たがお前達を相手にする位ならば、今ので充分、いや充分過ぎるくらいだ!

今の竜巻がもし人へとぶつけられたりしたら、どうなると思う…?」

「くっ、クソが……。」


 流石に今の光景の衝撃に不良達も怯んでフウマへと迂闊に手を出せない様子だ。
そんな不良達へ向けて、フウマは再び口を開いた。

「先程オレはお前達を間違っていると言った、その気持ちは変わらないが、それでも斟酌の余地はあるとも思っているんだ。
だからこれは再びの説得と共に提案なのだが~」
「あぁん…!?」



「お前達……いや君達もいっしょに素晴らしき王たるこのオレと、困っている下々の民を助け救済する為の活動をして見ないか!?」



「は…?」

 

 不良達、そしてボクの頭もフウマの突然の発言に頭がハテナで一杯になった。

 いや、フウマいきなり何言い出して…!?


「いや君達がそんな風になってしまったのは、そんなやり方しか知らなかった、別の選択肢を誰にも教えて貰えなかったせいというのもあるんじゃないかって思ってな!!
このオレですら今の生き方を誰かに教えて貰わねば、今のようなとても立派な王になれていたか怪しいんだ!

だから君達が生き方を知らないというのなら、オレが教えて導いてやろう!
君達はオレの守るべき民への脅威だったが、同時にオレが王として救ってやらなきゃならない弱き民でもあることにさっき気が付いたんだ!

生憎家来はもう足りているので、一般の国民としてという事になってしまうが、これからはオレと一緒に人を助けて居場所を作って行こうっ!!」


 とフウマはいつものノリに似た雰囲気の喋りをして、マシンガントークかつノンブレスで不良達へ向けて言葉を捲し立てていった。
そのフウマの発言にボクの頭は更に驚き一色になっていった。

 本当にフウマって…どこまで……。


「てめぇ…それ本気で言ってんのか…?」
「もちろん本気だ!
オレの言葉はいつだって本気だぞ!!」
「俺達はさっきまでてめぇが大切だと言った奴らをボコろうとしてたんだぞ…!?」

「あぁ、それはきちんと彼らへも謝って貰はねばならないが、そうしてきちんと禊が済んだらすっぱり水に流そう!
オレは王だぞ。
例え過ちを犯してしまった過去があるとしても、居場所を求めて迷っている者がいて、そこから変わっていってくれるのならば、国に受け入れて導びいてやりたい!
オレはそんな器の広~い王を目指しているんだ!!」
「あぁ…もう一体何なんだよ…てめぇは…。」
「だからオレは王だとずっと言っているだろう!」

 本当に…フウマは本人がいう様にどこまで器が広いのだろう…。

 ボクはフウマの発言に驚愕したと共に同時に、あぁこれこそが皇フウマという人間だよなぁと凄く納得してしまった。

 ほんとに強く優しく温かく気高く雄大で…。
過ちを犯してしまっても、迷っていてそしてそこから変わっていけるなら受け入れて導きたい。
きっとそんな考えがフウマの中にあるからこそ、彼はこんなボクを受け止めてくれて、また助けてくれたんだ。

 彼の思想はボクなんかでは全く及ばない。
あまりの雲の上さにボクがフウマに何一つでも敵う事なんて、今後も一生ないんじゃないかなんて…そんな事を思った。



「ふざけやがって…。
うんな話、誰が信用できるかーーーーー!!」

「はぁー。
流石にすんなりとは話を受け入れてはくれないか。
それならばしょうがないな…!!」


 だけど不良達はフウマのそのあまりにもぶっ飛び過ぎた言葉を、まるで少し前のボクと同じように、受け入れる事が出来なかったようだ。
その様子にフウマは再度能力を使う為に力を込めていた。

――グウオオオォオオオ!!!――

 またそんな大きな音を立てて、瞬く間にさっきと同じ様な竜巻が再び出来上がっていった。


「オレの話が聞き入れて貰えないというのならば、じゃあもう仕方ない。
出来ればしたくはなかったがもう力で訴えかけるしかないな…!」
「ふ…ふん。…その位…」
「これがぶつかったら一体人の身体ってどうなってしまうんだろうな…?」
「あ…ああ…あぁ…」
「君達にこの竜巻を受け止める覚悟が本当にあるのかなぁ~?」
「う、うー--ーーー!!」




「お前達!
仕方ねぇここはもう逃げるぞ!!」

「「「「「「「「「りょ、了解!
!」」」」」」」」」

 

 そんな不良のヘッドの宣言と共に、不良集団は全員路地裏から一目散に逃げていった。










「ふーーーーっ!
流石に今日はいくらオレでも色々ありすぎて疲れて、あれ程の力を使い続ける余裕があるわけじゃなかった。
ハッタリが利いてくれる連中で良かった!
あの脅しが通じなかったら少しまずかったかも知れなかったな…。」


 フウマは大きく深呼吸をしながらそう染々語ってくれた。
流石のフウマも雰囲気で誤魔化していただけで、しっかり疲れていたようでそこまで余裕があった訳ではなかったらしい。
それなのにあんなに堂々とした態度で、かつしっかり自体を解決させたのは逆に凄いけれど。

「まぁそれでも終わり良ければ全て良しという奴だ!
きちんと君を守りきって約束を守る事が出来たしな!!」
「う、うん。そうだね…。」
「ふふっ!これでやっと万事解決だ!!」


 そう、フウマが言うと通りやっと終わった。
なんとか自体は解決した。

結局ボク一人の力なんかじゃ人を守る事はできなくて、最後は殆ど全部フウマに事を納めて貰ったようなもので、それにとても情けない気持ちになってしまうけど…。
それでも委員長達がこれ以上傷付けられずに済ます事ができたんだ。



 それは本当に良かった――。
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