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子羊少年と王様少年
34.ボクにとって皆は
しおりを挟む「みんなはね…能力を人を傷付ける為じゃなくて、人を助ける為に使っていたんだ。
常に誰かの為を考えててボランティアに参加したり、依頼を受け持ったりして、その強大な力を自分じゃなく困ってる人を救う為に使う、そんな活動を彼らは放課後にしていた。
ボクは誘われてそんな活動のお手伝いを一緒にしてたんだよ…。」
まずは始めに皆の行動理念と活動内容を話した。
とりあえず能力者ということでの皆全体の誤解を解きたかったから。
そしてそこから1人1人のことも知って欲しかったから、ボクは一人ずつ紹介していく。
「その活動をしているボク以外の3人、えっと~まずは・・・橋田クウガ…くん…。
テレポートの能力でよく人や物の移動とかを手伝っている。
彼は見た目も言動も何というかチャラくて馴れ馴れしい?感じで正直第一印象はあまり良いタイプじゃないかも知れないし、ボクも最初は正直苦手としていたんだ。
で、でも!それだけじゃなくてね!
そういった言動は場を明るくしてくれたり、重い空気をリラックスさせてくれる。
それを考えてできる優しいムードメーカーなんだと彼と接する事でボクは知っていったんだ。」
――だから自分にも気を許してくれちゃって全然良いんすよ?――
――そんな日がいつ来ても良いようにしっかり心の準備をしてますんで、その時が来たら自分達にも是非見せてくれると嬉しいっす!――
ボクはそんな言葉の数々に知らなかった優しさの形をクウガから教えて貰った。
クウガはそんな大切な人の1人だ。
……そのはずだ…。
……でも…。
―――【正義の味方みたいな事してる癖にそんな事もわかんないのかよっ!!】―――
クウガの事を回想しているとそれを邪魔するかのようにボクの叫び声が頭に痛い程鳴り響いた。
ボクはそんな大切な人にとても酷い事を言った…。
ボクは自分の感情が爆発した叫びを口にするのに必死で、そんな言葉をぶつけられたクウガや二人の様子を確認している余裕なんて無かったけれど…。
……いやそれも違うな。
ボクの言葉を聞いて皆がとても傷付いた顔を、悲しそうな顔をしていた事なんて本当は分かっていた…。
気付かない振りをしていただけだ…。
でもそれはボクなんかといたら皆をダメにしてしまうから、皆の為に言ったことで!
……本当に皆の為…?
・・・・・いや!
今そんな事を考えてる状況じゃないじゃないか!
話の途中なんだ、と、とにかく今は話している内容に集中しないと!
「え、えっと次は……滝沢ココロくん…。
サイコメトリーで動物と心を通わせたり、物を探したりしてくれる。
彼は他の灰汁の強いメンバーと比べると大人しく目立たない方に見えるかも知れないけど、それだけじゃない。
凄く優しくて気遣いができる人なんだ。
出会った時からずっと変わらずボクに親切に接してくれて、そっと心に寄り添ってくれた。
そんな思慮深い人。」
――ソウジくんは…ぼくが思ってたよりもずっと…勇気のある人だったから…大丈夫…――
――ソウジくんの頑張り屋さんな所が…色んな人に伝わって…皆が知ってる…良い所になって…それが凄く嬉しい…――
他の二人が上から力強く引っ張ってくれるタイプだとしたら、ココロは同じ地点まで降りて来てくれる様なそんな人で、ボクの弱さを理解して共感してくれる。
そんな優しいココロはボクにとって気付けば一番気を許すことができる様な、そんな存在になっていた。
だけど…。
―――【ボクがしでかしてしまった過ちと勝手に重ねて理解者面するなっ!!】―――
そんなココロの優しさもボクは否定してしまった…。
確かにボクは皆の過去を知らないけど、ボク自身がずっと能力者である事で苦悩して来たんだ。
ココロ達もずっと能力で苦悩してきたことや辛かっただろう事なんて普通に分かる事で、いや…分かってあげられなきゃいけない事で…。
それなのにボクは、皆の過去にも泥をかけた。
「・・・あ!
え、えっと最後に、委員長達も知ってるだけなら知ってると思うけど、暴風魔…こと皇フウマくん…。
風を生み出して自在に操る能力を持ってて、それがすまじい威力な上にかなり便利で、色んな仕事を結構万能にこなしてるよ。
彼は周囲にとても誤解を与えやすい様な言動や発言をしていると思う。
自分の事王だと自称したり、偉大なオレとか素晴らしきオレとか言葉に自分褒めを挟んでくるし、人のことを家来にしてやろうとか迫ってきて。
正直ボクも最初は迷惑な人だと感じていたし 、関わりたくなかった…。」
フウマへの説明は彼とは本当に色んな事があったからか、他の2人よりも凄く長くなってしまった。
「でもね、実際に関わるようになったらどんどん印象は変わっていった。
彼は自分にだけではなく周囲の人達にも溢れんばかりの愛を振り撒いている様なそんな人だったんだ。
偉そうな発言も口先だけじゃなくて、人の上に立つ者とか、強い力を持つ者はどうしたらいいかをとても真剣に考えている。
そしてそういった考えから自分の力を弱い者や困ってる人の為にあろうとしていて、それをきちんと実行できる凄く強い人。
力強いけれどでも優しく人を引っ張ていってくれる、皆の頼れるリーダーなんだ。」
――君は人々の為に自分の身を尽くせる心を持っている素晴らしい人だからきっと続けられるさ!――
――だから信じているんだ!
君なら自身の持つ力で誰かを救う事が出来る日が絶対来ることをオレは確信しているんだ!――
――良く頑張ったな…――
最初はあんなに苦手だったのが嘘みたいに、ボクは接する度にどんどんフウマともっと一緒にいたくなって、とても満たされた気持ちになっていった。
正直最後までフウマのあの独特のノリや王様発言に完全に慣れることはできなかったけど。
それでも前にココロ達が説明してくれた様に、それは口にする事で自分を王様の様な人間であろうと課している事で、
それを口だけの嘘にせず本当の王様みたいに常に民の事を考えて、人の心を温かく包み込んでくれる。
だからボクはフウマの王様節や、そんな王様であろうとしてくれるフウマ自身のことをいつの間にか大好きになっていた。
そのはずだったのに……。
―――【王様ごっこもいい加減にしろよっ!!」】―――
ボクはそんな優しいフウマを酷い言葉で、ごっご遊びだって馬鹿にした。
その言葉にフウマが強いショックを受けた顔をしていた事だって本当はちゃんと知っていたはずなのに、ボクは直ぐにその場から逃げた…。
「…だ、だから3人共凄く良い人だから全然迷惑なんてかけられてないし、ボクは皆の事が大好きだったんだ。
だからね、ボクにとって皆は……」
ボクは負の思考を無理矢理停止させる為に話を続け無理矢理口を動かしていると、途中で言葉が出てこなくて詰まってしまった。
ボクにとってフウマ達ってどういう存在なんだろう?
フウマのいう王様と家来って関係を言葉そのまま飲み込めてたわけじゃないし、それは多分クウガやココロだって同じだろう。
だからそれは違う。
じゃあなんだろう仲間?……なんかちょっと逆に余所余所しい気がする。
同好の志?…これも違う気がする。
ボクにとって皆は暖かくて居心地が良くて、ずっと一緒にいたいと願ってしまっていた人達 。
そんなのボクには初めてで…。
いや?本当に初めてか…?
……ボクにも確かにそんな存在は昔もいたはずだ。
ボクが台無しにしてしまっただけで…。
……あぁそうだ。やっと分かった…。
本当にボクは自分の事をダメなやつだとかすぐ自虐する癖にいつも自分のことばっかりで、本当は一番自分が可愛かったんだ。
だから一番大事なことからいつも逃げてしまっている。
これだって本当なら直ぐに分かる最初から知ってるはずの事なのだから…。
見えない振りでしかない。
――皆がボクにとってどんな存在かなんてそんなの決まってる―――。
「と、とも…だち……。
皆はボクにとって凄く…大切な友達だったんだよ…。」
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