迷える子羊少年と自称王様少年

ユー

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子羊少年と王様少年

33.嫌う理由

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「きゅ、急に叫んだりしてごめん…!
俺昔から能力者の事になるとついカッとなっちゃってて…。」
「私からも謝るね。 
ごめんね都築くん、私から見て都築くんは嘘を言ってる様な感じには見えなかった。
だけどね、私だって能力者にはそんなに良いイメージはないけど、彼は能力者を少し行き過ぎな位嫌っているから都築くんの言葉を信じる事が出来なかったんだと思う。」

「……やっぱりそうなんだね…。
あの、委員長が能力者のことを凄く嫌っているのって何か理由があったりするの…?
そうだとしたらその理由を聞かせて貰うことって出来るかな…?」

 能力者を憎むようになった"何か"があるなら、それをきちんと確かめて置きたくなってボクは恐る恐る訊ねてみた。

「え?いやそれは…」
「まあ、そんな風に思うようになってもしょうがないのかなって思うような出来事だと私も思うけどね。」
「ちょっとお前、勝手に話を!」
「今更そういう所だけ口を瞑ってもしょうがないし、失礼だと私は思う。」
「うぅ……あーもう!!
はーっ!確かにそうだけど…。

都築くん、俺は能力者が嫌い…というよりも恨んでいる…。
それはな、さっきの話にも出てきた俺の従兄弟が関係している事なんだ。」
「え?」


「従兄弟は事故で重い怪我を負ったって話したよな?

それは能力者が引き起こした事故に巻き込まれたものなんだ……。」


「っ!!」

 委員長の言葉にボクは思わず息を飲んだ。

 それは、まるで…。

「能力者のせいで俺の従兄弟は何一つ悪くないのに一生背負っていかなきゃいけない様な怪我を負ったんだ…!
しかもその能力者は元々は従兄弟の友達だったと聞いた。 
友達相手にそんな酷いこと……出来る奴なんだよ能力者って…!
俺はずっと側で従兄弟が事故に合って絶望してた姿も、そこから立ち上がってリハビリを頑張っている姿もずっと見てきた。

だからこそ許せない!
何の罪もない人間の当たり前の幸せを奪った能力者を絶対に許すことはできない!
従兄弟が凄く頑張って怪我から回復してきてはいるけど、それでも事故に遭う前の様に戻る事はないって。
それも全部能力者のせいだ!
だから俺は能力者なんて大っ嫌いなんだ!!」

  委員長の悲しい叫びはボクの身体に響き渡って心臓の鼓動を凄く早くさせた。
それは委員長とその従兄弟の悲しみや辛さが伝わって来たからってだけではきっとないだろう。

 だってその話はあまりにも…。

――まるでボクがはーくんに仕出かしてしまった事そのままみたいで……。


「従兄弟の事故以来能力者に関するニュースとかそういうのも気になるようになって。
そういうのを見て思ったのは能力者のせいで色んな人が傷付いていて、能力者は従兄弟を怪我させた奴みたいな人に迷惑を掛ける様な奴ばっかりだって事だった…。
俺はさらに能力者を嫌いになった。
普通の人の頑張りや幸せを簡単に踏みにじる事が出来る能力者という存在を、俺はけして認める事はできない!

だから俺は能力者だっていう時点でもう信用する事はできない…。
だから都築くんの言葉でも能力者が…ましてやあの暴風魔が、良い人だなんて信じる事はできない…。
ごめん…。」

「私も勿論能力者は好きではないけれど、彼ほどとまではいかないは多分、嫌な言い方になってしまうけど、そこまで彼の従兄弟と親しいわけでは無かったからそれほどの思い入れがないからなんだと思う…。
…それに幾らそういう迷惑者が多いからといって、皆そうだと最初から決め付けてしまうのは良くない事だと思うしね。

でもコイツがそんな風に思っても仕方ないような事だと思うし、同じ立場だったら私だってそう感じるだろうって思うから。
だから都築くんも気持ちを分かってあげて欲しいの。」

 いや、わかってる…。
世界はそこまで狭くないだろうし、その委員長の従兄弟がはーくんだなんて、そんな事あるわけがないだろう。
だからそこは重要じゃない。

 だから重要なのは、ボクのように人を傷つけてしまう能力者はやっぱりいて、そしてそのせいで苦しみ続けている人達がいるって現実だ。
やっぱりボクの犯した罪は終わる事はないんだ。
当たり前の事ではあるんだけど、誰かに傷を負わせてしまう事で苦しむのはその人本人だけじゃない。
その人を大切に思ってくれている全ての人をも一緒に悲しませてしまう、そんな凄惨な行為なんだ…。
委員長達の言葉によってそう、ボクは自分の犯した罪の重さを改めて再認識した。
ボクがした事はけして許される事じゃない。

 たとえ同一人物じゃなかったとしても、ボクは委員長が能力者を憎む原因になった人物と同じ様な事を過去に人にしてしまった人間だ。
ボクが能力者で、そんな人間だともしバレてしまえば、きっと委員長もそして副委員長もボクを軽蔑し嫌うようになるだろう。
それは仕方ない。

「そうだね。
ボクもそんな能力者は絶対に許すことはできないし、委員長が能力者を憎むようになって当然だって思う…。
ボクだって能力者はそんな人達ばかりだと思っていたし…。」

 だけど…。
 それでも…。

「でもね、違うんだ…!
そんな人達ばっかりじゃなかった、皆は、あの3人はそうじゃなかったんだ!
凄く温かくて優しくて…そんな能力者だっているんだって事を、ボクは皆に教えて貰ったんだよ。」

 だけど、だからこそボクみたいな罪人とみんなは、フウマ達は全然違うんだ!
いつも人を助ける事を考え、困っている人の為に能力を使い、そこに出来あがる優しくて幸せな世界を作り上げていった人達。
ボクは仕方ないけれど、そんな素晴らしい人達とボクのような人種が同じ能力者というだけで、一緒くたにされて忌み嫌われてしまうことは納得ができなかった。
能力者はボクみたいな人間だけじゃなく、フウマ達のような良い人だっているんだ。

 だから委員長にそれをちゃんと知って欲しい。

「だからボクにも皆のこと説明させて欲しい。
皆がそんな人何かじゃないって事を委員長達にもちゃんと知って分かって欲しいから。

聞いて。」

「…あ、ああ…。」



 ボクは二人にフウマ達の事を話し始めた。

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