迷える子羊少年と自称王様少年

ユー

文字の大きさ
上 下
31 / 64
子羊少年と王様少年

30.委員長と副委員長

しおりを挟む

「なるほど、電車で慣れない場所まで来て道に迷っちゃってたのか。
それは大変だったなぁ都築くん。」

 踞っていたボクを委員長と副委員長の二人は一体何が合ったのかと凄く心配してくれていたので、ボクは正直に道に迷ってしまったと(もちろんフウマ達とあったこと等は省いて)説明した。
すると。

「じゃあ都築くん、駅まで案内するからこれから俺達と一緒に帰らないか?
どうせ帰る方向は同じだろうし。」
「え、いいの?
二人の予定とかあるんじゃ…。」
「私たちも街のデパートに行く予定は済ませて、丁度もう帰り道だったから心配しなくても大丈夫 。」
「そうそう 。
それに仮にまだ予定があったとしても、都築くんが困ってるんだ、放って置けるわけないしな!」
「…二人共ありがとう…!」

 二人は今のボクにとって願っても無い提案をしてくれた。
ボクはそれに、…ああ良かった!これで帰れる!と安心する気持ちが半分、
でもボクって本当に人に助けられてばっかりだなぁ、と大いに反省する気持ちが半分のない交ぜになった気持ちになっていた。
 
 でもだからといってこれ以上呆けていて二人を余計心配させてもしょうがないので、ボクは気持ちを切り替え二人の案内に従って帰り道を進んだ。
二人は毎日学校で顔を合わせてはいるんだけど、学校以外で目にするのは初めてで、ボクの目には何だか二人の姿が新鮮に映った。
二人の腕には、さっき話に出ていたデパートで買ったものが入っているのだろう大きめの袋がぶら下がっていた。
そこでボクはふと気付く。

  年頃の男女が放課後に態々電車で遠い所まで来て一緒にお買い物。
これって…もしかして…?
そうボクは思い至り二人に謝った。

「ご、ごめん!
二人はデート中だったんだよね!?」
「え?」
「そ、そのボク気付かなくて!
えっとデートって帰る道中も大事だって聞くし、こ、恋人…同士の二人だけの空間を邪魔しちゃって本当ごめん!!」

 まさか二人が付き合っていたなんて!
確かにこうやって見るとお似合いな二人だけど、ボクは色恋沙汰に縁がない人生だったから今まで全く気付かなかった!
こういうのを朴念仁っていうのかな?
と我ながらの鈍感さとデリカシーに欠けた言動にボクが必死で謝っていると、
肩や委員長は顔を真っ赤に、副委員長は滅茶苦茶爆笑をしていた。

 あれどういう反応…?

「ち、違ーーーーー--ーう!!
断じて、違う違うからな都築くん!!
お前も笑ってないで否定しろよ!」
「ふふふっ。いや私達って都築くんから見たらそんな風に見えるだなっておかしくて。
ふふっ。」
「え、違うって…付き合ってるわけじゃないの?」
「違う!断じて違う!!
俺達にそんな不純な関係性は一切ない!!
なぁ、そうだよな!?」
「ふふふっ。私達はただの幼馴染で付き合きあってるわけじゃないよ。」
「幼馴染…。」

 どうやらボクの早合点の勘違いだった見たいだ。

「そうだ、ただの幼馴染だからな都築くん!」
「その事は学校の皆には知れ渡ってるから今さらそんな事言われることってないけど、転校したばかりの都築くんから見たらそうなんだなって思ったらツボに入っちゃって。」
「ご、ごめん!
ボクとんだ早とちりしてた…。」

 勝手に一人で勘違いして、二人に変なことを言ってしまってとても恥ずかしい…。
二人は幼馴染だったんだ。
でも幼馴染かぁ…。
ボクは幼馴染とは自分のせいで絶縁状態になってしまったから、男女の差があっても凄く親しげな雰囲気の二人に少し羨ましくなってしまう。

「でもこんな遠い所まで一緒に買い物に来るなんて二人共すごく仲良しなんだね。」
「いやそれも違くてだな!
今日はプレゼントを選ぶ為に仕方無く…。」
「プレゼント?」
「そう、プレゼントを送りたいけど自分じゃ選べない~って泣き付いて来たからしょうがなくね。」
「泣き付いてなんてないしそれにお前も送りたいってなってただろうが!
いや俺が知り合いに贈り物をしようってなって、でも何をあげたらいいか一人じゃ思い付かなかったからさ。
共通の知り合いだったしそういうの選ぶのって女子の方が得意だろ?

それに家の近くは田舎で品揃えが良い店行こうとすると遠出するしかないから、
今日は二人でここまで来たってだけで、
別に普段からそこまで仲良くしてるわけじゃないからな都築くん!」
「そ、そうなんだ…。」

 なんだか委員長がさっきから凄く必死だ。
ボクの中で委員長は、ボクを優しく助けてくれる印象が強かったからこんなに子供っぽい姿は初めて見るかもしれない。
ボクの勘違いのせいという申し訳なさもあるけれど、同時にそれがやっぱり凄く新鮮に感じて嬉しくもなる。

「ああもうこの手の話は終わりだ、終わり!
そ、それよりも都築くん、転校してきて暫く経ったけど調子はどうだ?
学校にはもう慣れて来たか?」 

 そんな風にしていると、その雰囲気に痺れを切らした委員長が話題を変えてきた。

「え…?うーん…どうだろう?
それなりには慣れたのかなぁ。」
「そっかそれは良かった。
だけどこれから何か困った事があったら何でも俺に言ってくれていいからな!」
「私が何かするまでもなくコイツが先にやってしまうかも知れないけど、私だって全然力になるからね。」
「そ、そんな迷惑だろうし…悪いよ。」
「迷惑なんて俺は思わない。
それに困った時はお互い様だし、俺がそういうの放っておけないタチってだけだからさ。」
「そうそう。あっ都築くん!
授業の方はちゃんと着いて行けてる?
前の学校と進行度が違ってわからなくなったりしてないかな?」
「え?
あ、えっと~ボク国語がちょっと…苦手。」
「国語か!
国語なら俺かなり得意だし教えられるぞ。」
「…本当!?」

 あぁ本当に委員長達って優しいなぁ。
委員長はボクがフウマの誘いから逃げていた頃毎回庇ってくれていたし、それ以外でもいつも転校したばかりのボクを心配して常に親切にしてくれて。
副委員長も委員長ほどじゃなくとも、ボクの事をいつも気にかけてくれていた。
思えば今のボクの周囲には優しくて親切な人達ばかりで、本当にボクは恵まれた環境にいると思う。

 だからもう…これでいいじゃないかと、そう思った。

フウマ達とはあんな事になってしまったし、そもそもボクは皆と一緒にいていい人間ではなかったけれど。
それでもまだ、ボクには優しく声を掛けてくれる人達がいた。

 あの優しすぎる世界にボクに居場所はないし、ボクに彼らも流石に幻滅しただろうから今更戻る事なんてできないけれど。
それでもボクが自分を押さえ付け続けてさえいれば、こんなボクにも優しく気遣ってくれる人がいるんだ。
それでいいじゃないか…。

 そんな生活だってまたいつまで続くかはわからないけれど。
でも罪人のボクが皆と一緒にいる事で、また昔みたいに迷惑をかけてしまうよりはマシなはずだ。

――だからこれでいい……。
――これでいいんだ……。


 ボクはそう自分に言い聞かせるようにして、心の中で呟いていた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王様は知らない

イケのタコ
BL
他のサイトに載せていた、2018年の作品となります 性格悪な男子高生が俺様先輩に振り回される。 裏庭で昼ご飯を食べようとしていた弟切(主人公)は、ベンチで誰かが寝ているのを発見し、気まぐれで近づいてみると学校の有名人、王様に出会ってしまう。 その偶然の出会いが波乱を巻き起こす。

王道にはしたくないので

八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉 幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。 これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。

僕はお別れしたつもりでした

まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!! 親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。 大晦日あたりに出そうと思ったお話です。

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――

天海みつき
BL
 族の総長と副総長の恋の話。  アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。  その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。 「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」  学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。  族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。  何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

魔力なしの嫌われ者の俺が、なぜか冷徹王子に溺愛される

ぶんぐ
BL
社畜リーマンは、階段から落ちたと思ったら…なんと異世界に転移していた!みんな魔法が使える世界で、俺だけ全く魔法が使えず、おまけにみんなには避けられてしまう。それでも頑張るぞ!って思ってたら、なぜか冷徹王子から口説かれてるんだけど?── 嫌われ→愛され 不憫受け 美形×平凡 要素があります。 ※溺愛までが長いです。 ※総愛され気味の描写が出てきますが、CPは1つだけです。

処理中です...