迷える子羊少年と自称王様少年

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子羊少年と王様少年

30.委員長と副委員長

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「なるほど、電車で慣れない場所まで来て道に迷っちゃってたのか。
それは大変だったなぁ都築くん。」

 踞っていたボクを委員長と副委員長の二人は一体何が合ったのかと凄く心配してくれていたので、ボクは正直に道に迷ってしまったと(もちろんフウマ達とあったこと等は省いて)説明した。
すると。

「じゃあ都築くん、駅まで案内するからこれから俺達と一緒に帰らないか?
どうせ帰る方向は同じだろうし。」
「え、いいの?
二人の予定とかあるんじゃ…。」
「私たちも街のデパートに行く予定は済ませて、丁度もう帰り道だったから心配しなくても大丈夫 。」
「そうそう 。
それに仮にまだ予定があったとしても、都築くんが困ってるんだ、放って置けるわけないしな!」
「…二人共ありがとう…!」

 二人は今のボクにとって願っても無い提案をしてくれた。
ボクはそれに、…ああ良かった!これで帰れる!と安心する気持ちが半分、
でもボクって本当に人に助けられてばっかりだなぁ、と大いに反省する気持ちが半分のない交ぜになった気持ちになっていた。
 
 でもだからといってこれ以上呆けていて二人を余計心配させてもしょうがないので、ボクは気持ちを切り替え二人の案内に従って帰り道を進んだ。
二人は毎日学校で顔を合わせてはいるんだけど、学校以外で目にするのは初めてで、ボクの目には何だか二人の姿が新鮮に映った。
二人の腕には、さっき話に出ていたデパートで買ったものが入っているのだろう大きめの袋がぶら下がっていた。
そこでボクはふと気付く。

  年頃の男女が放課後に態々電車で遠い所まで来て一緒にお買い物。
これって…もしかして…?
そうボクは思い至り二人に謝った。

「ご、ごめん!
二人はデート中だったんだよね!?」
「え?」
「そ、そのボク気付かなくて!
えっとデートって帰る道中も大事だって聞くし、こ、恋人…同士の二人だけの空間を邪魔しちゃって本当ごめん!!」

 まさか二人が付き合っていたなんて!
確かにこうやって見るとお似合いな二人だけど、ボクは色恋沙汰に縁がない人生だったから今まで全く気付かなかった!
こういうのを朴念仁っていうのかな?
と我ながらの鈍感さとデリカシーに欠けた言動にボクが必死で謝っていると、
肩や委員長は顔を真っ赤に、副委員長は滅茶苦茶爆笑をしていた。

 あれどういう反応…?

「ち、違ーーーーー--ーう!!
断じて、違う違うからな都築くん!!
お前も笑ってないで否定しろよ!」
「ふふふっ。いや私達って都築くんから見たらそんな風に見えるだなっておかしくて。
ふふっ。」
「え、違うって…付き合ってるわけじゃないの?」
「違う!断じて違う!!
俺達にそんな不純な関係性は一切ない!!
なぁ、そうだよな!?」
「ふふふっ。私達はただの幼馴染で付き合きあってるわけじゃないよ。」
「幼馴染…。」

 どうやらボクの早合点の勘違いだった見たいだ。

「そうだ、ただの幼馴染だからな都築くん!」
「その事は学校の皆には知れ渡ってるから今さらそんな事言われることってないけど、転校したばかりの都築くんから見たらそうなんだなって思ったらツボに入っちゃって。」
「ご、ごめん!
ボクとんだ早とちりしてた…。」

 勝手に一人で勘違いして、二人に変なことを言ってしまってとても恥ずかしい…。
二人は幼馴染だったんだ。
でも幼馴染かぁ…。
ボクは幼馴染とは自分のせいで絶縁状態になってしまったから、男女の差があっても凄く親しげな雰囲気の二人に少し羨ましくなってしまう。

「でもこんな遠い所まで一緒に買い物に来るなんて二人共すごく仲良しなんだね。」
「いやそれも違くてだな!
今日はプレゼントを選ぶ為に仕方無く…。」
「プレゼント?」
「そう、プレゼントを送りたいけど自分じゃ選べない~って泣き付いて来たからしょうがなくね。」
「泣き付いてなんてないしそれにお前も送りたいってなってただろうが!
いや俺が知り合いに贈り物をしようってなって、でも何をあげたらいいか一人じゃ思い付かなかったからさ。
共通の知り合いだったしそういうの選ぶのって女子の方が得意だろ?

それに家の近くは田舎で品揃えが良い店行こうとすると遠出するしかないから、
今日は二人でここまで来たってだけで、
別に普段からそこまで仲良くしてるわけじゃないからな都築くん!」
「そ、そうなんだ…。」

 なんだか委員長がさっきから凄く必死だ。
ボクの中で委員長は、ボクを優しく助けてくれる印象が強かったからこんなに子供っぽい姿は初めて見るかもしれない。
ボクの勘違いのせいという申し訳なさもあるけれど、同時にそれがやっぱり凄く新鮮に感じて嬉しくもなる。

「ああもうこの手の話は終わりだ、終わり!
そ、それよりも都築くん、転校してきて暫く経ったけど調子はどうだ?
学校にはもう慣れて来たか?」 

 そんな風にしていると、その雰囲気に痺れを切らした委員長が話題を変えてきた。

「え…?うーん…どうだろう?
それなりには慣れたのかなぁ。」
「そっかそれは良かった。
だけどこれから何か困った事があったら何でも俺に言ってくれていいからな!」
「私が何かするまでもなくコイツが先にやってしまうかも知れないけど、私だって全然力になるからね。」
「そ、そんな迷惑だろうし…悪いよ。」
「迷惑なんて俺は思わない。
それに困った時はお互い様だし、俺がそういうの放っておけないタチってだけだからさ。」
「そうそう。あっ都築くん!
授業の方はちゃんと着いて行けてる?
前の学校と進行度が違ってわからなくなったりしてないかな?」
「え?
あ、えっと~ボク国語がちょっと…苦手。」
「国語か!
国語なら俺かなり得意だし教えられるぞ。」
「…本当!?」

 あぁ本当に委員長達って優しいなぁ。
委員長はボクがフウマの誘いから逃げていた頃毎回庇ってくれていたし、それ以外でもいつも転校したばかりのボクを心配して常に親切にしてくれて。
副委員長も委員長ほどじゃなくとも、ボクの事をいつも気にかけてくれていた。
思えば今のボクの周囲には優しくて親切な人達ばかりで、本当にボクは恵まれた環境にいると思う。

 だからもう…これでいいじゃないかと、そう思った。

フウマ達とはあんな事になってしまったし、そもそもボクは皆と一緒にいていい人間ではなかったけれど。
それでもまだ、ボクには優しく声を掛けてくれる人達がいた。

 あの優しすぎる世界にボクに居場所はないし、ボクに彼らも流石に幻滅しただろうから今更戻る事なんてできないけれど。
それでもボクが自分を押さえ付け続けてさえいれば、こんなボクにも優しく気遣ってくれる人がいるんだ。
それでいいじゃないか…。

 そんな生活だってまたいつまで続くかはわからないけれど。
でも罪人のボクが皆と一緒にいる事で、また昔みたいに迷惑をかけてしまうよりはマシなはずだ。

――だからこれでいい……。
――これでいいんだ……。


 ボクはそう自分に言い聞かせるようにして、心の中で呟いていた。


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