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子羊少年と王様少年
27.予想外の反応
しおりを挟む「これでボクの昔話は全部おしまい。
今の話を聞いて分かったでしょう?
ボクはみんなと一緒にいていい人間なんかじゃないんだ。」
ボクは自分の過去の過ちを皆に話終えた。
かなり長い話だったのに、皆口を挟んだりもせず静かに聞いてくれていた。
皆の反応を見ながら話すのがこわくて、話している最中は下を向いて目を瞑るようにしながら話しをしてしまっていたけれど、そろそろ顔を上げて前をみなくちゃ、
そう思っていると、水が地面にぽつぽつと落ちていく様な音が聞こえた。
雨?
いや今日は快晴だったし違う。
ああ、じゃあこれは涙の音か?
ボクは過去を話すのが辛くて無意識のうちに泣いてしまっていたのかな?
あれでも、水が落ちる音に紛れて小さく聞こえるこの嗚咽の声は…?
「ってフウマ!?
な、なんでそんな泣いてるの!?」
ボクが顔を上げると、目を真っ赤に腫れさせて、涙がどんどん零れ落ちていって、普段の綺麗な顔がぐちゃぐちゃになってしまっているフウマの姿が飛び込んできた。
え?なんで泣いて?
本人ならともかく他の人が聞いて泣くような要素がある話じゃ…。
「こ゛ひ゛つ゛じ゛く゛ー゛ー゛ん゛! ゙づら゙がっ゙だな゙ぁ゙…!!
゙だい゙べん゙だ゙っ゙だな゙あ゙あ゙あ゙ぁ゙…!!」
「え、ちょっと…何?
全然何言ってるか聞き取れないんだけど…!?」
「うわああああああああんっ……!!」
「いやそんな本格的に泣き叫び出さないで!
え~っとボクが持ってたハンカチ使って良いから、
と、とりあえずこれで拭いて泣きやもうよっ!」
フウマはこれでも涙を堪えていたのか、ボクが話しかけ出すと、更に声を上げて号泣してしまった。
そんなフウマに酷く動揺しながらも必死で宥めるボクという構図が出来上がっていた。
おかしい…。
いつの間にか気付いたらまた、フウマのペースにボクは呑みこまれていた。
あれ?さっきまで凄く真面目な話をしていて、その直後だよね?
そんなボク達の様子にボクが話しだしてから、呆然としてしまっていて沈黙を続けていたココロとクウガも思わずといった感じで、笑い声が零れていた。
「ちょっと2人共っ!!
さっきまでのボク凄く真面目な話してたよね!?
絶対その直後って笑う様な雰囲気じゃないはずだよね!?」
「ふふっ…ご、ごめん…でも…我慢できなくて…ふふっ…。」
「くふふっ、すみませんっす…。
さっきまであんなシリアスな空気出してたのに、今ソウジくんめっちゃテンパってて、その落差でよけい、くふふっ。」
「も、もう!
わ、笑うなーーーーーー!!」
やっぱり、おかしい、おかしい、おかしい。
今って本当にボクの犯した罪を告白して、皆と一緒にいる資格がないって教えた直後だよね?
ボクが想定していた雰囲気と違い過ぎる…。
もっとこう…なんていうか。
もっと暗く重苦しい雰囲気になるんじゃないのかな…?
「はーーっ、すまんすまん。
君が貸してくれたハンカチと、君が必死で宥めてくれたおかげで何とかやっと涙が止まったぞ。」
「あぁ…そうですか…。」
「君の話す過去があまりにも大変で、君の悲しみや辛さが痛いほど伝わってきて、思わず涙が止まらなくなってしまったんだ!
ああ本当に君は大変だったんだなぁ。」
「え?」
「でもこれから王たるオレたちと共にあるんだ、もう大丈夫だぞ!」
「な、何言ってるんだよ!
ボクはもう一緒にいる資格はないって、そもそもボクが罪から逃れて忘れていただけで最初から無かったってちゃんと説明しただろ!?」
フウマはボクが辛くて、悲しそうで泣いていた?
ボク無意識に同情を引くように話しちゃってたのかな…?
でもそれでも、だからこそ、そうやってボクにくれる施しを享受しちゃダメだ。
ボクは取り返しのつかない事をしでかした罪人で、フウマ達とは住む世界が違うんだから。
一番可哀想なのはボクが傷つけた”彼”なのだから。
「でもそれは過去のことだろう?
今は変えていけるものだ!
そして素晴らしきオレ達といれば必ず変わっていける。」
「過去の事なんかじゃない!
ボクが傷付けた彼は…はーくんは今だってその傷をずっと背負って生きてるんだよ!?
ボクだけそれを忘れて過去の事になんてしていいはずがないだろ!!」
「その件もだな、オレは君が悪いとは思わないんだ。
君はその友達を善意で助けようとしたのだろう?
自分の意志で他者に傷を付けたわけじゃないんだ、君は罪人なんかじゃない。
失敗は誰にだってあるものだ。
王たるこのオレだってこの前君にミスのフォローをさせてしまったしな。
それにオレは同時に嬉しくもなったんだぞ?
君は幼い頃から今のように人を助けたいと思う献身の精神を持っていたんだな!
確かに結果は伴わなかったかもしれない 、だが今の君と同じ、昔の君は素晴らしい心の持ち主だったんだ!!
だからそんな風に自信を卑下したりせず、オレ達とこれからも共に歩もう。」
フウマが口にする言葉はいつもと同じで、相変わらず力強くでも優しくて、暖かい。
その暖かさにボクはいつも満たされた気持ちになり、ボクはそんなフウマの言葉がいつしか大好きになっていた。
そうフウマはいつもと変わらない。
でも、今はフウマの言葉がしっかり頭に入ってこない。
むしろボクの心はどんどん冷えきっていくのを感じた。
失敗は誰にでもある?ボクは悪くない?
ボクのその一度の失敗で何一つ悪くないはーくんが一生苦しむことになったのに?
昔のボクが素晴らしい?
違う!あんなのヒーローになりたいって調子に乗った子供の好奇心で献身でもなんでもないし、結果失敗したじゃないか。
あ…。
ダメだ、これはダメだ。
大好きになっていたはずのフウマのくれる言葉がどんどん…どんどん…
……色褪せていっていく…。
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