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子羊少年と王様少年
26.閉じ込めていた想い
しおりを挟むそんな状況に耐えられなくて、ボクは気付いたら家に1日中毎日引きこもる生活を送るようになった。
お母さんはボクが傷心なのを気にして、それを優しく受け入れてくれたけれど、本当に心配ばかりかけてしまって申し訳なかった。
そうやって過ごす毎日の中で、テレビを付けているとボクがそういった事を気にするようになったせいか、
今まで全く目にとめてもいなかった内容のニュースが、痛い程耳に入ってくるようになった。
超能力者が能力を使って起こした犯罪や、能力者による迷惑行為を扱った報道。
あぁ能力者って本当に普通の人にとっては凄く迷惑な存在なんだなぁ。
そしてボクがはーくんにした事って、ニュースで取り上げられてる犯罪者となんら変わらないじゃないか。
ボクだって変わらない、同じなんだ…。
そんな風に気持ちがどんどん沈んでいく。
そんなボクの心情が顔に出てしまっているのか、そんな時にお母さんは凄く悲しそうな顔でボクに謝った。
「ソウジ本当にごめん…。
全部お母さんが悪いの、ソウジを普通の子に産んであげられなくて、本当にごめんなさい…。」
お母さんは何も悪くないのに。
全部ボクが悪いのに。
でもその時ボクの感情も決壊した。
「お、お母さん…。うぇっ…ボ、ボク最初ボクが能力者だって聞いて凄く嬉しいっと思ったよ…。
ヒーローみたいでかっこいって…。
ひっくっ…でもボクの能力のせいで…はーくんを傷付けて…皆に嫌われて…ボ、ボク一人になっちゃった…。
うえぇっ…ボクに能力なんかなかったら…こんな事にはならなかったのかな…?
…ボクもう人に嫌われるのも…一人ぼっちになるのもやだぁ…。」
「だから今はもう…ボ…ク…普通がいい…。
ボク普通になりたいっ……!」
ボクが初めて、普通になりたいと、普通が一番だと強く望むようになったのはその時だった。
それからボクは、お母さんのお仕事とも都合を合わせながら、引っ越しをして、新しい場所で能力者である事を隠して、普通の人間として新しく生活を始めた。
でも、クウガ達が教えてくれたように、今思うと自分の能力を抑え込もうとする行為はかえって逆効果だったようで、自分を偽ろうとすればする程上手くいかず、結局あまり馴染めずまた家に引き込もってしまう。
そうしてまた新しい場所へと転々としていって、それを繰り返していった。
最近越して来た今住んでいる地は一体そのいくつ目だろうか。
そんな事すら曖昧になる位の回数というのは確かだ。
そんな日々を送っていく中で、ボクは大切な親友の人生を台無しにしたという事実を常に背負って生きていくのは、あまりに辛すぎたのか、ボクはその過去に蓋をして忘れていってしまっていた。
ただ、能力者は人を傷付け迷惑をかける、怖がられて嫌われてしまう、だから普通がいい 、普通でいなくてはいけないと 、という強い意識だけを残して。
その強い思いのきっかけが朧気になっていたというのに…。
ボクがフウマ達と出会うまで能力者はみんな人に迷惑かける嫌われ者だと思っていたのなんて、そんなの自分自身が一番そういう存在だったからに他ならなかった。
それを、同じような出来事を再び経験した事で完全に思い出してしまった。
ボクは自分が罪人であることも忘れて、フウマ達が作った暖かくて優しい理想の世界の住人に受け入れて貰っていた、なれると思ってしまっていた。
でもそれは本当はダメな事だったんだ。
ボクは自分の能力を人の為にと日々頑張っていた皆と一緒にいる資格がない人間だったのだから…。
ボクが嫌な事に蓋をしてフウマ達のくれる優しさを享受して笑い合って過ごしている時にも、同じ時間にあの時ボクが傷付けた彼は、今もボクのせいで苦しんでいるのだろうから。
そんなの許されるわけがない。
それにボクは過去に人を傷付けた、人を傷付けてしまえる人間なんだ。
今日だって危なかった。
フウマ達のことだっていつか本当に傷付けてしまっても少しもおかしくない。
――だからこんなボクなんかは、皆と一緒にいる人間として、相応しくないんだ。
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