迷える子羊少年と自称王様少年

ユー

文字の大きさ
上 下
26 / 64
子羊少年と王様少年

25.消えない痛み

しおりを挟む

 その後、はーくんが自分のせいで落っこちてしまってパニックになったボクは、今度こそ公園の外へ出て近くにいた大人に助けを呼び、その人に救急車を呼んで貰ってはーくんは病院へと運ばれた。
はーくんは直ぐに緊急の治療に入りなんとか一命はとりとめた。
そうなんとか一命は…。
だけど。

 そんな事があった数日後。
はーくんが入院する病室へ面会が許され、ボクは謝りにいった。
自分のせいで大変な事態になった自覚はあったけれど、ボク達は本当に常に一緒にいる様な親友だったから、きちんと謝れば仲直りができると思ってたんだ。

 そんなに甘いわけがないのに…。

「…えっとはーくん久しぶり…。
あの、この前はほんとにごめん。それで
「治らないって。」
「え…?」
「もう俺の足は治らないんだって。
これからどれだけ治療しても 、俺がどれだけリハビリを頑張っても、今までみたいに普通に歩いたり、走ったりできることはないって。」

そうボクはけして取り返しのつかない事をしたのだから。
許されるわけがない。

「あ、はーくん…ボク…あの…」
「なんでお前俺に能力者だってこと黙ってたんだよっ!
なんでいつもみたいに俺の言った通りにしなかったんだよ!
お前はいつも誰かが助けてやらなきゃダメなヤツで、お前もそれで納得してただろ。
大人しくお前が助けを呼んでいたらこんなことにならなかったのに…。」
「あ…はーくん…。」

「もうそんな風に気安く呼ぶな!
お前が勝手なことをしたせいで俺のこれからの人生全部を奪われたんだ。

お前のせいでおれの人生が台無しだ!
絶対に一生許さないからな…!!」 

 そうやって、ボクは自分の犯した罪を突き付けられた。
こんな苦しそうでつらそうで、そしてボクを憎しみも込めたような目で見つめるはーくんの顔を、ボクは見たことがなかった。
そう、ボクのせいでそんな顔にさせてしまったんだ…。
 
「はやく出てけよっ!
お前の顔なんかもう二度と見たくない!
絶交だ。」

 こうしてボクは一番大切な友達に、一生消えることのない傷を残してしまった。
そしてボクは同時にその友達を失った。
ボクのちっぽけで幼稚なヒーロー願望なんかのせいで全てを台無しにした。
それ以来一度も彼には会っていないけれど、彼は今もずっとボクがつけた傷のせいで苦しんでいるのだろう…。




 ボクの犯した罪への罰はこんなものじゃ終わらなかった。
人一人の人生を潰したんだ、こんなもので済むわけがなかった。

 ボクが超能力者で、その能力ではーくんに大怪我を負わせたという事実は瞬く間に周囲に広まった。
そしてそれから、元々仲良くしていた友達も含めて皆がボクの事を避けるようになった。
まるでボクがいないものみたいに。

――あの子がハジメくんを怪我させたっていう子?ハジメくん危うく死にかけたんだって――

――何それこわーい、やっぱり超能力者が周りに迷惑かけてばかりの乱暴者って噂本当だったんだ――

――俺たちもアイツに近づいたら何されるかわからないぜ!あ、アイツこっち見た…逃げなきゃっ――


 ボクの力を怖がってか、直接何かされたり、悪口を言われたりすることはなかったけど、
避けられたりする一方で、陰でヒソヒソボクの陰口を言っているのはよく聞こえて来てしまって、それがむしろ辛かった。
それにそれが根も葉もない噂だったら、まだ弁明の余地はあるけれど、その言葉は全部事実だ。
でもだからこそ何も言い返すことは出来ず、それが本当につらくて…。
でも全部ボクが悪いんだから、それはしょうがない事で。

 でもこのままではいけないと、人の輪にはいっていこうと、話しかけて見ようとした事もあった。
でも。

「あ、あのボク確かにはー…ハジメくんを怪我させちゃったけど、でもボクがやりたくってやったわけじゃなくて、
それでだからまた皆と仲良くできたらって…」

 それでも、ボクはただでさえ精神的に不安定な状態が続いているのに、ちゃんと話さなきゃと気負っていつもより更に心に負荷がかかる事で、そういう時は決まって能力を暴走させてしまっていた。
周囲にあるものを無意識に念力で浮かべて飛ばしてしまう。

「やっぱコイツ能力で俺たちの事もやつけるつもりなんじゃん!」
「能力者…こわい…。」
「みんな逃げろーー!!逃げないとやられるぞっ!」

「あ、ちがっ!…あぁ…。」


だから全然逆効果で、むしろさらに余計周囲に怖がられてしまった。
怖がられて嫌われて逃げられるなんて、そんなのヒーローどころか丸っきり悪役じゃないか。

 ボクは大切な親友を失っただけじゃなく、みんなに嫌われて、
気付けば一人ぼっちになっていた。
でも全部自分自身が犯した愚行のせいだ…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王道にはしたくないので

八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉 幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。 これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

学園の天使は今日も嘘を吐く

まっちゃ
BL
「僕って何で生きてるんだろ、、、?」 家族に幼い頃からずっと暴言を言われ続け自己肯定感が低くなってしまい、生きる希望も持たなくなってしまった水無瀬瑠依(みなせるい)。高校生になり、全寮制の学園に入ると生徒会の会計になったが家族に暴言を言われたのがトラウマになっており素の自分を出すのが怖くなってしまい、嘘を吐くようになる ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初投稿です。文がおかしいところが多々あると思いますが温かい目で見てくれると嬉しいです。

ヤンキーDKの献身

ナムラケイ
BL
スパダリ高校生×こじらせ公務員のBLです。 ケンカ上等、金髪ヤンキー高校生の三沢空乃は、築51年のオンボロアパートで一人暮らしを始めることに。隣人の近間行人は、お堅い公務員かと思いきや、夜な夜な違う男と寝ているビッチ系ネコで…。 性描写があるものには、タイトルに★をつけています。 行人の兄が主人公の「戦闘機乗りの劣情」(完結済み)も掲載しています。

僕はお別れしたつもりでした

まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!! 親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。 大晦日あたりに出そうと思ったお話です。

初恋はおしまい

佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。 高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。 ※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

どうしょういむ

田原摩耶
BL
苦手な性格正反対の難あり双子の幼馴染と一週間ひとつ屋根の下で過ごす羽目になる受けの話。 穏やか優男風過保護双子の兄+粗暴口悪サディスト遊び人双子の弟×内弁慶いじめられっ子体質の卑屈平凡受け←親友攻め 学生/執着攻め/三角関係/幼馴染/親友攻め/受けが可哀想な目に遭いがち 美甘遠(みかもとおい) 受け。幼い頃から双子たちに玩具にされてきたため、双子が嫌い。でも逆らえないので渋々言うこと聞いてる。内弁慶。 慈光宋都(じこうさんと) 双子の弟。いい加減で大雑把で自己中で乱暴者。美甘のことは可愛がってるつもりだが雑。 慈光燕斗(じこうえんと) 双子の兄。優しくて穏やかだが性格が捩れてる。美甘に甘いようで甘くない。 君完(きみさだ) 通称サダ。同じ中学校。高校にあがってから美甘と仲良くなった親友。美甘に同情してる。

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

処理中です...