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子羊少年と王様少年
25.消えない痛み
しおりを挟むその後、はーくんが自分のせいで落っこちてしまってパニックになったボクは、今度こそ公園の外へ出て近くにいた大人に助けを呼び、その人に救急車を呼んで貰ってはーくんは病院へと運ばれた。
はーくんは直ぐに緊急の治療に入りなんとか一命はとりとめた。
そうなんとか一命は…。
だけど。
そんな事があった数日後。
はーくんが入院する病室へ面会が許され、ボクは謝りにいった。
自分のせいで大変な事態になった自覚はあったけれど、ボク達は本当に常に一緒にいる様な親友だったから、きちんと謝れば仲直りができると思ってたんだ。
そんなに甘いわけがないのに…。
「…えっとはーくん久しぶり…。
あの、この前はほんとにごめん。それで
「治らないって。」
「え…?」
「もう俺の足は治らないんだって。
これからどれだけ治療しても 、俺がどれだけリハビリを頑張っても、今までみたいに普通に歩いたり、走ったりできることはないって。」
そうボクはけして取り返しのつかない事をしたのだから。
許されるわけがない。
「あ、はーくん…ボク…あの…」
「なんでお前俺に能力者だってこと黙ってたんだよっ!
なんでいつもみたいに俺の言った通りにしなかったんだよ!
お前はいつも誰かが助けてやらなきゃダメなヤツで、お前もそれで納得してただろ。
大人しくお前が助けを呼んでいたらこんなことにならなかったのに…。」
「あ…はーくん…。」
「もうそんな風に気安く呼ぶな!
お前が勝手なことをしたせいで俺のこれからの人生全部を奪われたんだ。
お前のせいでおれの人生が台無しだ!
絶対に一生許さないからな…!!」
そうやって、ボクは自分の犯した罪を突き付けられた。
こんな苦しそうでつらそうで、そしてボクを憎しみも込めたような目で見つめるはーくんの顔を、ボクは見たことがなかった。
そう、ボクのせいでそんな顔にさせてしまったんだ…。
「はやく出てけよっ!
お前の顔なんかもう二度と見たくない!
絶交だ。」
こうしてボクは一番大切な友達に、一生消えることのない傷を残してしまった。
そしてボクは同時にその友達を失った。
ボクのちっぽけで幼稚なヒーロー願望なんかのせいで全てを台無しにした。
それ以来一度も彼には会っていないけれど、彼は今もずっとボクがつけた傷のせいで苦しんでいるのだろう…。
ボクの犯した罪への罰はこんなものじゃ終わらなかった。
人一人の人生を潰したんだ、こんなもので済むわけがなかった。
ボクが超能力者で、その能力ではーくんに大怪我を負わせたという事実は瞬く間に周囲に広まった。
そしてそれから、元々仲良くしていた友達も含めて皆がボクの事を避けるようになった。
まるでボクがいないものみたいに。
――あの子がハジメくんを怪我させたっていう子?ハジメくん危うく死にかけたんだって――
――何それこわーい、やっぱり超能力者が周りに迷惑かけてばかりの乱暴者って噂本当だったんだ――
――俺たちもアイツに近づいたら何されるかわからないぜ!あ、アイツこっち見た…逃げなきゃっ――
ボクの力を怖がってか、直接何かされたり、悪口を言われたりすることはなかったけど、
避けられたりする一方で、陰でヒソヒソボクの陰口を言っているのはよく聞こえて来てしまって、それがむしろ辛かった。
それにそれが根も葉もない噂だったら、まだ弁明の余地はあるけれど、その言葉は全部事実だ。
でもだからこそ何も言い返すことは出来ず、それが本当につらくて…。
でも全部ボクが悪いんだから、それはしょうがない事で。
でもこのままではいけないと、人の輪にはいっていこうと、話しかけて見ようとした事もあった。
でも。
「あ、あのボク確かにはー…ハジメくんを怪我させちゃったけど、でもボクがやりたくってやったわけじゃなくて、
それでだからまた皆と仲良くできたらって…」
それでも、ボクはただでさえ精神的に不安定な状態が続いているのに、ちゃんと話さなきゃと気負っていつもより更に心に負荷がかかる事で、そういう時は決まって能力を暴走させてしまっていた。
周囲にあるものを無意識に念力で浮かべて飛ばしてしまう。
「やっぱコイツ能力で俺たちの事もやつけるつもりなんじゃん!」
「能力者…こわい…。」
「みんな逃げろーー!!逃げないとやられるぞっ!」
「あ、ちがっ!…あぁ…。」
だから全然逆効果で、むしろさらに余計周囲に怖がられてしまった。
怖がられて嫌われて逃げられるなんて、そんなのヒーローどころか丸っきり悪役じゃないか。
ボクは大切な親友を失っただけじゃなく、みんなに嫌われて、
気付けば一人ぼっちになっていた。
でも全部自分自身が犯した愚行のせいだ…。
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