迷える子羊少年と自称王様少年

ユー

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子羊少年と王様少年

19.力と幸福

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 そこからもボク達4人の会話はまだまだ続いていた。

「時に子羊くん。
もう君はオレが初めて会った時に見た様な、力が抑えきれず溢れだしてしまうような事は、最近はあまり起こってないんじゃないか?」
「え?な、何急に…。」

 そうフウマに唐突に言われて、ボクは最近の事を思い返して見た。
ここ最近はボクにとってはあまりにも激動の日々過ぎて、そんな事気に掛ける事すらしてなかったけど、言われて見ればフウマの言うとおりここ最近は精神面とか体調面に左右されて、能力が溢れ出してしまう様な感覚に襲われることはなかった。
というか今更だけど、フウマは最初に会った時のアレが能力を制御しきれずにいたものだって知ってて、なおボクの力を素晴らしいって言ってくれてるんだなぁ。

「ほんとだ。
ボクそれで結構悩んだりとかしていたのに、最近は全然そういう事なかった。」
「ふふーん~やはりそうだったか!
王たるオレと一緒に家来として過ごした日々の賜物だな!!
つまり家来にと誘ったオレが君の悩みを解消したという訳だ、流石が偉大なるオレ!
はははっやはりオレは素晴らしき王だなぁ!」
「え?いやどういう事なの!?」

 フウマが自分で勝手に納得して、ろくに説明せずいつもの自分褒めモードに移行したせいで、ボクはまだちんぷんかんぷんだ。
ボクが困惑していると、そういう時に通訳役を勝手出てくれるココロとクウガが解説してくれた。

「ソウジくんが…能力を使って…毎日頑張ってるから…平気になったってことだよ…。」
「ボクが頑張ってるから?」
「能力は心と身体とかその時のコンディションに左右されやすいのは知ってるっすよね?
だからこそ能力を使わないようにって無理に押し込めるのは、本来体によくないむしろ逆効果な行為らしいんす。
能力を使わない様にって常に気を張り続けるのは心にも身体にも常に負荷がかかっていて、
それで力も上手くコントロールできず、更に負荷をかけていくって悪循環に陥ってしまうって。」

 あ…。
そうか。ボクは人に嫌われたくないから普通でいたいと、だから能力を隠さなくちゃと、いま思うと自分で自分を縛りつけるように、力を抑え込んできたけど、それはかえって力の暴走を招く逆効果な行為だったのか…。

「そうだったんだ。
ボクずっと力隠して普通にならなきゃって必死だったから、知らなかったな…。」
「ま、まあ能力に関しての知識とかは、広く知れ渡ってるわけじゃないから無理ないっす!
何分能力者って数が少ない希少な…選ばれた存在?らしいっすし?
それにソウジくんは今は人の為に力を使っていて、それでソウジくん自身の身体も癒せてるんすから、え、えっと結果オーライ?っす。」
「ぼく達の活動も…単純に力を人に役立てる場を…貰えて嬉しいってだけじゃなくて…。
力をため込まず…定期的に吐き出せる場所があるって…ぼく達の健康的にも…凄くありがたい事なんだ…。」

 ああ…ボクって本当に何も知らなかったんだなぁ。
ボクは臆病で、人の顔色を伺って常に他人に、そして自分自身に怯えるようになっていたけど、結果的にそうしていた事で余計自分で自分の首を絞めるように土壺にハマっていたんだ。
そしてボクが勝手に一人で沈んでいってた一方で、みんなは前を向いて人の為にあることで、自分自身すら救っていた。
ボクは今とても幸せなはずなのに、過去の愚かな自分が思い起こされる事でちょっと気分が沈んでしまった…。

「ああ…ボクって本当にダメダメなんだなぁ…。」

 ついボクから弱音が漏れてしまうと、

「そんな事ないぞ!!」

 さっきまで自分に酔いしれるターンへ入っていたフウマが、叫ぶようにボクに言葉を投げてくれた。

「仮に君が過去の自分にそんな風に思ってしまうとしても、君はそれを振り切って今はオレの家来として毎日頑張ってるじゃないか。
急に生き方を変えるというのは、常に王たるオレとはまた違った力のいることだ。
だから君はとても素晴らしい!!」

「フウマくんの言うとおりっす。
大事なのはこれから、ソウジくんは今や自分達には欠かせない、そう最早マブダチっすよ!」
「ぼくもフウマくんと出会う前は…自分の力が怖くて否定してたんだ…。
だからソウジくんも…これからぼく達と一緒に…力と向き合っていけるなら…それで全然いいと思う…。」

 そしてそんなフウマにクウガとココロも続いた。
ああ本当に皆優しいなぁ。
ボクの体に染み着いた性格はそう簡単には変わらなくって、理想の世界にいる今でもマイナスな方向へ引き摺られてしまう事もあるけれど、そういう時に励ましてくれて、引き戻してくれる人がいる。

 そういう事もとても幸福な事だって思うんだ。

 ボクが力を漏れ出さず制御できているのは、もちろん3人がいう様に力を抑えず使うようになったっていうのもあるのだろうけど、
きっとそれだけじゃない。
みんなと一緒に人を助ける為に力を使って笑い合う日々がとても幸せで、
すこし前までの全てに怯えて常に気を張り続けていた日々とは大違いで。

 ボクが心を乱して、能力をも乱れさしてしまう様な隙なんて見当たらないほど、毎日がとても満たされているからなんだろう。

「み、みんなありがとう…。
ボクこれからももっと皆の為にも、そして自分の為にも、能力を使っていける様にが、頑張る…ね…!」

 やっぱり、フウマ達に好意の言葉を返す事は恥ずかしくて上手く言葉が出てこないけれど、
でも少しでもこの溢れんばかりの幸せを相手に返せる様にボクは頑張って口を動かした。
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