迷える子羊少年と自称王様少年

ユー

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子羊少年と王様少年

18.幸せな空間

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 その日の僕達の主な仕事は、荷物運びだった。
以前はクウガの移動能力とフウマの風の力による機動力に頼りきって、ココロと一緒に少しずつ運ぶのも手伝う事しかできなかったけど、
今のボクはもうきちんと自分の能力である念動力(サイコキネシス)の力を使って、一度に沢山運ぶのを手伝う事ができる。
その事実が嬉しくって、更に能力を使って荷物を運ぶのにも精が出てしまって、ついついボクが力を使って持ち上げられる限界まで持ってしまっていた。
いけないいけない。
これでもし落としてしまったらどうするんだと少し反省!
でも。

「ソウジくんこんなに沢山の荷物運んでくれてありがとう!
その力サイコキネシスって言うんだっけ?
これ程の量を一度に持てるなんて凄い力だねぇ。」
「っ!!
い、いえいえこれ位余裕ですよ!
ボクの方こそボクの力でお役に立つ事が出来て本当にありがたいし、それに嬉しいですっ!」

 でもやっぱりこうやって感謝されるのも本当に嬉しくって、ボクは結局いつも力を限界ギリギリまで使って運んでしまうんだ…。
力を使えるようになってから今まで、そして今日も、ボクは今まで以上に関わる人々からありがとうと、感謝の言葉を貰えるようになった。
以前はその言葉達に嬉しさと同時に、申し訳なさを覚えて上手く言葉を返せず、余計に気持ちが沈んでいってしまっていたけど、
今はボクの方からも淀みのない感謝の気持ちを返す事ができる。

 それが更に嬉しい!

 人の為に力を使う事で嬉しい気持ちが生まれて、その気持ちがどんどん連鎖して大きく膨らんでいく。
もしかして、幸せってこういう気持ちの事をいうのかも知れない。

 ああ……ボク今本当に幸せだなぁ…。

なんて、そんな風にボクは夢心地な気分になっていた。




 そしてその幸せはやっぱり、活動で関わる方々とだけのものではなくって。
もちろんフウマ達3人とも。

「いやーーフウマくんの能力は凄いっすねぇ!
あんなに一杯の物が宙に浮いてる光景が、本当なんていうか圧巻っていうか~。」
「そうだろ!そうだろ!
オレもオレの家来に相応しいと、一目見てびびっと来たほどなんだ。
本当に素晴らしいぞ子羊くん!!」
「そ、そんな…。そこまで大げさに持ち上げるほどのことじゃないと思うけど…。」

 ボクが今日の作業を終えるとフウマ達もボクに話かけて来てくれた。

「しかしソウジくんが自分達にも力を見せてくれる様になって、本当嬉しいっす。
今まではそれをフウマくんに独占されて、フウマくんだけのソウジくん♡って感じだったので。
ソウジくんは自分達みんなのソウジくんなんすから!」
「え?……はっ!?な、きゅ、急に何変なこと言って…!」
「それは聞き捨てならないぞクウガ!
子羊くんの素晴らしさは最初にオレが見つけたんだ!
それに子羊くんはオレの可愛い家来だからな。
オレのもので間違いないだろう?」  
「いや~家来を持ち出すなら、家来仲間の自分達の方が結び付きは深いっすよ~?」
「ちょ、ちょっと勝手に二人で話進めないで!
ボクは誰のものでもないから!!」

 そうボクが慌てて叫ぶと、二人は同時に笑い出した。

「ふふっ。ちょっとした冗談っす!
ソウジくんはいつも反応が必死で可愛いから、つい楽しくて。」
「ああ。王と家来のお戯れというヤツだ!」
「も、もう…!」

 もちろん場を盛り上げる冗談というのは分かっているけれど。
やっぱり恥ずかしい…。
フウマとクウガは二人共ノリの良さで波長が合うのか、こうやって連携してその手のことを仕掛けてくる事があるので余計に反応に困ったりする。

 それに、そうじゃなくても他の人達には素直に好意へ好意を返せるようになった一方で、フウマ達に対しはまだ、どうしてもなんだか照れくささと恥ずかしさでついつっけんどんな対応とってしまいがちで。
それを直していかなきゃとも思うのだけれど。
だけど。

「もちろん君の力が素晴らしいと思うのも、その力を使えるようになって嬉しいという気持ちも、本当だからそれは安心してくれ!!」
「それに自分達にもソウジくんの気持ちはちゃんと伝わってるから安心してくださいっす。
ソウジくんは照れ屋さんっすからね~。」
「ふ、ふーん。そう…。」

 それでも、そんな自分の気持ちすらお見通しだとばかりに、受け入れてくれるのが嬉しくて。
それに今はついつい甘えてしまっている自分がいる…。

 そうしていると、今まで大人しくボク達が喋るのを見守っていたココロも話に加わった。

「さっきの話みたいに…ソウジくんはぼくのものって…思ってたわけじゃないけど…。
ぼくは正直…ソウジくんと一緒に…お仕事できる機会が減って…ちょっと寂しい…。」
「コ、ココロ…。」
「で…でもね…同時に嬉しくもあるんだ…。
ぼくと一緒が多くて…それこそぼくだけのものみたいに独占してた…ソウジくんの頑張り屋さんな所が…色んな人に分かりやすい形で伝わって…。
皆が知ってる…ソウジくんの良い所になって…それが凄く嬉しい…。」

「コ、ココローーー!!
ありがとう、ボクもココロがそんな風に思ってくれていて嬉しいよ。
そ、それにボクの力は使い所がない仕事だって結構あるし、その時は二人で一緒にやろうね!」
「……うん…!」

 そして相変わらずココロはとっても優しい!
いつもボクの事を気遣ってくれて、温かい言葉を投げかけてくれる。
それもあって、ココロに対しては他の二人に対してよりはボクも割りとストレートに気持ちを返す事ができていた。
今の言葉はあまりに嬉しくて、思わずボクはまるでクウガみたいにココロに抱き付きながら答えてしまっていた…。
そしてそんなボクの様子にココロも、そしてクウガとフウマの二人も、何だか微笑ましいものを見る様な目で笑い合っていた。

 な、何だかちょっと恥ずかしくなってきた…。

 勢いでしてしまった行為に周囲の反応で冷静になってきたことで、とてもくすぐったい気持ちに襲われてしまうけれど…。

 でもそんな気持ち以上に、
そうやってできたとても暖かな雰囲気の空間が、とっても居心地が良くて……。



――今ボク本当に幸せだ――

そうボクは改めて今の幸福な気持ちを噛みしめていた。
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