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子羊少年と王様少年
16.最初の一歩
しおりを挟むボクは変わらなきゃいけない、
ううん…変わりたいって心から思った。
こんな臆病で弱いボクを待っていてくれている人がいるんだ。
いつまでもウジウジしてばかりではいられないって。
それにボクの事を皆が信じてくれている、その事実を頭に思い浮かべるだけで何だか、不思議と力が湧いてくるというか、背中を押して貰えているような、そんな気持ちになる。
だから頑張って少しずつでも一歩踏み出していける様に頑張って行こう!
そうボクは心に誓った。
そしてボクにとって転機となる出来事が訪れた。
その日は、良く晴れた暖かく過ごしやすい気候の日。
でも確か同時に天気予報で、突然の強風に注意とも呼び掛けられていた日だった。
そんな日のボク達の活動内容は、廃校によって使われなくなり、廃墟と化した元々学校だった建物の取り壊しや片付けの手伝いだった。
フウマは通常なら重機で建物を取り壊す所を能力でお手伝い。
クウガはテレポートで作業員の方の(元)校舎内の移動や、出てくる廃棄物などの整理の手伝い。
ボクとココロは廃棄物を拾ったり、取り壊す前の清掃の手伝いだった。
とはいえ、何分広い校舎だった事もあって、ボクは主に屋外の校庭だった場所を作業員の方と一緒に、
ココロは建て壊す前の屋内を別の作業員の方とと、別行動になってしまっているけど。
「いや~しかし凄いね、フウマくんの力は。
機械要らずというか。」
ボクが校庭の元あった遊具の撤去や、ゴミ拾いなどを手伝っていると、作業員の方の一人が話しかけてくれた。
ボク達が今いる位置からは、フウマが作業している様子が眺める事ができた。
その上ゴウゴウと重機のものと違う独特な音も響いてる。
フウマは能力で生み出した風を束ねてまるで小さな竜巻のような形にして、校舎へとぶつけていた。
しかも作業員の方の指示のもと上手くコントロールしているのか、それで一気に崩れ落ちてしまったりもせず凄く繊細な動きをしていた。
それでも重機でやるよりも効率良く出来ている様にも見える。
本当に凄い力だ。
「そうですね。ボクもいつも凄いって思ってます。
そんな人と一緒にいさせて貰えるのがとても誇らしいです。」
正直それを自分と比較して落ち込む気持ちがゼロになったわけではないけれど、でもそれで弱音を吐いてばかりいる自分でいたくないから、ボクはもう一つの素直な気持ちを答えた。
「誇らしいか。そうなんだね。
…もしかしたら気を悪くしてしまう話かも知れないけど、私は彼の能力に凄く助かっていて感謝もしている、いるんだけど。
でもこうやって眺めていると、同時に、
あんな凄い力がもし人にぶつけられてしまったらとか考えてしまって、やっぱり少し怖いなとも思ってしまったんだ。」
能力が怖い…。
ボクもずっとそう思って生きてきたからその気持ちは凄く共感できる。
だから普通の人のそういう率直な気持ちを改めて聞くと、やっぱりボクの心はグラグラゆれだしてしまって、本当にボクってやつはと半ば呆れていると、
ビューーーーービューーーーーーー!!
っと凄い音が耳に響いて聞こえた。
これは?・・・どうやら風の吹く音だ。
しかもどうやらフウマの起こしたものではなく自然風みたいだが、それでも物凄い強さだ。
そしてその風はフウマが起こした風の塊にぶつかり、それで勢いを殺されるどころかそれを飲み込み吸収する様にして更に勢いを増して、
こっちへ向かって来てる!?
そこでボクはふと思い出した。
――極たまにっすが失敗して暴風が吹き荒れる事があって――
以前クウガがフウマの能力が極たまに失敗して、暴風が吹き荒れてしまう事があると言っていた事を。
はっ!そうか。
フウマの能力は自ら風を起こして(生み出して)それを操るもので、自然の風に直接干渉する類いのものじゃない。
だから多分自分が起こしたものとは違う強い風が外から加えられる事に、弱かったりするんじゃないか?
ボクはクウガの過去の発言に合点がいき、ちょっとスッキリした気分になっていた。
ってそんな事考えている状況じゃない!
そしてそんな強風はボク達がいる周囲にも吹き荒れた。
そしてその風の影響を受けて、ボク達が今いる校庭に植えられていた、古い大木が衝撃で、今にも折れて倒れそうになっていた。
あ、こ…これ…倒れる……ぶ、ぶつかる!?
そう思った数秒後には、衝撃に耐えきれず大木は本当に倒れていく…。
丁度その近くにいたボクと先ほどまで話していた作業員の方目掛けて。
このままだとぶつかってしまう!!
そこからのボクの意識は、まるで走馬灯にでもかかったかの様にスローになっていた。
そして同時に様々な思考が頭を高速で駆け巡っていく。
え、あれ?木が…ぶつかる?
あの大きさじゃ大怪我、下手したら死…。
でも今行っても間に合あうかどうか分からないし、ボクの腕力じゃあんなの持ち上げられっこない。
フウマ達だって絶対、駆け付けるのに間に合う距離じゃない。
どうしよう!?どうしよう!?どうしよう!?どうしよう!?
あっ…!
そっか…。つい目を反らしてしまっただけであるじゃないか。
一つだけあの人を助ける方法が…。
ボクの能力、サイコキネシスの力なら、あの木を持ち上げて救うことが…。
で、でもできるの!?
本当にボクに……?
それにさっきあの人は力が怖いって。
もし使っても怖がられて嫌われてしまうかも…。
かえって迷惑になるんじゃ。
それに上手く使えず暴走しちゃって逆効果なんてことも…。
どうすれば…。どうすれば……いいの…?
そんな風に思考がグルグルしていると、
――君の力はとても素晴らしい!!――
フウマの声が頭に鳴り響いた。
――だから信じているんだ!
君ならいつか自身の持つ力で誰かを救う事が出来る日が絶対来るとオレは確信している――
ああ、そうだ。
フウマ達はボクならできるって信じていてくれているんだ…。
ボクの力でも人を救えるって。
その期待に答えたいんだ。
それに今この場であの人を救う事ができるのはボクしかいないんだ。
だから、どんなに怖くてもどんなに辛くても、いい加減しっかり前を見なきゃいけない。
――頑張って一歩踏み出して変わるんだ!
ボクは半ば意識を朦朧とさせながら、それでもただ一心不乱に大木に目掛けて念動力の力を込めた。
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