迷える子羊少年と自称王様少年

ユー

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子羊少年と王様少年

13.皇王国の日常

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 ボクが自分のやれている事と釣り合わない優しさを分けて貰ってる相手はもちろん、奉仕活動で関わり初めて会った人達だけじゃない。
フウマ達3人もやっぱり、未だ二の足を踏んでいるボクにはもったいない位の優しさをいつもくれるんだ……。
 

 例えば、荷物運びの仕事を手伝った日のこと。

 フウマとクウガが能力を使って颯爽と作業を進める中、ココロと一緒に能力を使わず二人で荷物を運んでる時。

「ソウジくん…一度にそんなに一杯の荷物持てる何て…凄いね…。
ぼく…握力ないからこれだけで精一杯…。」
「え?い、いやテレポートでぱぱっとやれちゃう様なクウガ達と比べたら全然大した事ないよ。
だからせめて少しでも役に立ちたいからちょっと多めに持っただけで、褒められる程の事じゃ…。」
「そんな事ない…。だってぼくよりは…凄く沢山運べてるよ…。」
「それはだって、ボクと違ってココロはこういう事以外で能力を役立ててるだろ!?」
「それはそうかも知れないけど…。
でもね…ボクの力って本当に読み取ったり…
伝えたりするだけで…そんなに使い道ないし…。
力を使う余地がない力仕事は…全然役に立たなくて…。
フウマくんやクウガくんと比べたら……って思ったりもしてて…。」

 そこで一旦区切って、ココロはボクを安心させる様にか、普段は無表情気味な顔に少し笑みを浮かべる様にしながら告げた。

「だからね…。一緒に作業できる…ソウジくんがいてくれるの…ぼく正直すごく嬉しいんだ…。
だからソウジくんも…十分役に立ってる…。
大丈夫…。」
「あ、うん。そ、それなら良かった…。
ありがとココロ、励ましてくれて。」 

 そんなココロの言葉にボクはそれ以上返す事が出来なかった。
ココロは本当に優しい。
思えば出会った時からずっと、常にココロはボクの事を気遣って親切に接してくれていた。
今だって自身の事を卑下してまで、フウマ達と比べて落ち込むボクに気にしなくていいと、優しく心に寄り添ってくれる。

 他の二人と比べたら大人しい方だけど、だからこそココロのその真摯な優しさが、すっとボクの中に直に染み渡る。



 そして作業が粗方終わると、今度はクウガがボク達の元にテレポートを駆使しながら猛突進で駆けつけてきた。

「二人共ーーー!お仕事お疲れ様っすーー!」

 もう何度も同じ様な流れが合ったけど、やっぱり今回もクウガは同時に凄い勢いで抱き付いてくる 。
しかも今日はボクとココロ二人同時だ。
いつもより余計に苦しい…。

「今日も沢山働いて疲れたっすね!
自分もうクタクタなんすけどお二人はどうっすか?」
「く、くる、は、はなし…て。」
「クウガくん…ソウジくんが抱き締めるのが苦しくて…声出せないみたい…。」
「はっ!?す、すみません今離すっすね!」

 そのココロの言葉でやっと抱き締めから解放された。
ココロはもう慣れてしまっているのか、クウガのこの凄い勢いのハグ攻撃には全く動じないみたいだ。
凄い…。
ボクはクウガに軽く怒鳴りながら話し出す。


「もう!いきなり抱き付くの苦しいから止めてっていつもいつも言ってるだろ!?」
「本当すみません。
これは何というか最早癖みたいなモノで、気を付けてようと思っても中々衝動を抑えられず、申し訳ないっす!」
「癖って…。」

 どんな癖だよ…。
とは言え毎日恒例の様なこのハグ攻撃をするのと同時に、毎回本気で申し訳なさそうにもなるのでそれ以上責める事はできない。

 正直なところクウガのノリは、ボクはまだ結構苦手だ。
この馴れ馴れしいというか、距離感0というか、チャラいというか。
とにかく余りにもぶっ飛び過ぎてるフウマとはまた別ベクトルで、ボクが今まで生きてきて接してこなかった様な人物で、一向に慣れる事ができない。

それでも――。


「横目で見ながら二人の様子も確認してたんすけど、それにしても二人共今日は随分作業が捗ってたみたいっすね!」
「テレポート使えるクウガに比べたら全然だと思うけど。」
「そりゃ得意範囲でお株奪われるわけにはいかないんで、当たり前っすよ。
それでも自分ももっと頑張ろう!って焦る位、二人が身を入れてやってる姿を見てこっちも身が引き締まったんすから。
二人のガッツも凄いっす!」
「へ、へぇー。そうなんだ。」

 クウガのノリは確かに軽いけど、だからこういう好意的な事も滅茶苦茶ストレートに言葉にされるから…。
ボクは気恥ずかしさで顔を赤くしてしまう…。


「はいっす。
それに~二人共随分仲良さげに話してるみたいで、なんだかお熱くラブラブ!って感じで少し焼けちゃったっすね!」

 って、いきなり何言い出すんだ!?

「ラ、ラブラブって、変な事言わないでよ!
別にボク達そういうんじゃない!
ってココロも何で否定しないの!?」
「ソウジくん…ぼくと仲良く見えるの…嫌…?」
「い、いやそういうわけじゃなくてね!」

「ふふっ。ラブラブは冗談っす!
でも二人がとても仲良く見えたのは本当で、なんでちょっと安心したんすよ。
ソウジくんって遠慮しいというか、自分達から一歩引いてる感じ?してたし。
だから自分にもココロくんみたいに気を許してくれちゃって全然良いんすよ?」

 あっそっか。クウガは…。

「う、うん。考えとく…。」
「是非是非そうしてくれるとありがたいっす!
ココロくんとばっかり仲深めちゃってたら、自分本気で焼き餅焼いちゃうっすからねっ?」

 そう言いながらクウガは冗談目かす様に笑っていた。

 そう。
確かにボクは一向に慣れる事は出来なくて日々困惑しているけれど、それでもクウガが悪いヤツではない。
ううん、むしろ良いヤツである事はこうやって一緒に過ごす様になって、分かった。
フウマのともすると軽薄にも感じる、チャラめのノリは場を明るくしたり、此方に気を使わせない為のクウガなりの気遣いの形なんだと、分かっていった。

 さっきだってそうだ。
ちょっと茶化して見せる事で、ボクのデリケートな話題が深刻な感じにならない様にしたのだろう。
こういうのをムードメーカーというのだろうか。

 そういう形の思い遣りもあるのだと、ボクはみんなと出会って初めて知った。
少し前の能力者は悪いヤツに違いないって決めつけて思考を停止していたボクじゃ、こう見えているんだからきっとそれはこうなんだろうと決めつけて、
人の裏側にある優しさなんて一生気づくことが出来なかっただろう。

――フウマ達に出会ってから、ボクの毎日は本当に初めて知る新鮮なことだらけだ。
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