14 / 64
子羊少年と王様少年
13.皇王国の日常
しおりを挟むボクが自分のやれている事と釣り合わない優しさを分けて貰ってる相手はもちろん、奉仕活動で関わり初めて会った人達だけじゃない。
フウマ達3人もやっぱり、未だ二の足を踏んでいるボクにはもったいない位の優しさをいつもくれるんだ……。
例えば、荷物運びの仕事を手伝った日のこと。
フウマとクウガが能力を使って颯爽と作業を進める中、ココロと一緒に能力を使わず二人で荷物を運んでる時。
「ソウジくん…一度にそんなに一杯の荷物持てる何て…凄いね…。
ぼく…握力ないからこれだけで精一杯…。」
「え?い、いやテレポートでぱぱっとやれちゃう様なクウガ達と比べたら全然大した事ないよ。
だからせめて少しでも役に立ちたいからちょっと多めに持っただけで、褒められる程の事じゃ…。」
「そんな事ない…。だってぼくよりは…凄く沢山運べてるよ…。」
「それはだって、ボクと違ってココロはこういう事以外で能力を役立ててるだろ!?」
「それはそうかも知れないけど…。
でもね…ボクの力って本当に読み取ったり…
伝えたりするだけで…そんなに使い道ないし…。
力を使う余地がない力仕事は…全然役に立たなくて…。
フウマくんやクウガくんと比べたら……って思ったりもしてて…。」
そこで一旦区切って、ココロはボクを安心させる様にか、普段は無表情気味な顔に少し笑みを浮かべる様にしながら告げた。
「だからね…。一緒に作業できる…ソウジくんがいてくれるの…ぼく正直すごく嬉しいんだ…。
だからソウジくんも…十分役に立ってる…。
大丈夫…。」
「あ、うん。そ、それなら良かった…。
ありがとココロ、励ましてくれて。」
そんなココロの言葉にボクはそれ以上返す事が出来なかった。
ココロは本当に優しい。
思えば出会った時からずっと、常にココロはボクの事を気遣って親切に接してくれていた。
今だって自身の事を卑下してまで、フウマ達と比べて落ち込むボクに気にしなくていいと、優しく心に寄り添ってくれる。
他の二人と比べたら大人しい方だけど、だからこそココロのその真摯な優しさが、すっとボクの中に直に染み渡る。
そして作業が粗方終わると、今度はクウガがボク達の元にテレポートを駆使しながら猛突進で駆けつけてきた。
「二人共ーーー!お仕事お疲れ様っすーー!」
もう何度も同じ様な流れが合ったけど、やっぱり今回もクウガは同時に凄い勢いで抱き付いてくる 。
しかも今日はボクとココロ二人同時だ。
いつもより余計に苦しい…。
「今日も沢山働いて疲れたっすね!
自分もうクタクタなんすけどお二人はどうっすか?」
「く、くる、は、はなし…て。」
「クウガくん…ソウジくんが抱き締めるのが苦しくて…声出せないみたい…。」
「はっ!?す、すみません今離すっすね!」
そのココロの言葉でやっと抱き締めから解放された。
ココロはもう慣れてしまっているのか、クウガのこの凄い勢いのハグ攻撃には全く動じないみたいだ。
凄い…。
ボクはクウガに軽く怒鳴りながら話し出す。
「もう!いきなり抱き付くの苦しいから止めてっていつもいつも言ってるだろ!?」
「本当すみません。
これは何というか最早癖みたいなモノで、気を付けてようと思っても中々衝動を抑えられず、申し訳ないっす!」
「癖って…。」
どんな癖だよ…。
とは言え毎日恒例の様なこのハグ攻撃をするのと同時に、毎回本気で申し訳なさそうにもなるのでそれ以上責める事はできない。
正直なところクウガのノリは、ボクはまだ結構苦手だ。
この馴れ馴れしいというか、距離感0というか、チャラいというか。
とにかく余りにもぶっ飛び過ぎてるフウマとはまた別ベクトルで、ボクが今まで生きてきて接してこなかった様な人物で、一向に慣れる事ができない。
それでも――。
「横目で見ながら二人の様子も確認してたんすけど、それにしても二人共今日は随分作業が捗ってたみたいっすね!」
「テレポート使えるクウガに比べたら全然だと思うけど。」
「そりゃ得意範囲でお株奪われるわけにはいかないんで、当たり前っすよ。
それでも自分ももっと頑張ろう!って焦る位、二人が身を入れてやってる姿を見てこっちも身が引き締まったんすから。
二人のガッツも凄いっす!」
「へ、へぇー。そうなんだ。」
クウガのノリは確かに軽いけど、だからこういう好意的な事も滅茶苦茶ストレートに言葉にされるから…。
ボクは気恥ずかしさで顔を赤くしてしまう…。
「はいっす。
それに~二人共随分仲良さげに話してるみたいで、なんだかお熱くラブラブ!って感じで少し焼けちゃったっすね!」
って、いきなり何言い出すんだ!?
「ラ、ラブラブって、変な事言わないでよ!
別にボク達そういうんじゃない!
ってココロも何で否定しないの!?」
「ソウジくん…ぼくと仲良く見えるの…嫌…?」
「い、いやそういうわけじゃなくてね!」
「ふふっ。ラブラブは冗談っす!
でも二人がとても仲良く見えたのは本当で、なんでちょっと安心したんすよ。
ソウジくんって遠慮しいというか、自分達から一歩引いてる感じ?してたし。
だから自分にもココロくんみたいに気を許してくれちゃって全然良いんすよ?」
あっそっか。クウガは…。
「う、うん。考えとく…。」
「是非是非そうしてくれるとありがたいっす!
ココロくんとばっかり仲深めちゃってたら、自分本気で焼き餅焼いちゃうっすからねっ?」
そう言いながらクウガは冗談目かす様に笑っていた。
そう。
確かにボクは一向に慣れる事は出来なくて日々困惑しているけれど、それでもクウガが悪いヤツではない。
ううん、むしろ良いヤツである事はこうやって一緒に過ごす様になって、分かった。
フウマのともすると軽薄にも感じる、チャラめのノリは場を明るくしたり、此方に気を使わせない為のクウガなりの気遣いの形なんだと、分かっていった。
さっきだってそうだ。
ちょっと茶化して見せる事で、ボクのデリケートな話題が深刻な感じにならない様にしたのだろう。
こういうのをムードメーカーというのだろうか。
そういう形の思い遣りもあるのだと、ボクはみんなと出会って初めて知った。
少し前の能力者は悪いヤツに違いないって決めつけて思考を停止していたボクじゃ、こう見えているんだからきっとそれはこうなんだろうと決めつけて、
人の裏側にある優しさなんて一生気づくことが出来なかっただろう。
――フウマ達に出会ってから、ボクの毎日は本当に初めて知る新鮮なことだらけだ。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説

王様は知らない
イケのタコ
BL
他のサイトに載せていた、2018年の作品となります
性格悪な男子高生が俺様先輩に振り回される。
裏庭で昼ご飯を食べようとしていた弟切(主人公)は、ベンチで誰かが寝ているのを発見し、気まぐれで近づいてみると学校の有名人、王様に出会ってしまう。
その偶然の出会いが波乱を巻き起こす。

王道にはしたくないので
八瑠璃
BL
国中殆どの金持ちの子息のみが通う、小中高一貫の超名門マンモス校〈朱鷺学園〉
幼少の頃からそこに通い、能力を高め他を率いてきた生徒会長こと鷹官 仁。前世知識から得た何れ来るとも知れぬ転校生に、平穏な日々と将来を潰されない為に日々努力を怠らず理想の会長となるべく努めてきた仁だったが、少々やり過ぎなせいでいつの間にか大変なことになっていた_____。
これは、やりすぎちまった超絶カリスマ生徒会長とそんな彼の周囲のお話である。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~
シキ
BL
全寮制学園モノBL。
倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。
倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……?
真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。
一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。
こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。
今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。
当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。
学園の天使は今日も嘘を吐く
まっちゃ
BL
「僕って何で生きてるんだろ、、、?」
家族に幼い頃からずっと暴言を言われ続け自己肯定感が低くなってしまい、生きる希望も持たなくなってしまった水無瀬瑠依(みなせるい)。高校生になり、全寮制の学園に入ると生徒会の会計になったが家族に暴言を言われたのがトラウマになっており素の自分を出すのが怖くなってしまい、嘘を吐くようになる
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿です。文がおかしいところが多々あると思いますが温かい目で見てくれると嬉しいです。

僕はお別れしたつもりでした
まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!!
親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
大晦日あたりに出そうと思ったお話です。

初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
どうしょういむ
田原摩耶
BL
苦手な性格正反対の難あり双子の幼馴染と一週間ひとつ屋根の下で過ごす羽目になる受けの話。
穏やか優男風過保護双子の兄+粗暴口悪サディスト遊び人双子の弟×内弁慶いじめられっ子体質の卑屈平凡受け←親友攻め
学生/執着攻め/三角関係/幼馴染/親友攻め/受けが可哀想な目に遭いがち
美甘遠(みかもとおい)
受け。幼い頃から双子たちに玩具にされてきたため、双子が嫌い。でも逆らえないので渋々言うこと聞いてる。内弁慶。
慈光宋都(じこうさんと)
双子の弟。いい加減で大雑把で自己中で乱暴者。美甘のことは可愛がってるつもりだが雑。
慈光燕斗(じこうえんと)
双子の兄。優しくて穏やかだが性格が捩れてる。美甘に甘いようで甘くない。
君完(きみさだ)
通称サダ。同じ中学校。高校にあがってから美甘と仲良くなった親友。美甘に同情してる。
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる