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子羊少年と王様少年
12.もどかしい日々
しおりを挟むフウマ達の奉仕活動に付き合う様になって、フウマ達3人がその能力を持ってしてド派手な方法で対面する問題を解決して行く一方で、
3人と一緒に過ごすボクはどうしているかというと、
……自分でも情けなくなる事なんだけど、そんな風に能力を使い人を助けそして受け入れられるフウマ達の姿を間近で見て知ってもなお、
ボクは皆の様に人の為に能力を使う事は出来ないでいた……。
だって。
…だって!
ボクは今までずっと自分を抑え込まなきゃいけないって、そうやって生きてきたんだ。
普通でいなきゃいけない、そうじゃないと人を傷つけてしまう、嫌われてしまうからってずっと…。
だからずっとやってきて身体に染み込んでいる生き方を、いきなり変えるなんて事は簡単にできる事じゃなかった。
あんな理想の世界を、あの光景を見ても、やっぱり恐怖で足がすくんでそこへ飛び出していく事ができなくて。
力を使うのはやっぱりとても怖い…。
能力者だって知られる事が凄く怖い…。
それでもし上手くいかなかったら?失敗してしまったら?
暴走する可能性だってある。
なんて事が頭中一杯に溢れて離れてくれなくて、前に進むことができないんだ……。
本当にボクはなんて臆病で弱いのだろう…。
だからボクは能力を使わず、能力者じゃないただの普通の人間として、フウマ達の人助けを身一つで手伝っていた。
――それでも、
「君は最近新しく入ったっていう、確か……ソウジ君だったね?
君も掃除のお手伝い本当にありがとうね。
君たちのおかげで凄く仕事が捗ってるんだ。」
「いやボクは全然…みんなと比べたら、普通の事しかできてないから殆ど貢献できてなんてないし、お礼言って貰える様な事全然やれてないです…。」
「そんな事ないよ!君だってきちんと真面目に手伝ってくれていたじゃないか。
それだけで純分ありがたい事だよ。」
「そうそう。それに君もフウマくん達と一緒で、精々私達がお礼を言う事位しか見返りがない事を自分の意志でやってるんだろう?
そういう立派な心意気は大小で誰かと比較できる様なものじゃない、凄く偉いっておじさん達は思うよ。」
ある日の清掃活動の終わりに、皆が凄い能力で掃除に貢献する中大した事もやれてないボクに、そんな風に清掃員の方達が暖かい言葉をかけてくれた。
「君は…新入りの…ソウジくんだったよね。
ソウジくんも僕の落とし物探しを手伝ってくれてありがとう。
って浮かない顔だねどうしたの?」
「え!?あ、すみません…。
ボクみんな見たいに能力を使って鮮やかに問題を解決なんてできていないのに。
ボクにもお礼とかいって貰えるのが申し訳ないなって…思ってしまって…。」
「ええー全然そんな事ないけどなー。
誰かを助ける為に無償で行動できる何て、それだけで凄い事だよ。
むしろ普通の子があんな凄い子達に混じって頑張ってるって凄い事じゃないかな!」
「そう……なんです、かね…。」
また別の日に落とし物探しの依頼を終えた時、ココロの能力を頼りに落とし物探しをして、クウガやフウマも風やテレポートの力を駆使する中、周囲を普通に探して見て回る事しかできなかったボクにも、依頼主さんは感謝を述べてくれる。
それだけじゃない。
毎日、毎回、ボクはみんなと比べたら何にもできていないに等しいのに、こんなボクにも沢山の人達が他の3人同様の感謝の言葉をくれたり、褒められたり暖かい言葉を投げかけてくれる。
それはとても嬉しいし、ありがたい事だと思う。
でも同時にとてつもない申し訳なさにも襲われるんだ…。
だって本当にボクはフウマ達と比べたら微々たる事しかできていないから。
ボクから漏れ出してしまった弱音を励ましてくれる言葉は、刺さらなかったわけじゃないけど。
それはボクが普通の人間だったらって話で、本当はボクは力がある癖に使えないでいる、勇気が出ないでいるってだけだからだ。
できる癖にやらない。
そんなのずるいし、卑怯な事だって思う。
フウマ達が苦労して作りあげた優しい空間に、ボクは何の努力もしていないのにその優しさのおこぼれにあずかっている様な、そんな気持ちに苛まれる。
新しく知った世界は優しくて暖かい世界だけれど同時に、とてももどかしくてままならない――。
そんな気持ちの日々が暫く続いていった 。
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