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子羊少年と王様少年
6. 力あるものは
しおりを挟むバス降りて着いた△公園。
かなり広く遊具もそれなりに多い所だった。
ボクは流されるままに3人に付いて行動した。
――そこで見た光景を多分ボクは一生忘れられないだろう――
そう心から思う位、ボクにとっては衝撃的な光景がそこでは行われていた。
フウマが力を込めるとゴゥゴゥと音を成る程の大きな風が巻き起こり、
――その風はやがて公園中に襲いかかった――。
ココロはココロで公園に集まっている鳥や虫といった色んな生き物達にどんどん触っていき、
――すると恐らくココロの指示で生き物は公園中を動き始めた――。
クウガの周囲でもシュンっシュンっと風を切る様な音と共に、
――どんどどん公園中で物が消えていく――。
正直そこまではもちろん驚きはしたものの問題じゃなかった。
3人がそうした事で起こった事がボクには衝撃だったんだ。
フウマの起こした風は公園中を駆け巡り、
――やがて土を掘る様に公園中の雑草をどんどん刈っていった――。
ココロの指揮する動物も公園中を駆け回り、
――やがて公園中のゴミや雑草を拾い集めていった――。
そしてクウガが消していった物達はというと、
――全て同じ場所全ての物はゴミ袋の中に移動させていたんだ――。
ここまで言えばわかるだろうけれど、
そう、そこで行われていたのは公園内の清掃活動だった。
超能力を分段に使った大規模な奉仕活動だ。
その光景の衝撃にボクは作業用にと手渡されたスコップとゴミ袋を手に呆然と眺めながら、真っ白な頭で、草取りを覚束無い手付きでのろとのとする事しかできなかった……。
それから時間が経って清掃も完全に終わり、フウマ達はこの公園の本来の清掃員の人達と話をしていた。
「いやーいつもいつもフウマくん達ありがとう!
おかげで助かってるよ。
この広さの公園の掃除なんておじさん達だけでやったら一体どれだけの時間が掛かることか。」
「そうだろ~そうだろ~!!
王たるオレやその家来達の力は素晴らしいからな!!」
「最初は能力者が掃除のお手伝いなんてどうなんだって思ってたけど、君達本当に働き者で本当にありがたい。
これからもよろしく頼むよ!」
「お安いご用だ!
オレ達の力に不可能な仕事などないからな!!」
聞こえてくる声に、衝撃で頭がぼんやりしていたボクの意識が徐々に戻ってくる。
そこから生まれた感情は大きな驚愕だった。
――え?どういうこと――!?
何が起こってるの!?
能力で人助けをして人が喜んでてる!?
だって、
だって能力者は嫌われ者で犯罪者予備軍で……
だから人に迷惑ばかりかけるから受け入れてなんて貰えなくて……
――だからボクは……
「ココロくんもありがとう。君のおかげで公園隅々まで掃除できて助かってるよ。」
「動物さん達が…やってくれてるから…ボクはあんまり…。
それでも…感謝して貰えるのは…嬉しい…。」
「クウガくんのおかげで移動の手間が省けてスムーズに作業できるよ。」
「自分達の方こそ能力を世に役立てる場を貸していただけてありがたいっす!」
だから無理矢理自分を抑え込んで……
世の中を生きていく為には普通でいなきゃいけなくて……
普通でいるしかなくて…
普通じゃなきゃダメなはずなのに…
なんで…?
どうして…?
「それからそこの子も!」
ボクがもうわけが分からなくなっていると、清掃員の方に声をかけられた。
「初めて見る子だね。君名前は?」
「ふぇ?…あ…えっと…都築……ソウジ…です。」
「ソウジくんだね。
君も今日は草取りを手伝ってくてありがとうね。
学生が清掃のお手伝いなんて本当に偉いよ。」
「いや…ボクなんか全然で…。」
不意に褒められて困惑する。
だって本当に全然集中してやれてなんかいなかったし。
仮にボクがちゃんと集中してやれていたとしても、貢献度としたら微々たるものだっただろう。
だって草取りの殆どを終わらせたのは実際あの風の力で……。
――そうだよ、あれはアイツが……!?
「おっ…おい!!」
ボクはフウマに無理矢理声をあげて話かけた。
自分のことを偉大な存在だとか王様だとか言ってて……。
人の事を家来だとか言って……。
しつこく付きまとってくる迷惑なやつで……。
そんな尊大な態度の王様がなんでこんな……こんな……
――人を助けるヒーローみたいな――。
「お前…自分は王様で…人は家来だとかいって……なんで……なのにこんな……ひ、人助けみたいな事してるんだよ!?」
「うーん……?子羊くんの方こそ言ってることがよく分からないな?」
フウマは毅然としていて、そして同時に輝く様な眩しい笑顔で答えた。
「オレは王だぞ!
王というのは民の為にあるものだ!
民なくて王はありえん。
だから王であるこのオレが下々の為に力を尽くし行使するのは当然のことだ!!」
フウマの言葉は続く。
「強い力というものはそれだけのリスクや責任が伴うものだからな。
その偉大な力を恐れたり混乱を生むこともあるだろう。
だからこそ強い力を持つ者はそれを困っている弱い者を助ける為に使えばいい!!
オレが目指す王国はそんな国で、オレはそんな国の王様だ!!」
――能力を恐れるものがいるなら能力を人を助ける為に使えばいい――
そんな風に考えた事もなかった……。
ただボクは人に嫌われないようにってずっと……。
――それはボクの知らなかった世界の考え方だった……。
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