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譲位2
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マリウスは各国訪問の道すがら、議会のメンバーへ切々と手紙を書いた。
『今は皇帝をさせていただいておりますが、諸事情により、できるだけ早く皇帝を降りなければならなくなりました。我が弟のウォルターに帝位を譲りたい所存です。私は、青春時代をほとんど戦争で過ごしました。十代後半はどっぷり血の海に漬かって生きてたのです。戦争終結後、多くの兵士らは退役しました。私が引退したいと思うのも当然のことでありましょう』
書いているうちに、不満が募ってきて、次第に愚痴っぽくなっていく。
『平定では苦労しすぎて、ハゲの上に白髪にもなりました。ハゲは治りましたが、白髪は戻りません。若干22歳にしてもうすべての毛髪が白いのです。高齢の兵士らにまで憐れまれています。自分よりもはるか年上の人にまで頭部のことで、おいたわしや、と言われる気持ちがわかりますか? 可哀そうだと思えよ、俺を!!』
最後の一行はナイフで切り取って、手紙を送る。
帝都に戻るなり、ウォルターとその母親が住む屋敷に向かった。
「ウォルター、頼む、皇帝になってくれ。お前もそろそろ19歳だ。俺が皇帝となったのも19歳のときだった。そのときは、前皇帝を殺して、勝手に皇帝を名乗ったけど、お前は俺を殺すことなく皇帝になれるぞ」
「兄上、お帰りなさいませ……、ええっ?」
ウォルターは呆気に取られていたが、しばらく考え込むと、マリウスには思いつきもしなかったことを言い出した。
「兄上、これを機に共和制に移行しましょう。統治権を国民に譲るのです」
「き、共和制……?」
「国民に政治をしてもらうのですよ」
「こ、国民に?」
「なに、兄上でもしてるのだから大丈夫ですよ。ですが、すぐにというわけにはいきません。国民にいきなり統治権を委譲するのは赤ん坊にハサミを持たせるようなものです。少しずつ、導かなければならない。私に当てがあります。これでも、身分を隠していろんな結社に顔を出してるんですよ」
「けっしゃ?!」
「とある結社で出会った某らと最大規模の結社を作りつつあります。しかし、兄上がそのおつもりなら、無血革命をなせる。面白くなってきたぞ。そうだ、議会をもう一つ作りましょう。そちらは選挙で市民に選ばれた人がメンバーになるのです。そして、少しずつ両議会に全権を委譲すれば」
ウォルターは目をらんらんと輝かせ始め、しまいに唾を飛ばしながら熱く語り始めた。もうマリウスのことなど目に入っていない。ひとりでまくしたてる。
「人民を帝国から解放するのです! 人民の人民による人民のための政治を!」
ウォルターはこぶしを突き上げた。
(もしかして、ウォルター、俺を革命で倒すことをうっすら考えてたの……?)
「そうだ、グレン帝国という名前も変えましょう。イキってて恥ずかしいってみんな言ってます。ユナイテッド・ネーション・オブ・グレン、U・N・G、でいきましょう!」
「U・N・G……」
マリウスには何が何だかよくわからなかったが、ウォルターが非常に乗り気になったので良しとした。
議会メンバーの同情を買うことにも成功したようで、毛染め粉やら白髪が治るらしいという特産物が、マリウスのもとへと届き始めた。
マリウスは無事、譲位の準備を整えつつあった。
(よし、今度はプロポーズだ)
マリウスは、エルラントに飛んで戻った。
『今は皇帝をさせていただいておりますが、諸事情により、できるだけ早く皇帝を降りなければならなくなりました。我が弟のウォルターに帝位を譲りたい所存です。私は、青春時代をほとんど戦争で過ごしました。十代後半はどっぷり血の海に漬かって生きてたのです。戦争終結後、多くの兵士らは退役しました。私が引退したいと思うのも当然のことでありましょう』
書いているうちに、不満が募ってきて、次第に愚痴っぽくなっていく。
『平定では苦労しすぎて、ハゲの上に白髪にもなりました。ハゲは治りましたが、白髪は戻りません。若干22歳にしてもうすべての毛髪が白いのです。高齢の兵士らにまで憐れまれています。自分よりもはるか年上の人にまで頭部のことで、おいたわしや、と言われる気持ちがわかりますか? 可哀そうだと思えよ、俺を!!』
最後の一行はナイフで切り取って、手紙を送る。
帝都に戻るなり、ウォルターとその母親が住む屋敷に向かった。
「ウォルター、頼む、皇帝になってくれ。お前もそろそろ19歳だ。俺が皇帝となったのも19歳のときだった。そのときは、前皇帝を殺して、勝手に皇帝を名乗ったけど、お前は俺を殺すことなく皇帝になれるぞ」
「兄上、お帰りなさいませ……、ええっ?」
ウォルターは呆気に取られていたが、しばらく考え込むと、マリウスには思いつきもしなかったことを言い出した。
「兄上、これを機に共和制に移行しましょう。統治権を国民に譲るのです」
「き、共和制……?」
「国民に政治をしてもらうのですよ」
「こ、国民に?」
「なに、兄上でもしてるのだから大丈夫ですよ。ですが、すぐにというわけにはいきません。国民にいきなり統治権を委譲するのは赤ん坊にハサミを持たせるようなものです。少しずつ、導かなければならない。私に当てがあります。これでも、身分を隠していろんな結社に顔を出してるんですよ」
「けっしゃ?!」
「とある結社で出会った某らと最大規模の結社を作りつつあります。しかし、兄上がそのおつもりなら、無血革命をなせる。面白くなってきたぞ。そうだ、議会をもう一つ作りましょう。そちらは選挙で市民に選ばれた人がメンバーになるのです。そして、少しずつ両議会に全権を委譲すれば」
ウォルターは目をらんらんと輝かせ始め、しまいに唾を飛ばしながら熱く語り始めた。もうマリウスのことなど目に入っていない。ひとりでまくしたてる。
「人民を帝国から解放するのです! 人民の人民による人民のための政治を!」
ウォルターはこぶしを突き上げた。
(もしかして、ウォルター、俺を革命で倒すことをうっすら考えてたの……?)
「そうだ、グレン帝国という名前も変えましょう。イキってて恥ずかしいってみんな言ってます。ユナイテッド・ネーション・オブ・グレン、U・N・G、でいきましょう!」
「U・N・G……」
マリウスには何が何だかよくわからなかったが、ウォルターが非常に乗り気になったので良しとした。
議会メンバーの同情を買うことにも成功したようで、毛染め粉やら白髪が治るらしいという特産物が、マリウスのもとへと届き始めた。
マリウスは無事、譲位の準備を整えつつあった。
(よし、今度はプロポーズだ)
マリウスは、エルラントに飛んで戻った。
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