【本編完結】溺愛してくる敵国兵士から逃げたのに、数年後、××になった彼に捕まりそうです

萌於カク

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果たされた再会

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 グラスを煽るマリウスにノックの音が聞こえてきた。
 護衛兵士がマリウスに伝えてくる。

「陛下、客が来てるけど、通していいか?」

 マリウスは手を振った。

「追い返してくれ」

 ときおり、貴婦人やら令嬢やらが、約束を取り付けたと嘘をついて、押しかける。どんな訪問先でもそういう輩はいる。
 兵士らには追い返すように言ってあるのだが、兵士は兵士で気を利かせたつもりで、身元さえ確かであればそんな客を部屋に送り込もうとしてくる。
 
「わかったよ。この堅物め」

 そのあとの護衛兵士の声にマリウスは飛び上がった。

「ってことだ。レルシュ楽長。今日は帰ってくれよ」

(エ、エミーユ……?! 客とはエミーユなのか?)

 慌てて、扉に向かうと、廊下に去っていく栗色の髪が見えた。

(エミーユ……!)

 護衛兵士の脇を通り抜けて、その背中に声をかける。

「ま、待って! 待ってください、楽長!」

 ハッと足を竦めたエミーユは、ゆっくりを振り向いた。
 
「エミ、レルシュ楽長……。俺に、会いに来てくれたのですか……?」

(エミーユ、もしかして俺に名乗り出てくれるつもりなのか。ああ、それなら俺はもうあなたを離しはしない)

「リージュ公に、陛下の部屋に向かえと言われました」
「リージュ公に?」

(あいつが俺に妙な気を回したのか? ああ、それにしても、エミーユだ。これはエミーユだ。懐かしいその声、その匂い、エミーユだ、エミーユが目の前にいる……!)

 エミーユは地味な外見だったが、ハシバミ色の目の奥には深い慈愛を感じさせた。肩よりも長い栗色の髪はうなじで一つにまとめているも、毛先がくるくると巻いて頭を揺らすたびに躍動的に揺れる。

(愛おしい、何もかもが愛おしい……。あなたをずっと見ていたい。あなたの動くさまを俺はずっと見ていたい)

 しかしながら、マリウスに向いたエミーユの顔には怯えが浮かんでいる。

「用がなければ帰ります」

 迫りくる想いを抱えてエミーユを見つめていたマリウスに、エミーユは素っ気なかった。エミーユのよそよそしさにマリウスは傷つく。

(どうしてだ、エミーユ。どうしてそんなに冷たい……?)

 去ろうとしたエミーユに慌てて声をかける。

「待って、用事はあります」

 引き留めるマリウスに、エミーユはどういうわけかとても警戒した目を向けている。

(エミーユ、どうしてそんなに俺を警戒する。俺はあなたの嫌がることをするつもりはないのに)

 想いのこもる目で見つめるマリウスに、エミーユもその目に切なさを浮かべ始めたように見えたが、マリウスがエミーユに手を伸ばしかけると、エミーユは後ずさった。

(エミーユ……?! あなたは俺を拒絶するのか……? どうして……?)

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