【本編完結】溺愛してくる敵国兵士から逃げたのに、数年後、××になった彼に捕まりそうです

萌於カク

文字の大きさ
上 下
18 / 78

結ばれた情交4※

しおりを挟む
 朝陽が小屋の中を照らし始めた。ところどころ穴の開いた屋根から木漏れ日のように差し込んでいる。
 柔らかい光を受けながら、エミーユは多幸感に包まれていた。
 体と心が奥深いところで満たされている。渇いていたところに水を与えられたようだ。

(ああ、私、幸せだ………)

 涙が浮かんでくる。
 胸に大切なものを抱いている。手触りの良い赤毛。燃えるような赤毛を慈しんで撫でている。

(マリウス。可愛い……。私の目の前に現れた可愛い甘えん坊……)

 エミーユはずっと赤毛を撫で続けた。
 昨夜のことを思い出していた。マリウスの息遣い、肌に残る感触、体内に与えられたマリウスの精。
 胸を締め付けられるほどの甘やかな感覚に包まれる。
 朝陽の中で幸せに浸っていた。
 満ちた幸せがしたたり落ちる。
 不意にエミーユの全身がこわばった。

(え……?)

 赤毛を捉え直す。
 エミーユの腕の中に、すやすやと寝息を立てているマリウスがいた。

(ああ、なんてことだ)

 甘やかさが、罪悪感に塗り替えられる。

(マリウスを私の発情に巻き込んでしまった)

 発情はまだ先のはずだった。なのになぜか起きてしまった。
 獣人とすごしているために体調が狂ってしまったのか。
 上半身を起こそうとすれば、ぐいっとマリウスに引き寄せられる。
 マリウスは甘えるような仕草で、エミーユの胸に頭を摺り寄せてきた。
 柔らかな赤毛がエミーユの肌をくすぐる。
 エミーユの目からまた涙が零れ落ちた。

(マリウス……! 可愛いマリウス……!)

 マリウスは覚醒すると、エミーユをぎゅっと抱きしめてきた。エミーユの胸から顔を上げて言った。

「おはよう! エミーユ!」

 マリウスはエミーユの顔に触れると唇を重ねてきた。マリウスの舌がエミーユに入ってくる。昨晩のうちに何度も感じたマリウスの熱い舌。

(あっ……)

 エミーユの背中に甘いしびれが走る。
 マリウスがエミーユの肌をなぶってきた。
 エミーユの胸の突起がマリウスの親指の腹でこすられる。突起はすぐに熱を帯びて芯が硬くなる。

「んっ……んふぅ……」

 エミーユは快感を拾い上げて声を上げた。マリウスは突起に唇を寄せてきた。突起を舌先でもてあそぶ。

「ん、あっ……」

 昨晩の間に、エミーユの体は変えられてしまった。マリウスになぶられて悦ぶ体になったことを自覚する。
 力強く抱くマリウスの腕。
 いまやエミーユにとってマリウスは可愛いだけではない、力強く自分を抱く雄だ。エミーユの腰が快楽に揺れる。
 その腰をマリウスは掴んだ。エミーユの足はマリウスを受け入れるように開き、マリウスのものが侵入してきた。
 すでにエミーユの孔はマリウスの屹立に馴染み、すんなりと受け入れる。
 入ってしまえば逃さないように締め付ける。

「あっ、はあっ」
「エミーユ、すごい。おれをこんなにしめつけて」

 エミーユの腕も足もマリウスを離さまいとその背に絡みついた。全身でマリウスを求めている。
 マリウスがトンと奥を突けばエミーユの背中がしなる。

「ひあぅっ……」
「エミーユ、おれ、う……」

 エミーユは自分の腹がマリウスのもので満たされるのを感じた。マリウスはエミーユの中で果てると、何度もエミーユに口づけする。さも愛おしいものにするように頬を撫でて、頭にも頬にも唇を落とす。
 その手はもうエミーユがマリウスの所有物であるかのように遠慮なくエミーユの体をまさぐっている。尻を撫で、胸の突起をつまんで、体の至る所に唇を落とす。

「おれ、エミーユを幸せにするから。ぜったい、ぜったい、幸せにするね」

 朝陽に陶然とつぶやくマリウスの喜びに満ちた顔があった。
 その顔を見るエミーユの顔が凍り付いていく。

「マリウス、私の発情に付き合わせてすまなかった……」
「おれ、すごく幸せだ! エミーユ、俺、すごく幸せなんだ………!」

 マリウスはエミーユに頬を摺り寄せる。そんなマリウスにエミーユは低い声を出した。

「予定が一日伸びたけど、今日、町に行く」
「えっ?」

 マリウスは茫然としていた。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

【完結】おじさんはΩである

藤吉とわ
BL
隠れ執着嫉妬激強年下α×αと誤診を受けていたおじさんΩ 門村雄大(かどむらゆうだい)34歳。とある朝母親から「小学生の頃バース検査をした病院があんたと連絡を取りたがっている」という電話を貰う。 何の用件か分からぬまま、折り返しの連絡をしてみると「至急お知らせしたいことがある。自宅に伺いたい」と言われ、招いたところ三人の男がやってきて部屋の中で突然土下座をされた。よくよく話を聞けば23年前のバース検査で告知ミスをしていたと告げられる。 今更Ωと言われても――と戸惑うものの、αだと思い込んでいた期間も自分のバース性にしっくり来ていなかった雄大は悩みながらも正しいバース性を受け入れていく。 治療のため、まずはΩ性の発情期であるヒートを起こさなければならず、謝罪に来た三人の男の内の一人・研修医でαの戸賀井 圭(とがいけい)と同居を開始することにーー。

白い部屋で愛を囁いて

氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。 シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。 ※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

【完結】恋愛経験ゼロ、モテ要素もないので恋愛はあきらめていたオメガ男性が運命の番に出会う話

十海 碧
BL
桐生蓮、オメガ男性は桜華学園というオメガのみの中高一貫に通っていたので恋愛経験ゼロ。好きなのは男性なのだけど、周囲のオメガ美少女には勝てないのはわかってる。高校卒業して、漫画家になり自立しようと頑張っている。蓮の父、桐生柊里、ベータ男性はイケメン恋愛小説家として活躍している。母はいないが、何か理由があるらしい。蓮が20歳になったら母のことを教えてくれる約束になっている。 ある日、沢渡優斗というアルファ男性に出会い、お互い運命の番ということに気付く。しかし、優斗は既に伊集院美月という恋人がいた。美月はIQ200の天才で美人なアルファ女性、大手出版社である伊集社の跡取り娘。かなわない恋なのかとあきらめたが……ハッピーエンドになります。 失恋した美月も運命の番に出会って幸せになります。 蓮の母は誰なのか、20歳の誕生日に柊里が説明します。柊里の過去の話をします。 初めての小説です。オメガバース、運命の番が好きで作品を書きました。業界話は取材せず空想で書いておりますので、現実とは異なることが多いと思います。空想の世界の話と許して下さい。

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

運命の息吹

梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。 美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。 兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。 ルシアの運命のアルファとは……。 西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。

α嫌いのΩ、運命の番に出会う。

むむむめ
BL
目が合ったその瞬間から何かが変わっていく。 α嫌いのΩと、一目惚れしたαの話。 ほぼ初投稿です。

さよならの向こう側

よんど
BL
''Ωのまま死ぬくらいなら自由に生きようと思った'' 僕の人生が変わったのは高校生の時。 たまたまαと密室で二人きりになり、自分の予期せぬ発情に当てられた相手がうなじを噛んだのが事の始まりだった。相手はクラスメイトで特に話した事もない顔の整った寡黙な青年だった。 時は流れて大学生になったが、僕達は相も変わらず一緒にいた。番になった際に特に解消する理由がなかった為放置していたが、ある日自身が病に掛かってしまい事は一変する。 死のカウントダウンを知らされ、どうせ死ぬならΩである事に縛られず自由に生きたいと思うようになり、ようやくこのタイミングで番の解消を提案するが... 運命で結ばれた訳じゃない二人が、不器用ながらに関係を重ねて少しずつ寄り添っていく溺愛ラブストーリー。 (※) 過激表現のある章に付けています。 *** 攻め視点 ※当作品がフィクションである事を理解して頂いた上で何でもOKな方のみ拝読お願いします。 ※2026年春庭にて本編の書き下ろし番外編を無配で配る予定です。BOOTHで販売(予定)の際にも付けます。 扉絵  YOHJI@yohji_fanart様

事故つがいの夫は僕を愛さない  ~15歳で番になった、オメガとアルファのすれちがい婚~【本編完結】

カミヤルイ
BL
2023.9.19~完結一日目までBL1位、全ジャンル内でも20位以内継続、ありがとうございました! 美形アルファと平凡オメガのすれ違い結婚生活 (登場人物) 高梨天音:オメガ性の20歳。15歳の時、電車内で初めてのヒートを起こした。  高梨理人:アルファ性の20歳。天音の憧れの同級生だったが、天音のヒートに抗えずに番となってしまい、罪悪感と責任感から結婚を申し出た。 (あらすじ)*自己設定ありオメガバース 「事故番を対象とした番解消の投与薬がいよいよ完成しました」 ある朝流れたニュースに、オメガの天音の番で、夫でもあるアルファの理人は釘付けになった。 天音は理人が薬を欲しいのではと不安になる。二人は五年前、天音の突発的なヒートにより番となった事故番だからだ。 理人は夫として誠実で優しいが、番になってからの五年間、一度も愛を囁いてくれたこともなければ、発情期以外の性交は無く寝室も別。さらにはキスも、顔を見ながらの性交もしてくれたことがない。 天音は理人が罪悪感だけで結婚してくれたと思っており、嫌われたくないと苦手な家事も頑張ってきた。どうか理人が薬のことを考えないでいてくれるようにと願う。最近は理人の帰りが遅く、ますます距離ができているからなおさらだった。 しかしその夜、別のオメガの匂いを纏わりつけて帰宅した理人に乱暴に抱かれ、翌日には理人が他のオメガと抱き合ってキスする場面を見てしまう。天音ははっきりと感じた、彼は理人の「運命の番」だと。 ショックを受けた天音だが、理人の為には別れるしかないと考え、番解消薬について調べることにするが……。 表紙は天宮叶さん@amamiyakyo0217

処理中です...