【本編完結】溺愛してくる敵国兵士から逃げたのに、数年後、××になった彼に捕まりそうです

萌於カク

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星空の出会い4

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 翌朝、エミーユが台所で煮炊きをしているとベッドでゴトリと音が鳴った。
 マリウスが床に片膝をついていた。自分でベッドを降りようとしたのだ。マリウスはバランスを失わずに起き上がった。その様子にマリウスが随分と快復しているのがわかる。

(これならもう大丈夫そうだな)

 マリウスは全裸だった。その上半身には包帯が巻かれているが、痛々しくはなかった。野生の動物のように全身にしなやかな筋肉がついて美しかった。

「トイレはどこ?」

 エミーユの気配に気づいたらしく、エミーユに向いてマリウスは訊いた。
 桶は絶対に嫌だ、と言外ににじみ出ている。
 エミーユは掛布を取って、マリウスの肩にかけた。そして、自分の腕にマリウスの手を掴ませた。

「こちらへ」

 小屋を出て小川に連れて行く。

「ここをまたいでしてください」

 マリウスの足を小川に渡した板に立たせる。

「終わったら呼んでください」

 そう声をかけて離れたところで待っていると、しばらくして声があった。

「エミーユ」
「今行きます」

 そう言うと声を頼りにマリウスはエミーユのほうにやってきた。
 そこへ蹄の音が近づいてくる。馬はマリウスに近寄るとヒヒンと小さくいなないて、嬉しそうにマリウスに首を寄せる。

「ブラックベリー!」

 マリウスも愛馬に気づいて手探りに馬の首を撫でる。
 馬は優しい目をマリウスに向けていた。しばらくそうやって互いの無事を喜んでいた。
 小屋の戸口を開けると、マリウスはぽつりとつぶやいた。

「良い匂いがする」

 小屋の中から干し肉のスープの匂いがしている。それに根菜をヤギの乳で煮込んでおいたものもある。

「お腹が空いたんですね。すぐに用意します」
「あ、え、いや、そうじゃない、そうじゃなくて、あなたから良い匂いが、いや、何でもない」

 口ごもるマリウスの腹が盛大にぐうと鳴った。

「あっ」

 マリウスはまたもや顔を真っ赤にさせてうつむいた。

(大きななりをしているくせに内気だな。兵士なんかまるで似合わない。こんなので戦場でやっていけたんだろうか。いや、やっていけなかったから大怪我を背負ったんだろうな)

 少年の人となりがすでにわかったような気になった。それに気づいて、エミーユは気を引き締める。

(いや、こいつはグレン兵だ。いくら大人しそうでも油断するな)

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