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星空の出会い3
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戸口で物音がするので外に出ると、兵馬がたたずんでいた。
とても賢い馬のようで、エミーユを見ると、軍袋を口で拾い上げて差し出した。剣も持ってきたらしく、地面には鞘が朝陽を受けて照り返っていた。
小屋に入ると、剣を布でくるんで棚の上に放り投げた。
軍袋の中に、医療キットが入っているのを見つけたエミーユは、少年の胴体から包帯代わりに巻いていた布を外して、膏薬を塗って包帯を巻きなおした。
(そうだ、残りの包帯を拝借しよう)
エミーユは少年の頭にも包帯を巻いた。包帯で少年の両目を覆う。
(これでいい)
エミーユは外に出た。
「お前のご主人様は助かりそうだぞ」
桶を出して兵馬に水をやる。
馬の黒い毛がつやつやしている。
畑仕事とヤギの世話を済ませて戻ってくると、ベッドが軋む音がした。見れば少年がベッドの上でもぞもぞと動いている。眠ったまま寝返りを打ったのだ。
快復している証だ。
(眠りが浅いうちに水を飲ませておこう)
エミーユは口移しで水を与えると少年はごくりと喉を鳴らした。何度も水を与えて、最後にハチミツ水を与えた。
少年は次の日も目覚めたり眠ったりして過ごしていた。その間、ハチミツ水を与え続けた。
夜になって、少年がベッドの上に起き上がっているのが見えた。慌ててベッドに向かう。
「まだ起きないほうがいいです。傷口が開いてしまいます」
少年はエミーユの気配に気づいていたのか、エミーユの声には驚かなかった。エミーユを向いて、頭に巻いた包帯に手で触れている。
「失明したくなければ、その包帯を取ってはいけません」
「……し?」
「目を怪我をしています。しばらくそうやって保護しておかないと何も見えなくなります」
少年はエミーユの出まかせを信じて、従順に手をおろした。
「あ……、あなたは?」
その声はかすれている。
エミーユは水差しからコップに水を注ぐと、少年の手を取って、コップを押し当てる。
「これは水です。飲んでください」
少年は渇きに気づいたのか、慌てて受け取ると、ごくごくと喉を鳴らして水を飲み干した。
「ありが、とう」
毒が入っているなどとつゆほども疑っている様子はない。その疑心のなさが少し心配になるくらいだった。
怪我で弱っているせいか、少年には、兵士らしい横柄さや粗野なところが全くない。
(目が見えないと不安だろう。大人しそうだが、いつ豹変しないとも限らない。可哀想だがこのままでいてもらう)
少年の探すような手つきに、エミールは少年に手を差し出した。手が触れたのがわかると、少年はぎゅっと掴んできた。
「あな、たが、おれ、をたすけ、たの?」
そこには戸惑いながらも感謝している様子がうかがえた。
「まだ助けるとは決めていません。あなたの命は私が握ったままです。これからあなたをどうするかは私が決めます」
少年はエミーユの意地の悪い言い方に何ら反感を抱かないようだった。自分が平和を乱す兵士という存在であることを自覚しているのかもしれなかった。
横になるように促すも少年はなかなか横にならなかった。
「えっと、あの、その」
少年は大きな背中を丸めてもじもじとしている。
「あの、トイレ、どこかな」
「ああ、それなら、ここにしてください」
エミーユは床から桶を取り上げた。掛布をめくり上げて、少年の下半身に手を触れる。エミーユの手に遠慮はない。
「あっ、えっ、な、なに?」
「あなた、名を何というのです? 私はエミーユです」
こんなタイミングで名前も何もないはずだが、エミーユはそう言いながら少年の一物を持ち上げると桶に当てた。
「えっ、マリウスだけど。ていうか、ちょ、や、や、やめ」
少年はエミーユの手を押し返そうとした。
少年は全裸である。衣類はすべてエミーユに脱がされている。
エミーユは少年が眠っている間に何度も全身の汗を拭いた。尿を漏らしたときには、その始末もした。体が大きいために結構てこずった。全部見られておいて今更何を恥ずかしがる必要がある、と思う。
「さあ、この桶に」
「お、おけ?」
「ええ、桶です」
エミーユはマリウスの手を桶に触らせた。
「それはその、ちょっと」
「遠慮はいりません」
「あの、でも」
マリウスは抵抗する。
「さあ」
「で、でも」
抵抗しながらもこらえきれなくなったのか、桶にぽとっと尿が垂れる。一度垂れ始めると止まらなくなったのか、勢いよくほとばしる。
「あっ……」
マリウスはうつむいた。頬も耳も真っ赤になっている。
(髪の毛も真っ赤だから大きなリンゴのようだな)
全部出し終えるとエミーユに背中を向けた。すねているようだった。
(まあ、年頃だもんな)
エミーユはマリウスの頭を宥めるように撫でた。
(次からはちゃんとトイレに連れて行ってやろう。トイレというか小川だけどな)
夜になって傷口を確認すると、順調に塞がっているようだった。薬草液をしみ込ませたガーゼを取り換える。
これなら起き上がってもいいだろう。
お椀をマリウスに持たせる。
「ヤギのミルクスープです。飲んでください」
マリウスは黙って受け取った。
やはり疑念を抱く様子もなく従順に飲み干した。
とても賢い馬のようで、エミーユを見ると、軍袋を口で拾い上げて差し出した。剣も持ってきたらしく、地面には鞘が朝陽を受けて照り返っていた。
小屋に入ると、剣を布でくるんで棚の上に放り投げた。
軍袋の中に、医療キットが入っているのを見つけたエミーユは、少年の胴体から包帯代わりに巻いていた布を外して、膏薬を塗って包帯を巻きなおした。
(そうだ、残りの包帯を拝借しよう)
エミーユは少年の頭にも包帯を巻いた。包帯で少年の両目を覆う。
(これでいい)
エミーユは外に出た。
「お前のご主人様は助かりそうだぞ」
桶を出して兵馬に水をやる。
馬の黒い毛がつやつやしている。
畑仕事とヤギの世話を済ませて戻ってくると、ベッドが軋む音がした。見れば少年がベッドの上でもぞもぞと動いている。眠ったまま寝返りを打ったのだ。
快復している証だ。
(眠りが浅いうちに水を飲ませておこう)
エミーユは口移しで水を与えると少年はごくりと喉を鳴らした。何度も水を与えて、最後にハチミツ水を与えた。
少年は次の日も目覚めたり眠ったりして過ごしていた。その間、ハチミツ水を与え続けた。
夜になって、少年がベッドの上に起き上がっているのが見えた。慌ててベッドに向かう。
「まだ起きないほうがいいです。傷口が開いてしまいます」
少年はエミーユの気配に気づいていたのか、エミーユの声には驚かなかった。エミーユを向いて、頭に巻いた包帯に手で触れている。
「失明したくなければ、その包帯を取ってはいけません」
「……し?」
「目を怪我をしています。しばらくそうやって保護しておかないと何も見えなくなります」
少年はエミーユの出まかせを信じて、従順に手をおろした。
「あ……、あなたは?」
その声はかすれている。
エミーユは水差しからコップに水を注ぐと、少年の手を取って、コップを押し当てる。
「これは水です。飲んでください」
少年は渇きに気づいたのか、慌てて受け取ると、ごくごくと喉を鳴らして水を飲み干した。
「ありが、とう」
毒が入っているなどとつゆほども疑っている様子はない。その疑心のなさが少し心配になるくらいだった。
怪我で弱っているせいか、少年には、兵士らしい横柄さや粗野なところが全くない。
(目が見えないと不安だろう。大人しそうだが、いつ豹変しないとも限らない。可哀想だがこのままでいてもらう)
少年の探すような手つきに、エミールは少年に手を差し出した。手が触れたのがわかると、少年はぎゅっと掴んできた。
「あな、たが、おれ、をたすけ、たの?」
そこには戸惑いながらも感謝している様子がうかがえた。
「まだ助けるとは決めていません。あなたの命は私が握ったままです。これからあなたをどうするかは私が決めます」
少年はエミーユの意地の悪い言い方に何ら反感を抱かないようだった。自分が平和を乱す兵士という存在であることを自覚しているのかもしれなかった。
横になるように促すも少年はなかなか横にならなかった。
「えっと、あの、その」
少年は大きな背中を丸めてもじもじとしている。
「あの、トイレ、どこかな」
「ああ、それなら、ここにしてください」
エミーユは床から桶を取り上げた。掛布をめくり上げて、少年の下半身に手を触れる。エミーユの手に遠慮はない。
「あっ、えっ、な、なに?」
「あなた、名を何というのです? 私はエミーユです」
こんなタイミングで名前も何もないはずだが、エミーユはそう言いながら少年の一物を持ち上げると桶に当てた。
「えっ、マリウスだけど。ていうか、ちょ、や、や、やめ」
少年はエミーユの手を押し返そうとした。
少年は全裸である。衣類はすべてエミーユに脱がされている。
エミーユは少年が眠っている間に何度も全身の汗を拭いた。尿を漏らしたときには、その始末もした。体が大きいために結構てこずった。全部見られておいて今更何を恥ずかしがる必要がある、と思う。
「さあ、この桶に」
「お、おけ?」
「ええ、桶です」
エミーユはマリウスの手を桶に触らせた。
「それはその、ちょっと」
「遠慮はいりません」
「あの、でも」
マリウスは抵抗する。
「さあ」
「で、でも」
抵抗しながらもこらえきれなくなったのか、桶にぽとっと尿が垂れる。一度垂れ始めると止まらなくなったのか、勢いよくほとばしる。
「あっ……」
マリウスはうつむいた。頬も耳も真っ赤になっている。
(髪の毛も真っ赤だから大きなリンゴのようだな)
全部出し終えるとエミーユに背中を向けた。すねているようだった。
(まあ、年頃だもんな)
エミーユはマリウスの頭を宥めるように撫でた。
(次からはちゃんとトイレに連れて行ってやろう。トイレというか小川だけどな)
夜になって傷口を確認すると、順調に塞がっているようだった。薬草液をしみ込ませたガーゼを取り換える。
これなら起き上がってもいいだろう。
お椀をマリウスに持たせる。
「ヤギのミルクスープです。飲んでください」
マリウスは黙って受け取った。
やはり疑念を抱く様子もなく従順に飲み干した。
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