63 / 90
63.男子の夢
しおりを挟む
「食べさせたくて、お前に手料理、食わしてるんだろ」
経験豊富な衣笠は、部でも鮮麗の的だったマネージャーの彼女と別れたばかりだ。誰からも憧れのカップルだったのに。噂によると衣笠のほうが、彼女を振ったらしい。理由は話してくれない。
「それがさ、彼女は料理にまったく興味がないみたいなんだよね。俺が頼むから、いやいや作ってくれてるみたい。でもさー、やっぱ彼女が作ってくれる料理、食べたいじゃん!」
悪気がないのはわかるが、相当我がままだ。
「やりたくもないことやらしてたら、だめじゃん。彼女のこと責められんだろ」衣笠も呆れている。
「無理矢理料理させといて、文句言うなよ。もう少し大人になれ」
二人からよってたかって攻撃され、「大人になんてなってたまるか、ずっと子供でいてやる!」綿谷は拗ねてしまった。
「男が料理するのと、女がするんじゃあ、意味がちがうじゃん。彼女のご機嫌取るために、クッキー作ったりケーキ作ったりって、めそめそしてて、かっこ悪くて、鳥肌が立つぜ」
もし俺が白井だったら、こいつにでこピンをくらしてるぜ。
「どうしてそう、わけわからんこと……」
「まあ、でもたしかに、男が彼女のために、せっせと料理するのは、格好悪いよな」
長身の衣笠は、俺たちを見下ろしながら、ぽりぽりと鼻を掻いた。
味方を得て、調子に乗って綿谷が、だろ! だろ! と騒いだ。
「若林も、そう思うだろ?」
喉の奥に、言葉がつっかえた。
その場にふさわしい返答と、本心が逆過ぎて。
「ああ、料理なんかしたら、女になめられるしな」
笛の音が鳴り、前の列がハードルを跳んで行った。
経験豊富な衣笠は、部でも鮮麗の的だったマネージャーの彼女と別れたばかりだ。誰からも憧れのカップルだったのに。噂によると衣笠のほうが、彼女を振ったらしい。理由は話してくれない。
「それがさ、彼女は料理にまったく興味がないみたいなんだよね。俺が頼むから、いやいや作ってくれてるみたい。でもさー、やっぱ彼女が作ってくれる料理、食べたいじゃん!」
悪気がないのはわかるが、相当我がままだ。
「やりたくもないことやらしてたら、だめじゃん。彼女のこと責められんだろ」衣笠も呆れている。
「無理矢理料理させといて、文句言うなよ。もう少し大人になれ」
二人からよってたかって攻撃され、「大人になんてなってたまるか、ずっと子供でいてやる!」綿谷は拗ねてしまった。
「男が料理するのと、女がするんじゃあ、意味がちがうじゃん。彼女のご機嫌取るために、クッキー作ったりケーキ作ったりって、めそめそしてて、かっこ悪くて、鳥肌が立つぜ」
もし俺が白井だったら、こいつにでこピンをくらしてるぜ。
「どうしてそう、わけわからんこと……」
「まあ、でもたしかに、男が彼女のために、せっせと料理するのは、格好悪いよな」
長身の衣笠は、俺たちを見下ろしながら、ぽりぽりと鼻を掻いた。
味方を得て、調子に乗って綿谷が、だろ! だろ! と騒いだ。
「若林も、そう思うだろ?」
喉の奥に、言葉がつっかえた。
その場にふさわしい返答と、本心が逆過ぎて。
「ああ、料理なんかしたら、女になめられるしな」
笛の音が鳴り、前の列がハードルを跳んで行った。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
今日の夜。学校で
倉木元貴
児童書・童話
主人公・如月大輔は、隣の席になった羽山愛のことが気になっていた。ある日、いつも1人で本を読んでいる彼女に、何の本を読んでいるのか尋ねると「人体の本」と言われる。そんな彼女に夏休みが始まる前日の学校で「体育館裏に来て」と言われ、向かうと、今度は「倉庫横に」と言われる。倉庫横に向かうと「今日の夜。学校で」と誘われ、大輔は親に嘘をついて約束通り夜に学校に向かう。
如月大輔と羽山愛の学校探検が今始まる
【総集編】日本昔話 パロディ短編集
Grisly
児童書・童話
⭐︎登録お願いします。
今まで発表した
日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。
朝ドラの総集編のような物です笑
読みやすくなっているので、
⭐︎登録して、何度もお読み下さい。
読んだ方も、読んでない方も、
新しい発見があるはず!
是非お楽しみ下さい😄
⭐︎登録、コメント待ってます。
釣りガールレッドブルマ(一般作)
ヒロイン小説研究所
児童書・童話
高校2年生の美咲は釣りが好きで、磯釣りでは、大会ユニホームのレーシングブルマをはいていく。ブルーブルマとホワイトブルマーと出会い、釣りを楽しんでいたある日、海の魔を狩る戦士になったのだ。海魔を人知れず退治していくが、弱点は自分の履いているブルマだった。レッドブルマを履いている時だけ、力を発揮出きるのだ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる