たまり場に湯気

闇雲の風

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43.自覚

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 興味深そうに話す洋介自身が興奮していた。
おれは急に寒気がしてきた。
「そんな人間いるか? 無視されたり、笑われたり、プリント回ってこなかったりするんだろ。悲しまない人がいるか?」
「思うに、自分を信じ込んでるんだと思う。催眠状態に近いと言っても良いのかも知れない。でも清清しい」
「おまえ、その子のこと、相当気に入ってんだな」
 洋介は意表をつかれたように、きょとんとし、おかしそうに喉を鳴らして笑った。
 いじめはことごとくつまらないことだと思う。楽しがってやる神経が想像できない。
 いい子ちゃんぶっているわけではない。人がいじめられている姿を見て、なにがおもしろいのだろう、いじめられているそいつと、いじめている自分のなにがちがうのだろう。その人たちはなにも、ちがわない。同じ人間として、変わりはない。誰かをいじめるということは、自分をいじめるということだ。
 わかっていても、わかっていなくても、いじめはなくならない。動物は順列をつけないと、安心して生を遂行できない。
「話したことはないのか?」
「一回あるんだけど。向こうはこっちの名前も、知らないかもしれない」

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