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39.行き過ぎた行動
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しばらく待ったが洋介は帰ってこず、家族三人は文句をいいながら、中華料理店をあとにした。家に帰る途中、雨が降っていた。雨がやむまで時間をつぶそうと、遅くまでやっている本屋に途中寄ったが、少々のことではやみそうもないようで、結局タクシーを使って家まで帰ってきた。
玄関の前にずぶ濡れになった洋介が立っていた。滝に当たってきたかのようにずぶ濡れになった服、髪をつたって額からこぼれる雫。
当然、父さんと母さんは洋介の勝手な行動怒ったが、本人は.聞き耳を持たず、バスタオルで髪を乱暴に乾かしている。どこに行っていたのか聞いても、ちょっと友達がいたから、と答えるだけ。自分が悪いくせに、なんでも聞いてくる両親をうっとうしがるのはわかる。プライバシーを守りたいのもわかる。でも今回の洋介は行き過ぎだった。
両親の説教から解放されて、洋介が玄関側の部屋に入って来た。濡れた体を拭き、服も着替え終わっている。髪はまだ湿っていた。
「洋介が悪い。なにも言わずに勝手にいなくなって、すぐ戻るっていいながら全然戻ってこない。今度こそ反省しろ」
洋介は横目で俺を睨みながら、カーペットの上に座り込んだ。
「今度こそってなに。戻ってもいなかったら一人で家に帰ってきただけだろ」
小学一年のときに買ってもらった、学習机とセットのキャスター付き木のイスを後ろに引きながら、弟の顔色をうかがうが、洋介は顔を上げようともしない。
「なんで、あんなことしたんだ。どこに行ってた?」
「どこだっていいじゃん」胡坐をかいてオーディオ機器に手をかける。
「急に出て行くってことは、それなりの理由があったんだろ」
オーディをからは勇ましいロックが流れ始める。いつものようにヘッドホンを装着しない。
「知ってる子がいたんだ」
「友達か?」
「いや、友達なんかじゃない。話したことがあるか、ないかくらいの知り合い程度なんだけど」
胡坐をかいたまま、洋介はこちらに体を向けた。
「だれ、学校の人?」
洋介は頷いた。
「あそこにいるってわかってたのか」
「神宮百貨店でときどき見かけるって、噂が流れてたから」恥ずかしそうに目を反らす。
「ただの知り合いに向かって、走って行ったのか?」
「知り合いかすら、わからない。向こうがぼくのことを覚えてるかどうか」
玄関の前にずぶ濡れになった洋介が立っていた。滝に当たってきたかのようにずぶ濡れになった服、髪をつたって額からこぼれる雫。
当然、父さんと母さんは洋介の勝手な行動怒ったが、本人は.聞き耳を持たず、バスタオルで髪を乱暴に乾かしている。どこに行っていたのか聞いても、ちょっと友達がいたから、と答えるだけ。自分が悪いくせに、なんでも聞いてくる両親をうっとうしがるのはわかる。プライバシーを守りたいのもわかる。でも今回の洋介は行き過ぎだった。
両親の説教から解放されて、洋介が玄関側の部屋に入って来た。濡れた体を拭き、服も着替え終わっている。髪はまだ湿っていた。
「洋介が悪い。なにも言わずに勝手にいなくなって、すぐ戻るっていいながら全然戻ってこない。今度こそ反省しろ」
洋介は横目で俺を睨みながら、カーペットの上に座り込んだ。
「今度こそってなに。戻ってもいなかったら一人で家に帰ってきただけだろ」
小学一年のときに買ってもらった、学習机とセットのキャスター付き木のイスを後ろに引きながら、弟の顔色をうかがうが、洋介は顔を上げようともしない。
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「どこだっていいじゃん」胡坐をかいてオーディオ機器に手をかける。
「急に出て行くってことは、それなりの理由があったんだろ」
オーディをからは勇ましいロックが流れ始める。いつものようにヘッドホンを装着しない。
「知ってる子がいたんだ」
「友達か?」
「いや、友達なんかじゃない。話したことがあるか、ないかくらいの知り合い程度なんだけど」
胡坐をかいたまま、洋介はこちらに体を向けた。
「だれ、学校の人?」
洋介は頷いた。
「あそこにいるってわかってたのか」
「神宮百貨店でときどき見かけるって、噂が流れてたから」恥ずかしそうに目を反らす。
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