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18.かぼちゃの旬
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「試作って、何作ってるの?」
よくぞ聞いてくれた、とでも言うように、父さんは左手に拳を作り胸に当てながら、上体を大きく反らした。
「かぼちゃのポタージュだ。これから寒くなるし、きっとうまいぞー」
すでに自信があるのか、顔からホクホクとあったかそうな笑顔を溢す。まるでジャムおじさんのような。これは試作といいながら、ほぼメニューにすることは決まっているのだろう。かぼちゃは夏に収穫し、数カ月保管して追熟した秋から冬に食べるほうが、甘みが詰まっておいしい。
「それ、かぼちゃのポタージュとオムライスを大盛りにして」
「何だ、宙兄もオムライスか。人気があるなあ」
今やオムライスは人気の頂点まで駆け足で昇りつめていた。最高潮のブームを迎えたあとも、その人気は衰えることを知らず、洋食屋や喫茶店では人気メニューの座を目下独走中である。ぼくも例に漏れず好物だが、そればかりというのでもなく、単に昼間に食いそびれたオムライスを食べておきたいというか、またそればかりでもなく、白井が「本当においしい」と言った、ぼくが作ったオムライスと、父さんのオムライスに、どれくらい差があるのか気になったからだ。
「洋介は、どうする」
手元のメニューをぱらぱらとめくりながら、洋介は決めかねているようだ。
「ビーフシチューを、パンで」
めずらしく、お子様らしくないものだった。お勧めということもあってだろうが。父さんはにんまりと笑った。
「かぼちゃのポタージュとオムライスとビーフシチュー、セットメニューはパンでよろしいですね」
実に満足そうである。
「はい」
ぼくたちは揃って返事をした。どうでもいいから早く持ってきて欲しい気分である。すっかり腹が減ってきていた。父さんはそんな状態を知ってか知らずか、まだ話したりなさそうだが、同時に自慢の料理を早く息子たちに食べてもらいたくもあるようで「ちょっと待っててな」と足早に厨房へと去った。
それから料理が来るまで、ぼくと洋介は、テレビ番組や、学校のむかつく先生、音楽の話で盛り上がった。弟とは二歳年が離れていて、性格もなんとなく自分と違うような気がするが、不思議と気が合う。
よくぞ聞いてくれた、とでも言うように、父さんは左手に拳を作り胸に当てながら、上体を大きく反らした。
「かぼちゃのポタージュだ。これから寒くなるし、きっとうまいぞー」
すでに自信があるのか、顔からホクホクとあったかそうな笑顔を溢す。まるでジャムおじさんのような。これは試作といいながら、ほぼメニューにすることは決まっているのだろう。かぼちゃは夏に収穫し、数カ月保管して追熟した秋から冬に食べるほうが、甘みが詰まっておいしい。
「それ、かぼちゃのポタージュとオムライスを大盛りにして」
「何だ、宙兄もオムライスか。人気があるなあ」
今やオムライスは人気の頂点まで駆け足で昇りつめていた。最高潮のブームを迎えたあとも、その人気は衰えることを知らず、洋食屋や喫茶店では人気メニューの座を目下独走中である。ぼくも例に漏れず好物だが、そればかりというのでもなく、単に昼間に食いそびれたオムライスを食べておきたいというか、またそればかりでもなく、白井が「本当においしい」と言った、ぼくが作ったオムライスと、父さんのオムライスに、どれくらい差があるのか気になったからだ。
「洋介は、どうする」
手元のメニューをぱらぱらとめくりながら、洋介は決めかねているようだ。
「ビーフシチューを、パンで」
めずらしく、お子様らしくないものだった。お勧めということもあってだろうが。父さんはにんまりと笑った。
「かぼちゃのポタージュとオムライスとビーフシチュー、セットメニューはパンでよろしいですね」
実に満足そうである。
「はい」
ぼくたちは揃って返事をした。どうでもいいから早く持ってきて欲しい気分である。すっかり腹が減ってきていた。父さんはそんな状態を知ってか知らずか、まだ話したりなさそうだが、同時に自慢の料理を早く息子たちに食べてもらいたくもあるようで「ちょっと待っててな」と足早に厨房へと去った。
それから料理が来るまで、ぼくと洋介は、テレビ番組や、学校のむかつく先生、音楽の話で盛り上がった。弟とは二歳年が離れていて、性格もなんとなく自分と違うような気がするが、不思議と気が合う。
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