勇気の指輪

森乃あかり

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勇気の指輪

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森の奥にあるお城に、小さな王子様が住んでいました。王子様は少しだけ臆病でした。

城にいるのは自分よりもずっと大きな大人ばかりで、王子様は少し怖かったのです。挨拶をしたくても、向こうから挨拶されてしまいます。王子様は顔を俯けたまま小さな声で返事をするだけでした。

ある日、王子様は森へ散歩にでかけました。森にはさわやかな風が吹き、鳥のさえずりが聞こえてきます。

王子様は森の中に金色に光るものを見つけました。近づいてみるとそれは、金色の小さな指輪でした。

「きれいだな。」

王子様は指にはめてみました。すると王子様を待っていたかのように指輪がほわりと光りました。王子様は心がぽかぽかと暖かくなったような気がしました。

金色の指輪をした王子様は得意気な顔で城へ戻っていきました。森の中を駆け抜けると、城の門が見えてきました。

門の前には門番が立っています。王子様よりもずっと背が高くて強そうな大人です。しかし王子様は不思議と怖くありませんでした。

「ただいま!」

王子様は門番の前に立って大きな声で挨拶をしました。門番は少しだけ驚いた顔をした後、すぐににこやかに微笑んでおかえりなさいと返してくれました。

王子様は胸を張って城の中を歩きました。それまで大人とは顔を合わせることができず、小さな声でしか話せなかった王子様が大きな声で挨拶をする姿を見て、みな驚きました。

「この指輪のおかげだ。」

王子様は金色の指輪を指にはめたまま、眠りにつきました。

次の日も、王子様は元気に挨拶をしました。もう大きな大人たちを見ても怖くありません。王子様の明るい挨拶に、城の中に笑顔があふれました。

その日の午後、王子様はふと自分の手を見ました。しかし金色の指輪はどこにも見当たりません。

「なくしちゃった……」

王子様は指輪がないと挨拶ができないと心配になりました。でも指輪はいつなくしたのかわかりません。王子様は、指輪がなくても挨拶をしていたことに気づきました。

「指輪がなくても大丈夫だ。」

これからは自分の力でがんばろうと、王子様は胸を張りました。

「ありがとう、勇気の指輪。」

その日の夜、王子様は森に向かってつぶやきました。すると、王子様の声に反応するかのように、森の中できらりと何かが光りました。
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