中2女子が夏休みに、異世界を救うことになりました!〜RPGにようこそ〜

さこゼロ

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第3章(続き)

斬岩刀を持つ漢 7

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アイたちが洞窟を進んでいくと、とうとう下り道が終わり平坦な道に変わった。どれほど下ってきたのだろうか、周りの空気が少し肌寒い。

「なんだか少し、薄気味悪いです」

フランが自分の身体を抱きしめながら、軽く身震いをする。

「うわー、大変だぁー!」

そのとき突然、アイが頭を抱えて叫んだ。

「ど、どうした?」

ターニャが辺りを警戒する。

「帰りはずっと登りだー」

アイの訴えに、全員の目が点になった。

「C級は気楽でいいでゴザルな」

ゾンボルがやれやれと肩をすくめる。

(確かにそれは、大問題だけれども…)

おキクもさすがにフォローが出来ない。

そこに助け舟(?)を出したのがミーコであった。

「奥の広間に魔法陣の反応を確認」

「…魔法陣?何かの魔法?」

おキクが前方の暗闇を注意深く見据える。

「術式不明です。現在も稼動中」

「とりあえず行くしかない。全員注意しろよ」

ターニャは先頭に進み出ると、全員の顔をゆっくりと見回した。

暫く行くと、大きな空間に出た。入り口からでは部屋全体を照らしきれない。

「どうだ?」

ターニャは中の様子を伺ってから、ミーコの方に視線を下ろした。

「未だ術式稼働中。魔物の反応はありません」

「…よし、入るぞ」

中はかなりの広さがあり、半球状のドーム型の造りになっている。警戒しながら進んでいくと、おそらく部屋の中心に当たる場所に、1体の人影が浮かび上がった。

全員が一斉に立ち止まり、ゴクリと息を飲む。しかしその人影には、動きだす気配が全くない。

「ここにいろ」

そう言ってターニャが、再び前進を開始した。ミーコもトトッと後に続く。

光の中に浮かび上がった人影は、1体の西洋甲冑であった。その甲冑の足下では、魔法陣が淡い光を放っている。そして胴体の心臓部分には、1本の杭が打ち込まれていた。

「ヤベーっ!」
「死霊鎧です!」

ターニャとミーコが同時に声を張り上げた。

その瞬間、魔法陣から強烈な光が溢れ出し、西洋甲冑がギギギッと動き始める。背中に担いでいた柄の長い2本のアックスを両手に握りしめた。

「セーレー!」

アイが右耳のピアスにサッと触れる。

「怨念を媒体とした生きる鎧リビングアーマーです。神聖系の上級魔法『閻魔の審判ヘブンズジャッジ』以外に倒す方法が皆無です」

「なんで?魔操鎧みたく弱点ないの?」

「心臓の杭を破壊すれば鎧は崩れ去りますが、自分を倒した相手に怨念が取り憑きます。取り憑かれた者は自我を失い、死ぬまで戦い続けます」

「ええっ!?」

「ひとまず撤退を推奨します」

セーレーの静かな提案が、広間に響き渡った。

「大賛成だ!逃げろ!」

ターニャが走りながら声を張り上げる。

その後を追いかけるように、死霊鎧がガシャガシャと歩き始めていた。

   ~~~

アイたちは下りて来た道を駆け上がり始めた。ひたすら登り道が続く地獄の逃避行になる。

ガシャガシャと後方から響いてくる音が、追跡者が諦めていないことを物語っていた。

やっと曲がり道まで戻ってきたところで、ゾンボルが両膝をついてへたり込んだ。

「某、ゼヒーゼヒー、もう走れないで、ゴザル」

「ゾンボル、立て!もう少しだ!」

ターニャが振り返って叱咤激励する。

「もう、ゼヒーゼヒー、限界でゴザル」

その時ガシャガシャと闇の奥で響く音が、直ぐ真後ろまで近付いてきた。

「ゾンボルさん!」

背中に背負う大盾を下ろしながら、フランが咄嗟に飛び出す。

次の瞬間、闇の中から死霊鎧がヌッと現れ、右手の斧を振り上げた。フランが間一髪で割り込むと、ゾンボルへの一撃を何とか受け止める。

「ゾンボルさん、立ってください。早く逃げて!」

フランが全身で大盾を支えながら、悲鳴のような声をあげた。

「駄目でゴザル。もう足が動かないでゴザル」

ゾンボルは首を、何度も横にブンブンと振って泣き叫んだ。

「B級なんだろ?諦めんな!」

戻ったターニャが自分の肩を貸し、ゾンボルを強引に立ち上がらせようとする。

死霊鎧は右手の斧をギリギリとフランの盾に押し付けながら、左手の斧をスッと横に構えた。

「右から来るぞ!」

それに気付いたターニャが、フランの背中に向けて叫んだ。

「え?」

フランが顔を向けた時には、斧は既に目前に迫っていた。

しかし次の瞬間、死霊鎧の左肘から先が、宙を舞って闇の奥に消えていく。

「フラン、大丈夫?」

おキクが両手剣を突きの体勢で構えたまま、フランの真後ろに立っていた。

「はい、なんとか」

それからおキクは、死霊鎧の左足を横薙ぎに斬り払う。するとバランスを失った死霊鎧は、その場にガシャンと倒れ込んだ。

しかしその時、先ほど斬り飛ばした左腕が、闇の奥から戻ってきて肘の部分にスッと収まる。

(やっぱりそうなのね)

おキクは「ハァ」と溜め息をついた。そして覚悟を決める。

「アイ!私、このアバター諦める」

「…え?」

アイはただ呆然と、おキクの顔を見つめた。

「もし私が取り憑かれたら、両足を砕いて動けなくしてから、この洞窟を封鎖して」
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