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番外編

イバキ市奪還作戦 2

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作戦の第一目標は橋の先にある「国立魔術学院」の奪還である。

この施設には防護魔法陣が施されているので、コレを再起動させ進軍の拠点とする為だ。さらには様々な設備も整っているので、拠点として使うにはうってつけの場所と言える。

全長が300m程もあるヒクエン大橋の半ばを過ぎても、魔物が襲ってくる気配がなかった。作戦の実行を急いだ理由がここにある。

二度に渡る大規模襲撃によって、イバキ市に巣食う魔物の勢力は激減していると、軍の上層部は推測している。時間的猶予を与えては、魔物の勢力が再集結してしまう可能性が高い。そのため夜が近付く時間帯とはいえ、作戦が決行されたのだ。

「サカシタ、やることはいつも通りだ。しっかりついて来いよ!」

「分かってる!」

突撃部隊の先頭を走るアサノの声に、後に続くサカシタが力強く応える。

「セーレーもフォロー頼む」

「分かっています。アサノ」

アサノの左肩の辺りに、キラリと輝く立方体キューブが浮かび上がっている。サカシタの左肩にも同様に、立方体が浮いていた。

アサノの精鋭部隊には2人以外にあと3人、魔法士2人と回復士が1人の5人構成となっている。いずれも軍での評価の高い精鋭である。

ひとり目の魔法士はラントという。185cmを超える大きな体格の男性。オールバックの金髪に黒い瞳の鋭い目付きをしている。軍から支給されている黒い胸甲鎧ブレストアーマーに黒いマント(内側は赤)を羽織り、白い長ズボンと黒のブーツを履いている。手には30cm程の木製の魔法杖ロッドを持っていた。

ふたり目の魔法士はサンドラという。身長はアサノと同じくらいの160cm程の女性。深緑色の大きな瞳と肩まである黄緑色の髪を両おさげの三つ編みに結っている。軍の支給品である黒い胸甲鎧ブレストアーマーに白い長ズボンと黒のブーツを履き、膝下まである黒のコートを羽織っている。手には1mを超える木製の魔法杖ワンドを持っていた。

最後は回復士のシーナである。170cm程の長身の女性。水色のショートヘアに少しタレ目の群青色の瞳。軍からの支給品である黒の胸甲鎧ブレストアーマー、白い長ズボン、黒のブーツ、黒のコートを着けている。手には木製の魔法杖ロッドを持っていた。

   ~~~

「アサノ、上空に5体の風切鳥です」

左肩のセーレーがアサノに警告を発する。橋の全長の4分の3を過ぎた辺りであった。

特に声をひそめている訳ではないので、全員に情報が共有される。普段から行動を共にする機会の多いこの3人は、アサノたちの正体を知る数少ない人間であった。

「聞こえたな。いつも通りやるぞ!」

「了解!」

全員が揃って返事を返す。

「セイバー!」
「ハルバード!」

アサノとサカシタが武器を呼び出した。

アサノたちの動きを察知して、冒険者たちも上空の魔物を確認する。各々に戦闘態勢に入った。

「ファントム」

アサノの声でスキルモードが開始する。それから片手剣の剣先で前方の地面を指し示すと「セット」と唱えた。

すると指示した場所に魔法陣が出現し、スーと上方に浮かび上がって消えていく。同時にその場所に、存在感の薄いアサノの幻影が現れた。幻影の持続時間は10秒程である。

粘土壁クレイウォール

示し合わせたようにラントが魔法を唱えた。幻影の足下に魔法陣がパッと広がり、丸太のような粘土壁が迫り上がる。

スキルの効果により、誘き寄せられた3体の風切鳥が幻影に突撃してきた。そのまま粘土に突き刺さって、身動きがとれなくなる。

それを確認したサンドラが、右手の魔法杖ワンドを頭上に掲げて魔法を唱えた。

雷神の怒りサンダーボルト

粘土壁の上方に魔法陣が描かれると、瞬時に稲妻が降り注いだ。一瞬で3体の風切鳥が消滅する。

残りの2体も冒険者たちが討伐に成功していた。トリモチを使った形跡はない。どうやらそれなりの人員が揃っているようだ。

「急ぐぞ!」

夜間は夜目の効く魔物の方が有利になる。あまり時間をかけてはいられない。

アサノはすぐに駆け出した。

目指すは、目前に迫る「国立魔術学院」である。
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