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第3章

ヨーケバ城跡の悪魔 10

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「オレがアイツの注意を引きつける。その間にお前らは作戦の準備を頼む」

ターニャが「剛雷ガンボルト」「瞬雷シエンボルト」を唱えながらアイたち3人の顔を見た。

「正直3分だ。それ以上はキツイ」

「3分…分かりました」

アイがターニャを真っ直ぐに見つめながらコクンと頷く。するとターニャがアイに歩み寄り、その肩にポンと手を乗せた。

「お前らと一緒じゃなけりゃ、オレはきっとココで死んでた。アリガトな」

「…え?」

ターニャの突然の言葉に、アイがポカンと間抜けな顔になる。

「絶対勝つぞ!」

「は、はい!」

ターニャが再び全員を見回すと、力強く声を張り上げた。アイたち3人は反射的に揃って応える。

「じゃ、行ってくる」

続いて声が聞こえたかと思うと、部屋の出入り口に稲妻の余韻だけが残っていた。

   ~~~

ターニャは出入り口から飛び出すと、建物に覆いかぶさる黒地竜の背後に一瞬で回り込んだ。どうやら黒地竜には気付かれていない。

「悪いがココで、片目を貰う!」

ターニャは瞬時に跳躍すると、黒地竜の頭部に一瞬で降り立つ。同時にギロリと睨みつけた黒地竜の紅い左眼を、ターニャの右拳が打ち抜いた。

「ガアアアーー!」

黒地竜は仰け反るように、二本脚で立ち上がり絶叫する。大きく頭を揺さぶりターニャを振り払うと、左眼から紫色の血が勢いよく吹き出した。

黒地竜の頭部から吹き飛ばされたターニャは、空中でヒラリと体勢を整え、そのまま綺麗に着地する。

ダーーンと前脚を地面に打ち付けると、黒地竜は残った右眼でターニャを睨みつけた。口の端から炎がボボボと噴き出している。

「来いよ」

ターニャは足元にあった自分の頭部ほどもある石を拾い上げると、左の手のひらの上に乗せた。それから右足を引いて半身になると、右肘を折りたたんで掌底で構える。

怒りに任せた黒地竜が口を大きく開いた瞬間、ターニャは掌底で岩石を撃ち出した。

電流を帯びたその石は、空気を切り裂き直進し、黒地竜の口から放たれた瞬間の火球のブレスと正面衝突する。

その直後、黒地竜の顔の目前で大爆発を起こし、ドゴーーォンと轟音が響き渡った。

「グオオオ!」

黒地竜は再び大きく仰け反り、苦痛に満ちた唸り声をあげる。それから怒り狂ったように、ターニャを目掛けて四つ脚で突進し始めた。

「よし、ついて来い!」

ターニャは目を細めてニヤリと笑うと、一目散に逃走を開始した。

  ~~~

アイたちは石造りの、厩舎であったと思われる細長い建物のそばに来ていた。

長方形の短辺の片方には壁がなく、黒地竜を誘い込む入り口として充分な大きさをしている。突き当たりとなるもう片方の短辺の壁には、人が通れる程度の出入り口があり、作戦の遂行にちょうど良い形状をしている。

一度入ると黒地竜の身体の大きさでは振り返ることが出来なくなり、簡単には出て来れない筈だ。

「フラン、この建物にスキルを使って、合図したら解除してもらえる?」

「それは構いませんが…解除するには対象に触れなければならないんです」

アイの提案に、フランが申し訳なさそうに俯き加減で口を開く。

「…え?」

アイは言葉に詰まった。

スキルを解除すればその途端に、黒地竜は建物を一瞬で破壊するだろう。そうなれば、そばにいるフランの身がかなりの危険に晒される事になる。

「いえ、大丈夫です。なんとかやってみます」

フランは拳を握ってグッと気合いを入れた。

「思ったんだけど…フランのスキルって、同時に何個も状態固定に出来るの?」

そのときおキクが、素朴な疑問を口にする。

「いえ、ひとつだけです。次に使うと、前のは自動的に…あ、そうか!」

「うん、それでいこう!」

アイが2人の顔を見回すと、3人揃って頷いた。

「それと…どデカいのをかますから、おキクは私の身体を後ろから支えてて」

「…あ!」

アイの何やら企むような顔を見て、おキクは思わず大きな声を出す。

「やるのね」

「うん」

アイはちょっと愉しそうに大きく頷くと、片膝をついて地面に右手を付けた。

「バーストバレット!」
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