53 / 98
第2章
星の郷 9
しおりを挟む
太陽がかなり沈み、辺りが薄暗くなってきた。
「アイ、急いでください。魔物の方が夜目が効くので、暗くなるとこちらが不利です」
「簡単に言うな」
アイは忌々しそうに、ピアスを指でピンと弾いた。
「フラン、お願い!」
「任せて!」
ふたりは視線で合図を交わすと、同時に頷く。
その直後、アイは一気に川辺に飛び出した。その姿を捉えた石撃鴉は編隊を組み直し、アイを目掛けて急降下を始める。
この時アイは空を見上げなかった。フランに任せたからには自分のやるべきことに集中する。その期待に応えるかのように、フランの大盾はアイの真横にピッタリとついて来ていた。
(……?)
奇妙な違和感に、アイは後ろに振り返る。
すると森の端に立つフランの、こちらに向けている右の手のひらに、円形の魔法陣が浮かび上がっていた。
フランはアイと目が合うと、ペロッと舌を出し「テヘッ」と笑う。
「あ、ズルイ!」
しかしそのとき、アイの抗議をかき消すように、石の飛礫が「ガガッ」と降り注いだ。
「きゃあ!」
アイはその場にしゃがみ込む。
物凄い衝撃音とともに、深々と地面が抉れる。アイへの直撃コースにあった2発の石飛礫は、フランの盾がしっかりと弾き返した。
「う…裏切り者ーーっ!」
アイは泣き叫びながら再び走り出すと、川の浅瀬にパシャパシャと踏み込む。それから水面に左手を当てて声を張り上げた。
「バーストバレット!」
声と同時に、左手の下から魔法陣が広がる。そのあとアイは、魔法陣から出現した正四面体を掴み取ると、直ぐさま短銃に装填した。
時を同じくして、アイを狙って別角度から降下してきた石撃鴉が、石の飛礫を撃ち出した。しかしフランの大盾は、しっかりと3発の石弾を弾き飛ばす。外れた残りの石弾は、アイの左右の水面を貫き、轟音とともに凄まじい水飛沫が噴き上がった。
アイは舞い上がった水飛沫を全身に浴びながら、短銃を空に向けて両手で構える。
5体の石撃鴉は上空で旋回し、再度編隊を組み直すと、アイを目掛けて再び急降下を始めた。それから石飛礫を撃ち出すために、石撃鴉が大口を開けた瞬間…アイは一気に引金を引いた。
その瞬間、針のような無数のレーザーが、ワイドシャワーのように空一面に放射された。
5体の石撃鴉は無数のレーザーに貫かれ、体勢を崩して墜落する。しかし川の中で身を起こすと、両翼を大きく開いて再び飛び立とうとした。
「おキク!」
アイが石撃鴉を見据えながら、振り向きもしないで声を張り上げる。
同時にアイの期待に応えるように、おキクが森から飛び出してきた。一瞬で2体を刺し貫く。
アイも近くの相手に弾丸を撃ち込むが、撃破に3発必要とした。
その隙に、おキクが更にもう2体も撃破する。
それを見届けた全員が、「ワッ」と歓声をあげながらアイの元に集まった。アイの周りを取り囲んで、強敵の撃破を喜び合う。
だけどそのときアイだけは…何だか素直に喜べなかった。
~~~
既に陽は沈み、辺りは暗くなっていた。
アイたちが白い石造りの遺跡に辿り着くと、ミーコに先導されてリンとナトリが姿を現す。
「ナートーリーっ!」
その姿を見つけると、ディアが豪炎の炎に包まれ影と化し、目だけが真っ赤に輝いた。
「ちょ、ちょっとタンマ!もうちょっと…」
ナトリが両手を突き出し抵抗する。
その時…小さな光の粒が、二人の間をすぅーっと通り過ぎた。
「あっ!!」
その途端、ナトリが一瞬で破顔する。そして両手を広げてクルリと一回転した。つられて皆んなも周りの景色に目を向ける。
するとそのとき、ちらほらと光の粒が現れ始めたかと思うと、一気に無数の光が舞い上がった。
「こ、これは…」
驚きで、ディアの声が大きく震える。
「間違いない、星子虫だ!こんな所にいたのか」
無数の星子虫は、ゆっくりと明滅を繰り返しながら遺跡いっぱいに飛び廻る。アイですらはしゃぐのを忘れて、この幻想的な光景に見惚れていた。
「どーだ、リン。スゲーだろ?」
ナトリがリンに笑いかける。
「うん、スゲー!」
リンは星に包まれた遺跡の中を、両手を広げて走り回った。
「ナトリ」
ディアがゆっくりと、ナトリに近付いていく。
「あ、母ちゃん。どうだ?」
「ああ、良いものを見せて貰ったよ」
ディアは優しく微笑んだ。
「だがな…ソレはソレ、コレはコレだ!」
次の瞬間、ディアの怒りの鉄拳が、ナトリの脳天を真上から強襲した。
「いってーーーーっ!」
星子虫に負けないくらいの大きな星が、悲鳴とともにナトリの目玉から飛び出していた。
「アイ、急いでください。魔物の方が夜目が効くので、暗くなるとこちらが不利です」
「簡単に言うな」
アイは忌々しそうに、ピアスを指でピンと弾いた。
「フラン、お願い!」
「任せて!」
ふたりは視線で合図を交わすと、同時に頷く。
その直後、アイは一気に川辺に飛び出した。その姿を捉えた石撃鴉は編隊を組み直し、アイを目掛けて急降下を始める。
この時アイは空を見上げなかった。フランに任せたからには自分のやるべきことに集中する。その期待に応えるかのように、フランの大盾はアイの真横にピッタリとついて来ていた。
(……?)
奇妙な違和感に、アイは後ろに振り返る。
すると森の端に立つフランの、こちらに向けている右の手のひらに、円形の魔法陣が浮かび上がっていた。
フランはアイと目が合うと、ペロッと舌を出し「テヘッ」と笑う。
「あ、ズルイ!」
しかしそのとき、アイの抗議をかき消すように、石の飛礫が「ガガッ」と降り注いだ。
「きゃあ!」
アイはその場にしゃがみ込む。
物凄い衝撃音とともに、深々と地面が抉れる。アイへの直撃コースにあった2発の石飛礫は、フランの盾がしっかりと弾き返した。
「う…裏切り者ーーっ!」
アイは泣き叫びながら再び走り出すと、川の浅瀬にパシャパシャと踏み込む。それから水面に左手を当てて声を張り上げた。
「バーストバレット!」
声と同時に、左手の下から魔法陣が広がる。そのあとアイは、魔法陣から出現した正四面体を掴み取ると、直ぐさま短銃に装填した。
時を同じくして、アイを狙って別角度から降下してきた石撃鴉が、石の飛礫を撃ち出した。しかしフランの大盾は、しっかりと3発の石弾を弾き飛ばす。外れた残りの石弾は、アイの左右の水面を貫き、轟音とともに凄まじい水飛沫が噴き上がった。
アイは舞い上がった水飛沫を全身に浴びながら、短銃を空に向けて両手で構える。
5体の石撃鴉は上空で旋回し、再度編隊を組み直すと、アイを目掛けて再び急降下を始めた。それから石飛礫を撃ち出すために、石撃鴉が大口を開けた瞬間…アイは一気に引金を引いた。
その瞬間、針のような無数のレーザーが、ワイドシャワーのように空一面に放射された。
5体の石撃鴉は無数のレーザーに貫かれ、体勢を崩して墜落する。しかし川の中で身を起こすと、両翼を大きく開いて再び飛び立とうとした。
「おキク!」
アイが石撃鴉を見据えながら、振り向きもしないで声を張り上げる。
同時にアイの期待に応えるように、おキクが森から飛び出してきた。一瞬で2体を刺し貫く。
アイも近くの相手に弾丸を撃ち込むが、撃破に3発必要とした。
その隙に、おキクが更にもう2体も撃破する。
それを見届けた全員が、「ワッ」と歓声をあげながらアイの元に集まった。アイの周りを取り囲んで、強敵の撃破を喜び合う。
だけどそのときアイだけは…何だか素直に喜べなかった。
~~~
既に陽は沈み、辺りは暗くなっていた。
アイたちが白い石造りの遺跡に辿り着くと、ミーコに先導されてリンとナトリが姿を現す。
「ナートーリーっ!」
その姿を見つけると、ディアが豪炎の炎に包まれ影と化し、目だけが真っ赤に輝いた。
「ちょ、ちょっとタンマ!もうちょっと…」
ナトリが両手を突き出し抵抗する。
その時…小さな光の粒が、二人の間をすぅーっと通り過ぎた。
「あっ!!」
その途端、ナトリが一瞬で破顔する。そして両手を広げてクルリと一回転した。つられて皆んなも周りの景色に目を向ける。
するとそのとき、ちらほらと光の粒が現れ始めたかと思うと、一気に無数の光が舞い上がった。
「こ、これは…」
驚きで、ディアの声が大きく震える。
「間違いない、星子虫だ!こんな所にいたのか」
無数の星子虫は、ゆっくりと明滅を繰り返しながら遺跡いっぱいに飛び廻る。アイですらはしゃぐのを忘れて、この幻想的な光景に見惚れていた。
「どーだ、リン。スゲーだろ?」
ナトリがリンに笑いかける。
「うん、スゲー!」
リンは星に包まれた遺跡の中を、両手を広げて走り回った。
「ナトリ」
ディアがゆっくりと、ナトリに近付いていく。
「あ、母ちゃん。どうだ?」
「ああ、良いものを見せて貰ったよ」
ディアは優しく微笑んだ。
「だがな…ソレはソレ、コレはコレだ!」
次の瞬間、ディアの怒りの鉄拳が、ナトリの脳天を真上から強襲した。
「いってーーーーっ!」
星子虫に負けないくらいの大きな星が、悲鳴とともにナトリの目玉から飛び出していた。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる