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第2章
星の郷 5
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リンとナトリは街を抜けて森の中を歩いていた。
「まずは真っ直ぐ川に行くんだ」
ナトリは少し偉そうに、右手で前を指差す。
「川に着いたら、その川を山に向かって真っ直ぐ行って、そしたら石で出来た変な所があって、そこがゴール」
「石の場所?なんかスゴイ」
リンは浮かれて喜んだ。
森の中を歩き続けると、木々の向こうに流れるマナノ川が見え始める。
「見えた、川だ!」
ナトリとリンは走って川原に出た。
「あとは川を真っ直ぐ行くだけ。簡単だろ?」
「うん、簡単」
小石混じりの砂利の川原を歩きながら、リンは楽しそうに笑った。
刻は夕暮れ。ふたりの右手に見える夕陽が、少しずつ山裾に隠れ始めていた。
~~~
夕方になりアイたちがディアの家に戻ると、フォーラとディアが蒼い顔で家の前に立っていた。
「アイさん、おキクさん。リンとナトリくんを見ませんでしたか?」
アイたちに気付いたフォーラが、焦った顔で駆け寄ってくる。
「…えっと、見てないです」
「私も…見てません」
「何かありましたか?」
アイとおキクが首を横に振り、フランがフォーラに質問を返した。
「ふたりで庭で遊んでいた筈なのですが、いつのまにか居なくなってしまったのです」
「ナトリのヤツが、何か唆したに違いない」
ディアがパキリと指を鳴らした。怒りのオーラで髪を逆立ち始める。
(ミーコもいない。一緒にいるのね)
おキクは辺りを見回しミーコの姿がない事を確認すると、アイの耳元に顔を寄せた。
「セーレー、ミーコを探して」
「…アマタノ森を南下中のようです」
アイのピアスがキラリと煌めくと、瞬時に回答が返ってくる。
「大丈夫!ミーコの居場所なら分かるから、私たちがパパッと探してくるよ」
アイがトンと胸を叩きながら進言した。
「分かるなら連れていってくれよ。ナトリのヤツにガツンと入れてやらなきゃ気が済まない!」
ディアに凄まれ、アイは思わず頷いた。
「私も行きます。そんなに何でも、アイさんたちに甘える訳にはいきません」
ディアの同行を許可してしまった以上、フォーラの同行を断る訳にはいかなかった。
~~~
(灰色狼3体を検知)
ミーコは閉じていた目を開いた。
このままでは、子どもたちに危険が及ぶ。なんとかしなければならない。
「リン、リン」
ミーコはリンの腕から伸び上がって、少女の耳元に顔を近付ける。
「…誰?」
リンは不思議そうな顔でキョロキョロした。
「私よ、私」
ミーコはリンの腕から勢いよく飛び降りる。
「え…ミーコ?」
「コイツ、喋った!」
リンとナトリが白い仔猫に驚きの視線を向けた。
「落ち着いて、ふたりとも。皆んなには絶対内緒だけど、私の正体は精霊なの」
「精霊!?」
ふたりの声が綺麗に揃う。
「アナタたちが勇敢な冒険者だから、正体を教えたのよ。そんなに驚かないでほしいわ」
「お…おう。別にこれくらい何ともないぜ」
「リンも別に驚いてない」
ふたりは、勇敢な冒険者扱いに気を良くした。
「さすが勇敢な冒険者ね。では…これから大事なことを言うわよ」
ミーコの言葉に、リンとナトリは真剣に頷く。
「私のことを探している悪い魔物が、この近くに現れたの。ヤツらに見つかってしまったら、この世界が大変なことになってしてしまう。だから…隠れるのを手伝ってほしいの」
「魔物!?」
魔物の存在に、ナトリはブルブルと怯えた。
「怖いけど…隠れるのはリンでも出来る。ミーコはリンがちゃんと守る」
例え怖くても守ることは出来る。これはリンが、自分で学んだことであった。
「オ、オレも出来るぜ」
年下の女の子に負ける訳にはいかない。ナトリも意地を見せる。
「心強いわ」
ミーコは満足そうに頷いた。
「それではさっそく、そこの草むらに隠れて」
ヒョイと視線を向けるミーコに促され、リンとナトリは茂みの中に姿を隠す。
しばらくそこで息を潜めていると、50m程離れた川下に3体の灰色狼が現れ、川を越えてタルノ市の方向へと姿を消した。
ここで迂闊に戻れば、コチラに向かっているおキクたちとの戦闘に巻き込まれてしまう。
逆にこの先に、不思議な反応を示す場所がある。情報によると、ハタモノ遺跡となっている。旧時代の神域が、魔物から姿を隠す役に立ちそうだ。
ミーコはこのまま進む決断をした。
「川が見える範囲で森の中を歩いて、秘密の場所を目指しましょう」
「まずは真っ直ぐ川に行くんだ」
ナトリは少し偉そうに、右手で前を指差す。
「川に着いたら、その川を山に向かって真っ直ぐ行って、そしたら石で出来た変な所があって、そこがゴール」
「石の場所?なんかスゴイ」
リンは浮かれて喜んだ。
森の中を歩き続けると、木々の向こうに流れるマナノ川が見え始める。
「見えた、川だ!」
ナトリとリンは走って川原に出た。
「あとは川を真っ直ぐ行くだけ。簡単だろ?」
「うん、簡単」
小石混じりの砂利の川原を歩きながら、リンは楽しそうに笑った。
刻は夕暮れ。ふたりの右手に見える夕陽が、少しずつ山裾に隠れ始めていた。
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夕方になりアイたちがディアの家に戻ると、フォーラとディアが蒼い顔で家の前に立っていた。
「アイさん、おキクさん。リンとナトリくんを見ませんでしたか?」
アイたちに気付いたフォーラが、焦った顔で駆け寄ってくる。
「…えっと、見てないです」
「私も…見てません」
「何かありましたか?」
アイとおキクが首を横に振り、フランがフォーラに質問を返した。
「ふたりで庭で遊んでいた筈なのですが、いつのまにか居なくなってしまったのです」
「ナトリのヤツが、何か唆したに違いない」
ディアがパキリと指を鳴らした。怒りのオーラで髪を逆立ち始める。
(ミーコもいない。一緒にいるのね)
おキクは辺りを見回しミーコの姿がない事を確認すると、アイの耳元に顔を寄せた。
「セーレー、ミーコを探して」
「…アマタノ森を南下中のようです」
アイのピアスがキラリと煌めくと、瞬時に回答が返ってくる。
「大丈夫!ミーコの居場所なら分かるから、私たちがパパッと探してくるよ」
アイがトンと胸を叩きながら進言した。
「分かるなら連れていってくれよ。ナトリのヤツにガツンと入れてやらなきゃ気が済まない!」
ディアに凄まれ、アイは思わず頷いた。
「私も行きます。そんなに何でも、アイさんたちに甘える訳にはいきません」
ディアの同行を許可してしまった以上、フォーラの同行を断る訳にはいかなかった。
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(灰色狼3体を検知)
ミーコは閉じていた目を開いた。
このままでは、子どもたちに危険が及ぶ。なんとかしなければならない。
「リン、リン」
ミーコはリンの腕から伸び上がって、少女の耳元に顔を近付ける。
「…誰?」
リンは不思議そうな顔でキョロキョロした。
「私よ、私」
ミーコはリンの腕から勢いよく飛び降りる。
「え…ミーコ?」
「コイツ、喋った!」
リンとナトリが白い仔猫に驚きの視線を向けた。
「落ち着いて、ふたりとも。皆んなには絶対内緒だけど、私の正体は精霊なの」
「精霊!?」
ふたりの声が綺麗に揃う。
「アナタたちが勇敢な冒険者だから、正体を教えたのよ。そんなに驚かないでほしいわ」
「お…おう。別にこれくらい何ともないぜ」
「リンも別に驚いてない」
ふたりは、勇敢な冒険者扱いに気を良くした。
「さすが勇敢な冒険者ね。では…これから大事なことを言うわよ」
ミーコの言葉に、リンとナトリは真剣に頷く。
「私のことを探している悪い魔物が、この近くに現れたの。ヤツらに見つかってしまったら、この世界が大変なことになってしてしまう。だから…隠れるのを手伝ってほしいの」
「魔物!?」
魔物の存在に、ナトリはブルブルと怯えた。
「怖いけど…隠れるのはリンでも出来る。ミーコはリンがちゃんと守る」
例え怖くても守ることは出来る。これはリンが、自分で学んだことであった。
「オ、オレも出来るぜ」
年下の女の子に負ける訳にはいかない。ナトリも意地を見せる。
「心強いわ」
ミーコは満足そうに頷いた。
「それではさっそく、そこの草むらに隠れて」
ヒョイと視線を向けるミーコに促され、リンとナトリは茂みの中に姿を隠す。
しばらくそこで息を潜めていると、50m程離れた川下に3体の灰色狼が現れ、川を越えてタルノ市の方向へと姿を消した。
ここで迂闊に戻れば、コチラに向かっているおキクたちとの戦闘に巻き込まれてしまう。
逆にこの先に、不思議な反応を示す場所がある。情報によると、ハタモノ遺跡となっている。旧時代の神域が、魔物から姿を隠す役に立ちそうだ。
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