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第2章
星の郷 1
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翌日のお昼過ぎ。アイたちはカタン市に戻ると、すぐに冒険者の詰所に向かった。
登録証を手に入れて初めての魔物討伐だったので、報酬がどのくらいになるのか、楽しみで仕方がなかった。アルバイト代のお給料をまだ受け取った事がない現状、アイとおキクにとって初めて稼いだお金ということになる。
詰所は相変わらず賑やかなところであった。たくさんの冒険者が、所狭しとごった返している。
「良かった、無事だったのね!」
アイたちが詰所に入ると、エリサが受付を飛び出して駆け寄ってきた。
「エリサさん、ただいま帰りました」
フランを先頭に、3人はエリサに挨拶をする。
「あなたたちが出発した後に、ヤータ市の襲撃予報が入ったから、とても心配してたのよ」
登録したての冒険者を見送った直後に、現地が大規模襲撃の標的になったとあれば、心中穏やかではなかっただろう。
「ご心配をおかけしました」
フランはエリサにペコリと頭を下げた。
「私たち魔物を討伐したから、その確認をしに来たんだよ」
アイが嬉しそうに報告する。
「す、凄いじゃないですか!」
エリサは思わず声が大きくなった。
かなり厳しい状況であったのは間違いない。恐らくは何とか逃げ延びたのだろうと思っていたが、魔物を討伐してきたと言うのだ。
「報奨金の申請は出来ませんが、私の端末で確認してみましょうか?」
エリサが優しい瞳でアイたちを見回す。頑張る我が子を褒めてあげたい心境であった。
「え、いいの?」
アイが驚いたようにエリサを見上げた。
「はい、勿論。では代表で、フランさんの登録証をお預かりしてもよろしいですか?」
「お願いします」
フランから登録証を受け取ったエリサは、直ぐさま持ち場に戻る。それから預かった登録証を端末に挿し込むと、表示された画面を確認した。
PT討伐数
「風切鳥」124体
「魔操鎧」 2体
「……え?」
画面に映し出された内容に、エリサは何度も目を擦って確認する。しかし、何度見直しても見間違いではなかった。
このデータが本当であれば、襲撃した魔物の大半をアイたちが討伐したことになる。
しかし専用の機械でスキャンをかけても、登録証に不正は見当たらない。記憶魔法も問題なく正常に展開している。
つまるところ…このデータは正しいデータなのだ。
とんでもない新人が現れた。
エリサはアイたちに熱い視線を向けた。場合によってはこの世界を照らす、大きな希望の光になるかもしれない。
この子たちの先行きを見届けたいと思うと同時に、自分が守らなければと考えた。
この事が公になれば、彼女たちを利用しようとする輩が必ず現れる。悪くすれば、彼女たちの自由が奪われてしまうかもしれない。
エリサはある種の使命感に目覚めた。
「ねぇねぇ、どうだった?」
アイが受付卓に乗り上がるようにしてエリサに質問してくる。
この子たちは、自分たちがどれ程の事をやってのけたのか、全く自覚していない。エリサは一瞬呆けたが、自身の使命感に拍車がかかる。
「そうですね、C級ですと風切鳥1体が5千マール(1マール1円、物価も日本並)、魔操鎧は1体2万マールですから…66万マールですね」
「……は?」
3人の目が、一斉に点になった。
登録証を手に入れて初めての魔物討伐だったので、報酬がどのくらいになるのか、楽しみで仕方がなかった。アルバイト代のお給料をまだ受け取った事がない現状、アイとおキクにとって初めて稼いだお金ということになる。
詰所は相変わらず賑やかなところであった。たくさんの冒険者が、所狭しとごった返している。
「良かった、無事だったのね!」
アイたちが詰所に入ると、エリサが受付を飛び出して駆け寄ってきた。
「エリサさん、ただいま帰りました」
フランを先頭に、3人はエリサに挨拶をする。
「あなたたちが出発した後に、ヤータ市の襲撃予報が入ったから、とても心配してたのよ」
登録したての冒険者を見送った直後に、現地が大規模襲撃の標的になったとあれば、心中穏やかではなかっただろう。
「ご心配をおかけしました」
フランはエリサにペコリと頭を下げた。
「私たち魔物を討伐したから、その確認をしに来たんだよ」
アイが嬉しそうに報告する。
「す、凄いじゃないですか!」
エリサは思わず声が大きくなった。
かなり厳しい状況であったのは間違いない。恐らくは何とか逃げ延びたのだろうと思っていたが、魔物を討伐してきたと言うのだ。
「報奨金の申請は出来ませんが、私の端末で確認してみましょうか?」
エリサが優しい瞳でアイたちを見回す。頑張る我が子を褒めてあげたい心境であった。
「え、いいの?」
アイが驚いたようにエリサを見上げた。
「はい、勿論。では代表で、フランさんの登録証をお預かりしてもよろしいですか?」
「お願いします」
フランから登録証を受け取ったエリサは、直ぐさま持ち場に戻る。それから預かった登録証を端末に挿し込むと、表示された画面を確認した。
PT討伐数
「風切鳥」124体
「魔操鎧」 2体
「……え?」
画面に映し出された内容に、エリサは何度も目を擦って確認する。しかし、何度見直しても見間違いではなかった。
このデータが本当であれば、襲撃した魔物の大半をアイたちが討伐したことになる。
しかし専用の機械でスキャンをかけても、登録証に不正は見当たらない。記憶魔法も問題なく正常に展開している。
つまるところ…このデータは正しいデータなのだ。
とんでもない新人が現れた。
エリサはアイたちに熱い視線を向けた。場合によってはこの世界を照らす、大きな希望の光になるかもしれない。
この子たちの先行きを見届けたいと思うと同時に、自分が守らなければと考えた。
この事が公になれば、彼女たちを利用しようとする輩が必ず現れる。悪くすれば、彼女たちの自由が奪われてしまうかもしれない。
エリサはある種の使命感に目覚めた。
「ねぇねぇ、どうだった?」
アイが受付卓に乗り上がるようにしてエリサに質問してくる。
この子たちは、自分たちがどれ程の事をやってのけたのか、全く自覚していない。エリサは一瞬呆けたが、自身の使命感に拍車がかかる。
「そうですね、C級ですと風切鳥1体が5千マール(1マール1円、物価も日本並)、魔操鎧は1体2万マールですから…66万マールですね」
「……は?」
3人の目が、一斉に点になった。
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