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第2章
ヤータ市防衛戦 6
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時間は少し遡り…
ソアラと別れたおキクとフランは、魔操鎧を慎重に探していた。
視界が悪くミーコの探知もないため、なかなか思うように見つからない。
「ソアラさんの後を追ったのかもしれない」
そんな中、フランがふと溜め息混じりに呟いた。
「まさか…?」
おキクも釣られるように、ソアラが走り去った方向に顔を向ける。
「おキク、今すぐソコから逃げてください!」
そのとき、草の茂みから飛び出てきたミーコが焦ったように叫んだ。
「え…!?」
同時におキクのすぐ横に立っていた木が粉々に砕け散り、魔操鎧の鎚矛がおキクを横から打ち付けた。
おキクはそのまま、トラックに撥ね飛ばされたかのように吹き飛び、背中から太い木の幹に叩きつけられる。
「かはっ!」
衝撃で肺の空気を全て吐き出し、おキクは跳ね返るようにうつ伏せに倒れ込んだ。
左腕がおかしな方向に曲がっている。直撃したのが腕であったため辛くも致命傷には至らなかったが、重症であることには違いなかった。
ミーコは瞬時に痛覚の軽減措置を行う。セーレーがこの措置を行うのは、転位者が深刻なダメージを受けた時だけである。
「ごめんなさい、私のせいで!」
フランはおキクに駆け寄ると、癒しの魔法を急いで唱えた。しかし…アバターであるおキクの体には効果が薄い。
「ああ、どうしよう。私の魔法では…やっぱり役に立たない!」
フランは涙を流しながら、一心不乱に癒しの魔法を使い続ける。
「ありがとう、随分と…楽になったよ」
そのときおキクが、赤子のハイハイのように手と膝をついて体を起こすと、身をよじって座り込んだ。
「そんなハズない!」
「本当よ。でも参ったな…左腕が全く動かないや」
おキクは「アハハ」と明るく笑った。
「攻撃きます」
ミーコの警告が、鋭く響く。
フランは咄嗟に盾を構えると、魔操鎧の攻撃を受けとめた。しかしその重い衝撃に耐えきれず、フランは尻もちをついてしまう。
そのとき、状態固定の盾を渾身の力で打ち付けた魔操鎧の右腕が、その衝撃を受け止め切れずに肩の先から吹き飛んだ。
今だっ!!
おキクは両手剣を片手で拾うと、剣を杖替わりになんとか立ち上がる。
「フラン、お願い!魔法でこの剣を支えて」
「は、はい…風の舞姫!」
前に出したフランの右手から、魔法陣がスッと広がった。すると両手剣の周りを風が包み込み、重量がフッと軽くなる。これならいける!
おキクは一気に魔操鎧に詰め寄ると、お腹部分を片手で真横に薙いだ。超音波振動の刃は、おキクの期待に見事に応える。
魔操鎧はガラガラと崩れさり、二度と修復されることはなかった。
そのとき、気が抜けたかのように倒れそうになるおキクのことを、フランが寸前で支えた。おキクはそんなフランの頭を軽くポンポンと叩くと、ニッコリと微笑む。
「ホント助かったよ。フランのお陰で全部上手くいったね」
フランは首を横にブンブン振ると、おキクの胸に顔を押し付けて再び涙を流し始めた。
~~~
アイはこのままいけば、風切鳥を全部倒せると確信し始めた。しかし話は…そう簡単には運んでくれなかった。
「ゲージの残量がまもなく尽きます」
「…マジで!?」
調子に乗った直後だったので、落胆も激しい。
あんなにいた風切鳥は、もう20体もいない。本当に勝ちが見えていたのだ。
ソレを知ってか知らずか、残りの風切鳥がアイの頭上で円を作り、一斉に急降下を開始した。
アイは迎撃のため、上空に弧を描くように火炎を放射する。…が、3体を焼き払ったところで銃口がプスンと黒い煙を吹き、短銃の光が消失した。
「うそーっ!」
アイの顔から血の気が失せて真っ青になる。同時に無数の風切鳥に貫かれる、自分の未来が見えた気がした。
「熱の防幕!」
突如アイの足下に魔法陣が広がると、赤色の薄い幕が円筒形にアイの身体を包み込む。そして風切鳥の攻撃を、受け流すように逸らして守った。
「た、助かったの?」
アイが訳も分からず唖然とする。
「私の防護魔法も、そう長くは保たないわよ」
突然背後から声をかけられ、アイは驚いたように振り返った。
いつのまにか、ソアラがそこに立っていた。
「ソアラさん!」
「なかなかに、追い詰められてきたわね」
ソアラは上空を飛び回る十数体の風切鳥を見上げながら、困った顔で苦笑いする。
そのとき市街地の方から、住民の大きな歓声が湧き上がった。
ソアラと別れたおキクとフランは、魔操鎧を慎重に探していた。
視界が悪くミーコの探知もないため、なかなか思うように見つからない。
「ソアラさんの後を追ったのかもしれない」
そんな中、フランがふと溜め息混じりに呟いた。
「まさか…?」
おキクも釣られるように、ソアラが走り去った方向に顔を向ける。
「おキク、今すぐソコから逃げてください!」
そのとき、草の茂みから飛び出てきたミーコが焦ったように叫んだ。
「え…!?」
同時におキクのすぐ横に立っていた木が粉々に砕け散り、魔操鎧の鎚矛がおキクを横から打ち付けた。
おキクはそのまま、トラックに撥ね飛ばされたかのように吹き飛び、背中から太い木の幹に叩きつけられる。
「かはっ!」
衝撃で肺の空気を全て吐き出し、おキクは跳ね返るようにうつ伏せに倒れ込んだ。
左腕がおかしな方向に曲がっている。直撃したのが腕であったため辛くも致命傷には至らなかったが、重症であることには違いなかった。
ミーコは瞬時に痛覚の軽減措置を行う。セーレーがこの措置を行うのは、転位者が深刻なダメージを受けた時だけである。
「ごめんなさい、私のせいで!」
フランはおキクに駆け寄ると、癒しの魔法を急いで唱えた。しかし…アバターであるおキクの体には効果が薄い。
「ああ、どうしよう。私の魔法では…やっぱり役に立たない!」
フランは涙を流しながら、一心不乱に癒しの魔法を使い続ける。
「ありがとう、随分と…楽になったよ」
そのときおキクが、赤子のハイハイのように手と膝をついて体を起こすと、身をよじって座り込んだ。
「そんなハズない!」
「本当よ。でも参ったな…左腕が全く動かないや」
おキクは「アハハ」と明るく笑った。
「攻撃きます」
ミーコの警告が、鋭く響く。
フランは咄嗟に盾を構えると、魔操鎧の攻撃を受けとめた。しかしその重い衝撃に耐えきれず、フランは尻もちをついてしまう。
そのとき、状態固定の盾を渾身の力で打ち付けた魔操鎧の右腕が、その衝撃を受け止め切れずに肩の先から吹き飛んだ。
今だっ!!
おキクは両手剣を片手で拾うと、剣を杖替わりになんとか立ち上がる。
「フラン、お願い!魔法でこの剣を支えて」
「は、はい…風の舞姫!」
前に出したフランの右手から、魔法陣がスッと広がった。すると両手剣の周りを風が包み込み、重量がフッと軽くなる。これならいける!
おキクは一気に魔操鎧に詰め寄ると、お腹部分を片手で真横に薙いだ。超音波振動の刃は、おキクの期待に見事に応える。
魔操鎧はガラガラと崩れさり、二度と修復されることはなかった。
そのとき、気が抜けたかのように倒れそうになるおキクのことを、フランが寸前で支えた。おキクはそんなフランの頭を軽くポンポンと叩くと、ニッコリと微笑む。
「ホント助かったよ。フランのお陰で全部上手くいったね」
フランは首を横にブンブン振ると、おキクの胸に顔を押し付けて再び涙を流し始めた。
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アイはこのままいけば、風切鳥を全部倒せると確信し始めた。しかし話は…そう簡単には運んでくれなかった。
「ゲージの残量がまもなく尽きます」
「…マジで!?」
調子に乗った直後だったので、落胆も激しい。
あんなにいた風切鳥は、もう20体もいない。本当に勝ちが見えていたのだ。
ソレを知ってか知らずか、残りの風切鳥がアイの頭上で円を作り、一斉に急降下を開始した。
アイは迎撃のため、上空に弧を描くように火炎を放射する。…が、3体を焼き払ったところで銃口がプスンと黒い煙を吹き、短銃の光が消失した。
「うそーっ!」
アイの顔から血の気が失せて真っ青になる。同時に無数の風切鳥に貫かれる、自分の未来が見えた気がした。
「熱の防幕!」
突如アイの足下に魔法陣が広がると、赤色の薄い幕が円筒形にアイの身体を包み込む。そして風切鳥の攻撃を、受け流すように逸らして守った。
「た、助かったの?」
アイが訳も分からず唖然とする。
「私の防護魔法も、そう長くは保たないわよ」
突然背後から声をかけられ、アイは驚いたように振り返った。
いつのまにか、ソアラがそこに立っていた。
「ソアラさん!」
「なかなかに、追い詰められてきたわね」
ソアラは上空を飛び回る十数体の風切鳥を見上げながら、困った顔で苦笑いする。
そのとき市街地の方から、住民の大きな歓声が湧き上がった。
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