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第2章

ロングレンジフェス 2

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アイたちはカタン出張所内の宿泊部屋で目が覚めた。それぞれ立ち上がり身体の調子を確かめる。

「お前ら、頑張れよ!」

アサノはアイとおキクの肩をポンと叩くと、軽く激励を送る。それからサカシタとともに、前回帰還時の登録地点に転移していった。

「登録地点に転移しますか?」

アイのピアスがキラリと煌めき、セーレーが確認してきた。とはいえ、街外れの森である。大した意味は無い気もする。

アイたち3人は、お互い顔を見合わせた。

「あの」

そのときフランが、おずおずと手を挙げる。

「アイたちに出会ってなければ、行こうと思ってたところがあるの」

「どこ?」

アイが興味深そうに食い付いた。

「ここの東にあるヤータ市で、冒険者を対象にしたお祭りが開催されるんです」

「お祭り?」

その言葉の響きに、アイの瞳が輝きを放つ。

「仲間を探すために行くつもりだったから…もう意味はないのだけど」

フランはアイとおキクの顔を交互に見た。

「もし良かったら、行ってみませんか?」

「行くー!」

アイが考える間もなく即断する。

「私もいいよ。なんだか面白そう」

おキクも特に悩むことなく頷いた。

「だったらアイとおキクも、冒険者に登録した方がいいと思うの!」

ふたりの返事を確認すると、フランが瞳を輝かせて提案を持ちかけた。

「冒険者…って、登録が必要なの?」

アイが少し戸惑った顔になる。

「魔物襲来以降に出来た制度だけど、登録しておけば活躍に応じて国から報酬が出るんです。軍隊以外の戦力を集める手段になってるみたい」

「なるほど」

フランの解説におキクが頷くと、白い仔猫に目を向けた。

「ミーコ、私たちが登録しても大丈夫なのかな?」

「サトーからは特に禁止されてはいません。ただ参考までに、アサノとサカシタは書類上は軍隊に所属しています」

ミーコはひょいと飛び上がると、おキクの肩にちょこんと座る。

「兵役は課されていませんが、軍の作戦には参加の義務があります。おキクたちが冒険者に登録した場合、アサノたちとの合流は難しくなります」

「別にいいんじゃない?」

アイが笑顔で軽く答えた。

「元々アサノさんたちとは、実力差があり過ぎるから足を引っ張るだけだよ。私たちは私たちで地道にガンバろう」

「それもそうね」

おキクも大きく頷いて、アイに賛同する。

「それでは…登録地点への転移は無しということで問題ないですね」

セーレーが独り言のように呟いた。

   ~~~

冒険者の詰所に入ると、そこはとても広いロビーであった。アルコールを含むドリンク類や軽食の販売もあり、フードコートのような空間である。

そして建物の2階と3階の部屋は全て、冒険者用の宿泊施設として提供されていた。

受付は3つあり「登録・宿泊係」「報奨金係」「飲料・軽食係」である。登録宿泊係にはスタッフは1名だけであったが、あとの係には数名のスタッフが配置されていた。

フランはアイとおキクを連れて、登録受付のカウンターへと向かった。

「あら、あなた」

フランに気付いたスタッフが、向こうから話しかけてきた。三つ編み眼鏡の女性である。胸章には「エリサ」とあった。良くも悪くもフランは目立っていたため、覚えていたのだ。

「ちゃんと仲間を見つけられたのね」

「…え?」

エリサの発言に、フランが不思議そうな顔をする。

「あら、ごめんなさい。長くここで働いてるとね、冒険者の方がどんな用事で来たのか、何となく分かるようになるの。それなのにあなた…誰にも声をかけずに去って行くから、少し不思議に思っていたのよ」

エリサが安心したように、満面の笑みを零した。

その優しい笑顔につられてフランも笑うと、力一杯に頷いた。

「そうなんです!だから私の新しい仲間を登録しにきました!」
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