14 / 98
第1章
初めての戦闘 1
しおりを挟む
市長は小柄だが恰幅がよく、頭髪はすでに無い。目元はにこやかで、白いちょび髭が生えていた。全体的に優しそうな印象の、初老の男性であった。
「ようこそカタン市へ。今回はエラく可愛らしい娘さんが来たもんじゃな」
市長がアイとおキクに握手を求めてきた。
「はじめまして。アイです」
「おキクです」
ふたりは市長の求めに応じながら自己紹介をする。
「まずはお決まりの事務連絡をしなくちゃならん」
市長の話が始まった。
・魔王軍は険しい山々が連なる北のワガザ連峰を拠点としている。
・国の北側3分の1程の領土は魔王軍に占領されているため詳しい情報は掴めていない。
・ここカタン市は最前線に程近い大型都市なので、前線基地として機能している。
「最後に、ラング国で一番の占い師の言葉を教えておこう」
~魔王は自身の持つ強大な力により、その身を滅ぼすであろう~
「予言を信じるなら、方法はどうあれ人類は必ず勝つという事じゃな。この言葉は我々人類の希望となっておる」
「…確かにそうですね」
おキクは思案顔で頷いた。
「しかも我々には、この希望を裏付ける旧い伝承が残っとるんじゃ」
市長の声に熱がこもり始める。
「反射結界と言ってな、相手の攻撃を倍加して跳ね返すという代物じゃ。魔王の最大の攻撃を引き出して、それを跳ね返すことが出来れば…」
「予言通りになるってことだね!」
アイの声も大きくなった。
「でも、伝承…なんですよね?」
おキクの言葉に、市長は一瞬ピクッとした。
「そうとおりじゃ。おキクさんは鋭いの」
市長は「ふぅ」と溜め息をついた。
「しかしの、最近になってやっと、赤き結界師と白き結界師という存在が必要だと分かったんじゃ」
市長は拳を頭上に振り上げると「これは大きな一歩じゃ!」と煙幕をバックに声を張り上げた。
「ん?」
アイは一瞬ポカンとなった。なんだかつい最近、どこかで聞いたようなワードである。
しかしそのとき、官邸内をサイレンがけたたましく鳴り響いた。続いて館内に放送が流れる。
「イレギュラー警報です。ただ今ここカタン市が魔物の襲撃を受けています!」
「なんじゃと!?」
市長の顔が緊張で強張った。それからアイとおキクに視線を向ける。
(このふたりが来たことが原因か!?)
「失礼します!」
部屋に駆け込んできた女性の秘書官が、市長の耳元に何やら報告している。
「とにかくいつもどおり、冷静に対処するんじゃ」
市長の指示を受け、秘書官は部屋から出ていった。
「この都市には、軍や冒険者の拠点もある。すぐに撃退してくれる筈じゃ。安心するといい」
市長は一度「コホン」と咳払いすると、ふたりに優しく笑いかけた。
「この屋敷も強力な魔法陣で護られておる。ここにおれば安全じゃ」
「ここは安全…て、街の人たちは?」
アイの声が焦って大きくなる。
「それも問題ない。都市の主要機関にも同じ魔法陣が施してある。緊急時にはそこに避難をする手筈になっておる」
「ここには魔王を倒すために来たんだから、私たちだって街の人を護るために戦うよ!」
「ふたりにはロクな戦闘経験もないと、知らせは受けておる。今は無理をするべきではない!」
市長の言うことは最もなのだが、アイには納得することが出来なかった。
「強い武器だって持ってるし、私行ってくる!」
「ま、待つんじゃ!」
アイは市長の制止を振り切って、勢いよく部屋を飛び出していく。
「市長さん。お気持ちは嬉しいのですが、私もじっとはしてられません」
おキクは市長に「ペコリ」と頭を下げると、アイを追いかけて部屋を飛び出していった。
「ようこそカタン市へ。今回はエラく可愛らしい娘さんが来たもんじゃな」
市長がアイとおキクに握手を求めてきた。
「はじめまして。アイです」
「おキクです」
ふたりは市長の求めに応じながら自己紹介をする。
「まずはお決まりの事務連絡をしなくちゃならん」
市長の話が始まった。
・魔王軍は険しい山々が連なる北のワガザ連峰を拠点としている。
・国の北側3分の1程の領土は魔王軍に占領されているため詳しい情報は掴めていない。
・ここカタン市は最前線に程近い大型都市なので、前線基地として機能している。
「最後に、ラング国で一番の占い師の言葉を教えておこう」
~魔王は自身の持つ強大な力により、その身を滅ぼすであろう~
「予言を信じるなら、方法はどうあれ人類は必ず勝つという事じゃな。この言葉は我々人類の希望となっておる」
「…確かにそうですね」
おキクは思案顔で頷いた。
「しかも我々には、この希望を裏付ける旧い伝承が残っとるんじゃ」
市長の声に熱がこもり始める。
「反射結界と言ってな、相手の攻撃を倍加して跳ね返すという代物じゃ。魔王の最大の攻撃を引き出して、それを跳ね返すことが出来れば…」
「予言通りになるってことだね!」
アイの声も大きくなった。
「でも、伝承…なんですよね?」
おキクの言葉に、市長は一瞬ピクッとした。
「そうとおりじゃ。おキクさんは鋭いの」
市長は「ふぅ」と溜め息をついた。
「しかしの、最近になってやっと、赤き結界師と白き結界師という存在が必要だと分かったんじゃ」
市長は拳を頭上に振り上げると「これは大きな一歩じゃ!」と煙幕をバックに声を張り上げた。
「ん?」
アイは一瞬ポカンとなった。なんだかつい最近、どこかで聞いたようなワードである。
しかしそのとき、官邸内をサイレンがけたたましく鳴り響いた。続いて館内に放送が流れる。
「イレギュラー警報です。ただ今ここカタン市が魔物の襲撃を受けています!」
「なんじゃと!?」
市長の顔が緊張で強張った。それからアイとおキクに視線を向ける。
(このふたりが来たことが原因か!?)
「失礼します!」
部屋に駆け込んできた女性の秘書官が、市長の耳元に何やら報告している。
「とにかくいつもどおり、冷静に対処するんじゃ」
市長の指示を受け、秘書官は部屋から出ていった。
「この都市には、軍や冒険者の拠点もある。すぐに撃退してくれる筈じゃ。安心するといい」
市長は一度「コホン」と咳払いすると、ふたりに優しく笑いかけた。
「この屋敷も強力な魔法陣で護られておる。ここにおれば安全じゃ」
「ここは安全…て、街の人たちは?」
アイの声が焦って大きくなる。
「それも問題ない。都市の主要機関にも同じ魔法陣が施してある。緊急時にはそこに避難をする手筈になっておる」
「ここには魔王を倒すために来たんだから、私たちだって街の人を護るために戦うよ!」
「ふたりにはロクな戦闘経験もないと、知らせは受けておる。今は無理をするべきではない!」
市長の言うことは最もなのだが、アイには納得することが出来なかった。
「強い武器だって持ってるし、私行ってくる!」
「ま、待つんじゃ!」
アイは市長の制止を振り切って、勢いよく部屋を飛び出していく。
「市長さん。お気持ちは嬉しいのですが、私もじっとはしてられません」
おキクは市長に「ペコリ」と頭を下げると、アイを追いかけて部屋を飛び出していった。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説

なんか、異世界行ったら愛重めの溺愛してくる奴らに囲われた
いに。
恋愛
"佐久良 麗"
これが私の名前。
名前の"麗"(れい)は綺麗に真っ直ぐ育ちますようになんて思いでつけられた、、、らしい。
両親は他界
好きなものも特にない
将来の夢なんてない
好きな人なんてもっといない
本当になにも持っていない。
0(れい)な人間。
これを見越してつけたの?なんてそんなことは言わないがそれ程になにもない人生。
そんな人生だったはずだ。
「ここ、、どこ?」
瞬きをしただけ、ただそれだけで世界が変わってしまった。
_______________....
「レイ、何をしている早くいくぞ」
「れーいちゃん!僕が抱っこしてあげよっか?」
「いや、れいちゃんは俺と手を繋ぐんだもんねー?」
「、、茶番か。あ、おいそこの段差気をつけろ」
えっと……?
なんか気づいたら周り囲まれてるんですけどなにが起こったんだろう?
※ただ主人公が愛でられる物語です
※シリアスたまにあり
※周りめちゃ愛重い溺愛ルート確です
※ど素人作品です、温かい目で見てください
どうぞよろしくお願いします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
転生をしたら異世界だったので、のんびりスローライフで過ごしたい。
みみっく
ファンタジー
どうやら事故で死んでしまって、転生をしたらしい……仕事を頑張り、人間関係も上手くやっていたのにあっけなく死んでしまうなら……だったら、のんびりスローライフで過ごしたい!
だけど現状は、幼馴染に巻き込まれて冒険者になる流れになってしまっている……
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。

筋トレ民が魔法だらけの異世界に転移した結果
kuron
ファンタジー
いつもの様にジムでトレーニングに励む主人公。
自身の記録を更新した直後に目の前が真っ白になる、そして気づいた時には異世界転移していた。
魔法の世界で魔力無しチート無し?己の身体(筋肉)を駆使して異世界を生き残れ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる