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第1章
初日の朝 1
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今日はふたりの初仕事の日だ。
亜衣が服装を何にするかで悩んでいたら、母から声をかけられた。
「職場体験なんだから、制服で行きなさい」
母の言うことが全面的に正しい。亜衣は仕方なしに「はーい」と返事をした。
亜衣は制服に着替えると、スキップしそうな勢いで家を出た。お菊とは市役所の前で8時半に待ち合わせをしている。よくよく考えたら服装の相談もしておけば良かった。
亜衣が待ち合わせ場所に到着すると、そこには既にお菊の姿があった。
「ごめん、待った?」
「ううん。私も今来たとこ」
お決まりのやりとりもシッカリとこなしておく。
「あ!制服」
亜衣はお菊の姿を見て、「ホッ」と一安心して微笑んだ。
「多分そうだろうな、と思って」
お菊は胸を反らして得意げに笑う。
ふたりの制服。
白い半袖ブラウスに襟元の赤いリボン
水色チェックのベストに水色チェックのスカート
亜衣は膝が見えるくらいのスカート丈
お菊は膝が隠れるくらいのスカート丈
「じゃ、入ろ!」
「うん」
亜衣とお菊はお互い顔を見合わせると、にっこり笑って頷いた。
~~~
支援課の部屋に入ると、入り口近くで佐藤が待っていた。
「おはよう。9時からなのに、ふたりとも早いね」
「なんだか待ちきれなくて」
亜衣は頭を掻きながら、照れ臭そうに笑う。
「今日は、まだ皆んないてるから紹介しよう」
佐藤が声をかけると、男性2人と女性1人が集まってきた。
「水戸さんはもう知ってるね」
「ミトです。よろしくお願いします」
水戸は一歩前に出ると、軽くお辞儀をした。
「次は坂下くん」
「坂下です。ふたりともよろしく!」
坂下が「ニカッ」と笑って右手を挙げた。
体操のお兄さん風の爽やかな青年だ。佐藤より少し年下に見える。短く切り揃えられた黒髪には、清潔感が漂っていた。
「最後に浅野さん」
「浅野です。よろしく」
浅野が、まるでお手本のようなお辞儀をする。
かなりの美人だ。物静かで落ち着いた雰囲気の女性である。年齢は20代後半あたりか。派手にならない程度の茶髪を肩口まで伸ばし、白いバレッタでひとつに束ねている。長いまつ毛の切れ長の目から、大人の色気が溢れんばかりに漂っていた。
「こちらは、亜衣くんとお菊さん」
次に佐藤は、新人ふたりを紹介する。
「上尾亜衣です」
「植岡菊です」
ふたりは顔を見合わせて同時に一歩前に出ると、大きな声で揃えて言った。
「よろしくお願いします!」
~~~
佐藤が皆を解散させると、坂下と浅野は部屋の奥にあるドアから外に出ていき、水戸は自分の席に戻っていった。佐藤の話によると、坂下と浅野はアチラの世界に向かったらしい。
「君たちにはもう少し、教えることがあるんだ」
佐藤はふたりを来客用スペースに座らせる。
「まずはこの異世界支援事業に欠かせないのが、精霊AIのセーレーの存在だ」
「精霊AIのセーレー?」
亜衣とお菊はポカンとした。
精霊AIの「セーレー」
精霊AIとは普通のAIとは違い、異世界の精霊族の協力のもと、精霊魔法の論理により構築されたAIである。ご都合主義のスーパーAIと認識していただいて結構である。
「向こうの世界に行くための時空間転位やアバターの管理、他にも様々なことを担ってもらっている」
佐藤はふたりの顔を交互に見る。
「向こうの世界でも、異世界の存在は一般常識としては認知されていない。現地の協力員も雇ってはいるが、何か困った事があればセーレーに頼ることが多くなるだろう」
「分かりました!」
佐藤の言葉を聞き、ふたりは力強く頷いた。
亜衣が服装を何にするかで悩んでいたら、母から声をかけられた。
「職場体験なんだから、制服で行きなさい」
母の言うことが全面的に正しい。亜衣は仕方なしに「はーい」と返事をした。
亜衣は制服に着替えると、スキップしそうな勢いで家を出た。お菊とは市役所の前で8時半に待ち合わせをしている。よくよく考えたら服装の相談もしておけば良かった。
亜衣が待ち合わせ場所に到着すると、そこには既にお菊の姿があった。
「ごめん、待った?」
「ううん。私も今来たとこ」
お決まりのやりとりもシッカリとこなしておく。
「あ!制服」
亜衣はお菊の姿を見て、「ホッ」と一安心して微笑んだ。
「多分そうだろうな、と思って」
お菊は胸を反らして得意げに笑う。
ふたりの制服。
白い半袖ブラウスに襟元の赤いリボン
水色チェックのベストに水色チェックのスカート
亜衣は膝が見えるくらいのスカート丈
お菊は膝が隠れるくらいのスカート丈
「じゃ、入ろ!」
「うん」
亜衣とお菊はお互い顔を見合わせると、にっこり笑って頷いた。
~~~
支援課の部屋に入ると、入り口近くで佐藤が待っていた。
「おはよう。9時からなのに、ふたりとも早いね」
「なんだか待ちきれなくて」
亜衣は頭を掻きながら、照れ臭そうに笑う。
「今日は、まだ皆んないてるから紹介しよう」
佐藤が声をかけると、男性2人と女性1人が集まってきた。
「水戸さんはもう知ってるね」
「ミトです。よろしくお願いします」
水戸は一歩前に出ると、軽くお辞儀をした。
「次は坂下くん」
「坂下です。ふたりともよろしく!」
坂下が「ニカッ」と笑って右手を挙げた。
体操のお兄さん風の爽やかな青年だ。佐藤より少し年下に見える。短く切り揃えられた黒髪には、清潔感が漂っていた。
「最後に浅野さん」
「浅野です。よろしく」
浅野が、まるでお手本のようなお辞儀をする。
かなりの美人だ。物静かで落ち着いた雰囲気の女性である。年齢は20代後半あたりか。派手にならない程度の茶髪を肩口まで伸ばし、白いバレッタでひとつに束ねている。長いまつ毛の切れ長の目から、大人の色気が溢れんばかりに漂っていた。
「こちらは、亜衣くんとお菊さん」
次に佐藤は、新人ふたりを紹介する。
「上尾亜衣です」
「植岡菊です」
ふたりは顔を見合わせて同時に一歩前に出ると、大きな声で揃えて言った。
「よろしくお願いします!」
~~~
佐藤が皆を解散させると、坂下と浅野は部屋の奥にあるドアから外に出ていき、水戸は自分の席に戻っていった。佐藤の話によると、坂下と浅野はアチラの世界に向かったらしい。
「君たちにはもう少し、教えることがあるんだ」
佐藤はふたりを来客用スペースに座らせる。
「まずはこの異世界支援事業に欠かせないのが、精霊AIのセーレーの存在だ」
「精霊AIのセーレー?」
亜衣とお菊はポカンとした。
精霊AIの「セーレー」
精霊AIとは普通のAIとは違い、異世界の精霊族の協力のもと、精霊魔法の論理により構築されたAIである。ご都合主義のスーパーAIと認識していただいて結構である。
「向こうの世界に行くための時空間転位やアバターの管理、他にも様々なことを担ってもらっている」
佐藤はふたりの顔を交互に見る。
「向こうの世界でも、異世界の存在は一般常識としては認知されていない。現地の協力員も雇ってはいるが、何か困った事があればセーレーに頼ることが多くなるだろう」
「分かりました!」
佐藤の言葉を聞き、ふたりは力強く頷いた。
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