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妖しい占い師
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「春日先輩っ、テストどーでしたっ?」
下足室から出たところで、春日翔は3人の少女に囲まれた。茶髪のポニーテールに黒髪両おさげ、それと黒髪ショートの女の子だ。言動から察するに1年生か…元気で可愛らしい。
「まだ後1日、残ってるだろ?」
しかし春日翔はチラリと少女たちを一瞥すると、興味なさそうに溜め息をついた。
「そーなんですけど…私たち既にヤバくって」
「だったら早く帰って勉強しろよ」
春日翔は呆れたように呟いた。
「それで、ですね」
すると3人の少女たちが、顔を見合わせてタイミングを合わせる。
「良かったら勉強教えてくださいっ!」
「はー、何で俺が?」
「お願いしますっ!」
更に全員一斉に頭を下げる。それからゆっくりと顔を上げた。
「ダメよ、春日くん、忙しいんだから」
そのとき3人の1年生の目に飛び込んできたのは、2人の上級生の姿だった。
黒髪ロングのやや吊り目と茶髪ショートの赤縁眼鏡の、少し大人びた少女である。
「3年生の先輩…」
3人組の少女たちは、身を寄せ合うように尻込みしてしまう。それでも何とかその場に留まろうと、我が身を奮い立たせていた。
「いつまでそーしてるの?ほら、散った散った」
「は、はいっ、すみませんっ」
黒髪ロングに凄まれ、1年生たちは弾かれたように駆けて行った。
(あー、コイツら見たことあるな)
後から現れた2人組を眺めながら、春日翔は商店街での一件を思い出していた。見覚えがないなと思っていたら、3年生だったのか…
それから変な女のことを思い出す。
そういえば、アレから見ていない…
リースさんの関係者らしいけど、転校生ではなかったということか。
そんなことをボーッと考えていたら、2人組が真正面に立って春日翔を見上げていた。
「春日くん、良かったらこのあと…」
「ショウ!」
突然、凛と透き通る少女の大きな声が、2人組の言葉を遮った。
その瞬間、水色のワンピースを着た銀髪ボブヘアーの少女が春日翔の背後を駆け抜ける。同時に春日翔の左手を取ると、そのまま連れ去ってしまった。
「ま、またあのオンナ!」
「何でこんな所に!?」
2人組は急いで追いかけるが、水色ワンピースの少女は風のように早い。
「お、おい、アンタ…」
「いいから、走って!」
少女は振り返ると、真剣な表情で一喝した。
~~~
「おいっ」
春日翔は手を引かれるまま、とうとう駅近くまで連れて来られた。
「おいってば!」
そこまで来て、春日翔は半ば強引に少女の手を振り解いた。少女はやっと立ち止まると、こちらにゆっくり振り返る。
「俺ん家、コッチじゃないんだけど?」
「知ってます。商店街を抜けた先ですよね?」
知ってんのかよ…春日翔は怪しむように、少女をジロリと睨んだ。
「確かアリスつったっけ?今度は何の用だよ?」
「ショウが困っていた様でしたので…」
アリスがニッコリ微笑んだ。
「それに…ショウが他の女性に言い寄られるのを見るのはあまり面白くありません」
アリスの笑顔に変化はないが、立ち昇るオーラに狂気が見え隠れする。
春日翔は、ガシガシと頭を掻いた。
「あのなー、俺はお前なら迷惑じゃないとは言ってないんだが?」
「そんなコトはありません。ショウが私を邪険にするなど有り得ません」
アリスは胸を張って、自信満々に宣言した。
春日翔は一瞬面食らったが、やがて「プッ」と吹き出した。
「どっから来るんだよ、その自信は?」
「自信ではありません。事実です」
アリスは頬を赤らめながら、再び春日翔の左手を掴んだ。
「何でも仲の良い男女は『スイーツ』というモノを一緒に食べるらしいのです。ショウは何処かいい場所を知っていますか?」
「どーいう誘い方だよ、それ…」
春日翔は呆れたように呟くと、「ハハッ」と声に出して笑った。
下足室から出たところで、春日翔は3人の少女に囲まれた。茶髪のポニーテールに黒髪両おさげ、それと黒髪ショートの女の子だ。言動から察するに1年生か…元気で可愛らしい。
「まだ後1日、残ってるだろ?」
しかし春日翔はチラリと少女たちを一瞥すると、興味なさそうに溜め息をついた。
「そーなんですけど…私たち既にヤバくって」
「だったら早く帰って勉強しろよ」
春日翔は呆れたように呟いた。
「それで、ですね」
すると3人の少女たちが、顔を見合わせてタイミングを合わせる。
「良かったら勉強教えてくださいっ!」
「はー、何で俺が?」
「お願いしますっ!」
更に全員一斉に頭を下げる。それからゆっくりと顔を上げた。
「ダメよ、春日くん、忙しいんだから」
そのとき3人の1年生の目に飛び込んできたのは、2人の上級生の姿だった。
黒髪ロングのやや吊り目と茶髪ショートの赤縁眼鏡の、少し大人びた少女である。
「3年生の先輩…」
3人組の少女たちは、身を寄せ合うように尻込みしてしまう。それでも何とかその場に留まろうと、我が身を奮い立たせていた。
「いつまでそーしてるの?ほら、散った散った」
「は、はいっ、すみませんっ」
黒髪ロングに凄まれ、1年生たちは弾かれたように駆けて行った。
(あー、コイツら見たことあるな)
後から現れた2人組を眺めながら、春日翔は商店街での一件を思い出していた。見覚えがないなと思っていたら、3年生だったのか…
それから変な女のことを思い出す。
そういえば、アレから見ていない…
リースさんの関係者らしいけど、転校生ではなかったということか。
そんなことをボーッと考えていたら、2人組が真正面に立って春日翔を見上げていた。
「春日くん、良かったらこのあと…」
「ショウ!」
突然、凛と透き通る少女の大きな声が、2人組の言葉を遮った。
その瞬間、水色のワンピースを着た銀髪ボブヘアーの少女が春日翔の背後を駆け抜ける。同時に春日翔の左手を取ると、そのまま連れ去ってしまった。
「ま、またあのオンナ!」
「何でこんな所に!?」
2人組は急いで追いかけるが、水色ワンピースの少女は風のように早い。
「お、おい、アンタ…」
「いいから、走って!」
少女は振り返ると、真剣な表情で一喝した。
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「おいっ」
春日翔は手を引かれるまま、とうとう駅近くまで連れて来られた。
「おいってば!」
そこまで来て、春日翔は半ば強引に少女の手を振り解いた。少女はやっと立ち止まると、こちらにゆっくり振り返る。
「俺ん家、コッチじゃないんだけど?」
「知ってます。商店街を抜けた先ですよね?」
知ってんのかよ…春日翔は怪しむように、少女をジロリと睨んだ。
「確かアリスつったっけ?今度は何の用だよ?」
「ショウが困っていた様でしたので…」
アリスがニッコリ微笑んだ。
「それに…ショウが他の女性に言い寄られるのを見るのはあまり面白くありません」
アリスの笑顔に変化はないが、立ち昇るオーラに狂気が見え隠れする。
春日翔は、ガシガシと頭を掻いた。
「あのなー、俺はお前なら迷惑じゃないとは言ってないんだが?」
「そんなコトはありません。ショウが私を邪険にするなど有り得ません」
アリスは胸を張って、自信満々に宣言した。
春日翔は一瞬面食らったが、やがて「プッ」と吹き出した。
「どっから来るんだよ、その自信は?」
「自信ではありません。事実です」
アリスは頬を赤らめながら、再び春日翔の左手を掴んだ。
「何でも仲の良い男女は『スイーツ』というモノを一緒に食べるらしいのです。ショウは何処かいい場所を知っていますか?」
「どーいう誘い方だよ、それ…」
春日翔は呆れたように呟くと、「ハハッ」と声に出して笑った。
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