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図書館の攻防
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「私たち、コーヒーショップでライバル宣言しましたよね?」
「……した」
「もしかして、今一番先頭を走ってるのはサトコさんじゃないですか?」
「言うな…」
2年4組でお昼を食べ終わり、自分のクラスに戻る廊下で、ルーと新島春香は同時にうな垂れた。
今日は新島恵太が声をかけたため、真中聡子もお昼を一緒に食べることになった。そしてその際の二人の様子に、ルーたちは危機感を感じたのだ。
「何が原因か分からないけど、コレは由々しき事態よ!」
新島春香は張り詰めた表情になる。
「…絶対あのときですよ」
そんな新島春香を、ルーはジト目で睨んだ。
「う…」
新島春香はルーの視線に怯んだ。
想い起こすのは、図書室でのあの一件。新島春香が自分で招いた事態であった。
~~~
「リースさん、ちょっといいかな?」
相変わらずルーの人気は衰えを見せない。そんな周りを取り囲む生徒たちの一番外側から、男子にしては少し高めな声が響いた。
「小田くんよ」
「手乗り王子だわ」
その正体に気付いた生徒たちは、見守るような空気になる。
隣のクラスの小田くんは、爽やかな顔立ちをした無造作ヘアのイケメンである。とはいえ、女子並みの小柄な体格が影響してか、マスコット的な存在となっていた。
「何か、ご用ですか?」
「ここじゃ何だから、少し付き合ってくれない?」
言いながら小田くんは、机の上のルーの右手をそっと取った。
ルーは不思議そうな顔で、自分の右手と相手の顔を交互に見つめる。それからおもむろに、新島春香の顔を見た。
「ここで返して貰いますね」
ルーは満面の笑みで囁く。同時に、新島春香の全身に戦慄が走った。
ルーは小田くんに向き直ると、ニッコリ微笑んだ。
「もしかして、愛の告白ですか?」
ザワ……
ルーのひと言に、教室中が一瞬凍りついた。
「あ……え…?」
先制パンチを受けた小田くんは言葉が出ない。
「違ってたらごめんなさい。ですが私は、春香さんのお兄さんとお付き合いをしていまして…それ以外のご用件ならお聞きしますが…?」
衝撃の発言に、再び教室中が凍りついた。
「あ、いや……急ぎの用事じゃ、ないから…」
小田くんはなんとか言葉を絞り出すと、ヨロヨロしながら教室から出て行った。
その直後、凍結から解放された生徒たちは「わっ」となった。
「リースさん、今のどーいうコト!?」
「嘘だと言ってくれー」
「いつから?いつから?」
新島春香をも巻き込んで、生徒たちの輪が出来上がる。男子の涙声や女子の興味本位の声が、所狭しと木霊した。
ルーはニコニコしながら応対するが、核心的なことは答えない。
「新島さんは、知ってたの!?」
追求は、新島春香の元にも及んだ。
「いやー…付き合ってるは、言い過ぎかもだけど…仲良くは、してるみたいよ」
蒼い顔でヒクつきながら、新島春香も必死に言葉を絞り出した。
そんな新島春香の事を、中野茉理だけが納得いかない表情で見つめていた。
~~~
「すみません、勝手なコトをして…、ご迷惑でしたよね?」
放課後の図書室で、ルーは昼間あったことを少しだけ大袈裟に新島恵太に伝えた。
「あ、いやー迷惑って訳じゃ……しつこく迫られて咄嗟に出たなら仕方ないよ」
「でも…もし、ケータお兄ちゃんに彼女さんがいたとしたら申し訳なくて…」
「あー、悲しーけど、その点は大丈夫…」
新島恵太は苦笑いで、力なく答えた。
「そーですか、安心しました」
ルーは頬を赤く染めて、照れ臭そうに微笑んだ。
このガキ…
新島春香はルーの隣で、殴りたい衝動を必死に堪えていた。
真中聡子は面白くなさそうな表情で、ルーを真っ直ぐ見つめていた。
「……した」
「もしかして、今一番先頭を走ってるのはサトコさんじゃないですか?」
「言うな…」
2年4組でお昼を食べ終わり、自分のクラスに戻る廊下で、ルーと新島春香は同時にうな垂れた。
今日は新島恵太が声をかけたため、真中聡子もお昼を一緒に食べることになった。そしてその際の二人の様子に、ルーたちは危機感を感じたのだ。
「何が原因か分からないけど、コレは由々しき事態よ!」
新島春香は張り詰めた表情になる。
「…絶対あのときですよ」
そんな新島春香を、ルーはジト目で睨んだ。
「う…」
新島春香はルーの視線に怯んだ。
想い起こすのは、図書室でのあの一件。新島春香が自分で招いた事態であった。
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「リースさん、ちょっといいかな?」
相変わらずルーの人気は衰えを見せない。そんな周りを取り囲む生徒たちの一番外側から、男子にしては少し高めな声が響いた。
「小田くんよ」
「手乗り王子だわ」
その正体に気付いた生徒たちは、見守るような空気になる。
隣のクラスの小田くんは、爽やかな顔立ちをした無造作ヘアのイケメンである。とはいえ、女子並みの小柄な体格が影響してか、マスコット的な存在となっていた。
「何か、ご用ですか?」
「ここじゃ何だから、少し付き合ってくれない?」
言いながら小田くんは、机の上のルーの右手をそっと取った。
ルーは不思議そうな顔で、自分の右手と相手の顔を交互に見つめる。それからおもむろに、新島春香の顔を見た。
「ここで返して貰いますね」
ルーは満面の笑みで囁く。同時に、新島春香の全身に戦慄が走った。
ルーは小田くんに向き直ると、ニッコリ微笑んだ。
「もしかして、愛の告白ですか?」
ザワ……
ルーのひと言に、教室中が一瞬凍りついた。
「あ……え…?」
先制パンチを受けた小田くんは言葉が出ない。
「違ってたらごめんなさい。ですが私は、春香さんのお兄さんとお付き合いをしていまして…それ以外のご用件ならお聞きしますが…?」
衝撃の発言に、再び教室中が凍りついた。
「あ、いや……急ぎの用事じゃ、ないから…」
小田くんはなんとか言葉を絞り出すと、ヨロヨロしながら教室から出て行った。
その直後、凍結から解放された生徒たちは「わっ」となった。
「リースさん、今のどーいうコト!?」
「嘘だと言ってくれー」
「いつから?いつから?」
新島春香をも巻き込んで、生徒たちの輪が出来上がる。男子の涙声や女子の興味本位の声が、所狭しと木霊した。
ルーはニコニコしながら応対するが、核心的なことは答えない。
「新島さんは、知ってたの!?」
追求は、新島春香の元にも及んだ。
「いやー…付き合ってるは、言い過ぎかもだけど…仲良くは、してるみたいよ」
蒼い顔でヒクつきながら、新島春香も必死に言葉を絞り出した。
そんな新島春香の事を、中野茉理だけが納得いかない表情で見つめていた。
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「すみません、勝手なコトをして…、ご迷惑でしたよね?」
放課後の図書室で、ルーは昼間あったことを少しだけ大袈裟に新島恵太に伝えた。
「あ、いやー迷惑って訳じゃ……しつこく迫られて咄嗟に出たなら仕方ないよ」
「でも…もし、ケータお兄ちゃんに彼女さんがいたとしたら申し訳なくて…」
「あー、悲しーけど、その点は大丈夫…」
新島恵太は苦笑いで、力なく答えた。
「そーですか、安心しました」
ルーは頬を赤く染めて、照れ臭そうに微笑んだ。
このガキ…
新島春香はルーの隣で、殴りたい衝動を必死に堪えていた。
真中聡子は面白くなさそうな表情で、ルーを真っ直ぐ見つめていた。
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