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危険信号!
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新島恵太が真中聡子を探して走っていると、渡り廊下の窓から外を眺めて立ち尽くしている彼女の姿を見つけた。
「真中さん」
自分を呼ぶ声に一瞬ビクッとした真中聡子は、それからゆっくり振り向いた。
「新島…くん、どうして…?」
「どうしてって、さすがにあんなの気になるよ」
新島恵太は心配そうな顔をする。
「そっか…そうだよね」
真中聡子は目を閉じると、ゆっくりと頷く。そして再び目を開いた。
「私ね、距離感近いって親によく注意されるんだ」
真中聡子は努めてニッコリ笑った。
「気がつくと、相手のパーソナルスペースを越えちゃってるみたい」
緊張でもしているのか、胸元に抱き寄せたいつものポーチを両手で弄ぶ。
「大抵の人は、大なり小なり身構えるから私もそこで気付くんだけど、新島くんはそんな素ぶりが全くなくて、私も居心地良くて油断してた。本当にごめんなさい」
そう言って真中聡子は、深々と頭を下げた。
「あ、いやー、ボクも相手は女子なのに気にしなさ過ぎた。コッチこそゴメン」
新島恵太も頭を下げる。
「に、新島くんは何も悪くないよ!私が気をつけなくちゃいけなかったんだから」
真中聡子は焦ったように、首を横に振った。
「だけど高校に入ってからはホントに注意してて、上手くいってた筈なんだけど…新島くん相手だと油断しちゃってた…なんでかな?」
真中聡子は顔を真っ赤にしながら、真っ直ぐに新島恵太を見つめた。
「なんでって…ボクには、分からないよ」
新島恵太は思わず顔を背けた。こんな可愛い表情をするなんて全然思ってなかった。心臓がバクバク大暴れしてる。
「それも、そっか」
真中聡子は「アハッ」と笑った。
「あのさ…」
新島恵太は後頭部を掻きながら、ボソッと呟く。
「真中さんがイヤじゃないなら、続き教えてほしーんだけど…」
真中聡子はハッと驚き、それから優しく微笑んだ。
「うん!勝手に中断して、ゴメンね」
~~~
「リストの上書きが必要だわっ!」
駅へ向かう大通りで、新島春香は心底憎らしげに声を張り上げた。
「抜かれちゃいましたかー」
ルーは、どこか楽しそうに笑う。
「なんでアンタといー、アイツといー、私の結界を易々と超えてくるのよ!」
「それはだって、ケータお兄ちゃんの好きな女子ですから」
新島春香はルーの発する言葉の意味が、初め全く理解出来なかった。
暫くして後…
「はあー!?アンタ何言って…はあー!?」
新島春香は顔を真っ赤にして、隣を歩く少女を怒鳴りつけた。
「あー安心してください。私とハルカさんも、ちゃんと恋人ですから!」
「ちょっとアンタ、ホントに何を言って…」
ルーの意味不明な発言に新島春香は困惑した。しかしその瞬間、周りの景色が一瞬で灰色になる。
「え、何?どーなってるの?」
「しっ!静かに!」
キョロキョロと慌てる新島春香に、ルーが短く制止をかけた。
この感じ、覚えがある。あの別れの日に女神が施した術に似ている。
「どーやら私たちは隔離されたようです」
「隔離…て、アンタ何を…」
新島春香は戸惑いながらルーを見るが、その尋常ならざる雰囲気に思わず息を飲む。
「来ます!」
ルーが前方を見据えて鋭く叫ぶと、通りの先から十数体の黒い野犬のような動物の群れが現れた。
ダークウルフだ、かなり数が多い。ルーは新島春香を庇うように前に立った。
「ちょ…ちょっと」
「ハルカさん、絶対に私から離れないでください!」
ルーは振り向きもしないで、強い口調で叫んだ。それから両腕を左右に開く。
「ツインセイバー!」
ルーの声と同時に、白銀に輝く刃渡り30センチメートル程の曲刀が、彼女の両手に握られていた。
「真中さん」
自分を呼ぶ声に一瞬ビクッとした真中聡子は、それからゆっくり振り向いた。
「新島…くん、どうして…?」
「どうしてって、さすがにあんなの気になるよ」
新島恵太は心配そうな顔をする。
「そっか…そうだよね」
真中聡子は目を閉じると、ゆっくりと頷く。そして再び目を開いた。
「私ね、距離感近いって親によく注意されるんだ」
真中聡子は努めてニッコリ笑った。
「気がつくと、相手のパーソナルスペースを越えちゃってるみたい」
緊張でもしているのか、胸元に抱き寄せたいつものポーチを両手で弄ぶ。
「大抵の人は、大なり小なり身構えるから私もそこで気付くんだけど、新島くんはそんな素ぶりが全くなくて、私も居心地良くて油断してた。本当にごめんなさい」
そう言って真中聡子は、深々と頭を下げた。
「あ、いやー、ボクも相手は女子なのに気にしなさ過ぎた。コッチこそゴメン」
新島恵太も頭を下げる。
「に、新島くんは何も悪くないよ!私が気をつけなくちゃいけなかったんだから」
真中聡子は焦ったように、首を横に振った。
「だけど高校に入ってからはホントに注意してて、上手くいってた筈なんだけど…新島くん相手だと油断しちゃってた…なんでかな?」
真中聡子は顔を真っ赤にしながら、真っ直ぐに新島恵太を見つめた。
「なんでって…ボクには、分からないよ」
新島恵太は思わず顔を背けた。こんな可愛い表情をするなんて全然思ってなかった。心臓がバクバク大暴れしてる。
「それも、そっか」
真中聡子は「アハッ」と笑った。
「あのさ…」
新島恵太は後頭部を掻きながら、ボソッと呟く。
「真中さんがイヤじゃないなら、続き教えてほしーんだけど…」
真中聡子はハッと驚き、それから優しく微笑んだ。
「うん!勝手に中断して、ゴメンね」
~~~
「リストの上書きが必要だわっ!」
駅へ向かう大通りで、新島春香は心底憎らしげに声を張り上げた。
「抜かれちゃいましたかー」
ルーは、どこか楽しそうに笑う。
「なんでアンタといー、アイツといー、私の結界を易々と超えてくるのよ!」
「それはだって、ケータお兄ちゃんの好きな女子ですから」
新島春香はルーの発する言葉の意味が、初め全く理解出来なかった。
暫くして後…
「はあー!?アンタ何言って…はあー!?」
新島春香は顔を真っ赤にして、隣を歩く少女を怒鳴りつけた。
「あー安心してください。私とハルカさんも、ちゃんと恋人ですから!」
「ちょっとアンタ、ホントに何を言って…」
ルーの意味不明な発言に新島春香は困惑した。しかしその瞬間、周りの景色が一瞬で灰色になる。
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「しっ!静かに!」
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「隔離…て、アンタ何を…」
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「来ます!」
ルーが前方を見据えて鋭く叫ぶと、通りの先から十数体の黒い野犬のような動物の群れが現れた。
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「ちょ…ちょっと」
「ハルカさん、絶対に私から離れないでください!」
ルーは振り向きもしないで、強い口調で叫んだ。それから両腕を左右に開く。
「ツインセイバー!」
ルーの声と同時に、白銀に輝く刃渡り30センチメートル程の曲刀が、彼女の両手に握られていた。
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