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危険信号!

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「あの、に…新島くん」

新島恵太が妹の持ってきたお弁当を食べていると、不意に背後から女子に話しかけられた。

振り返ると、そこには真中聡子が立っていた。

「あれ、真中さん、何?」

「良かったら、テスト勉強…一緒にやらない?」

「え?」

新島恵太は突然の申し出にキョトンとする。

「さっき、春日くんに断られてたから…」

そう、新島恵太はいつものお弁当の待ち時間に、春日翔に一緒にテスト勉強しようと持ち掛けた。

あくまで春日翔の気分しだいなので、確率は半々。

残念ながら申し出は断られた。

しかし今回の範囲に自信のなかった新島恵太は、そこを何とかと食い下がる。

しかし結果は変わらなかった。

「え…でも、いいのか?」

新島恵太は困惑した。隣に座っているとはいえ、大して会話をしたこともない。どうしてこんな誘いが舞い込んできたのか、不思議でならなかった。

「うん、教えることで身につく事もあるから」

「そーいうコトじゃなくて…」

新島恵太は少し顔を赤らめた。

「良かったじゃないか。こんな可愛い女子と二人っきりで勉強会なんて、羨ましいぜ」

「お、おま…ハッキリ言うんじゃねーよ!」

茶化すように口を挟んだ春日翔に、新島恵太は焦って怒鳴りつけた。

「え…え?」

二人の男子の会話を聞きながら、だんだんと真中聡子の顔が赤らんできた。自分の行動が少し大胆だったことに、どうやら気付いたようだ。

「よ、良かったら考えてみて!」

真中聡子はいつものポーチを胸元にギュッと抱き寄せると、それだけ言い残してピューと廊下に向けて駆けていった。

「あ、ちょっと!!」

新島恵太の声だけが、その場に取り残された。

   ~~~

「今の何!?」

新島春香は教室から飛び出していった真中聡子の後ろ姿を、ガタッと立ち上がりながら見送った。

あからさまな危険信号、パターン赤だ。

「何って、勉強会のお誘いだろ?」

春日翔が涼しい顔で新島春香に応える。

「春日さんが恵太の勉強、見てくれたらいーじゃないですか!!」

「俺だって忙しいからな。いやしかし、恵太はツイてるなー」

春日翔があからさまにうそぶく。

(コイツ…)

新島春香は春日翔を睨みつけた。どうやら自分の持っていない情報を持っていたようだ。完全に出し抜かれた。

そのとき隣にいたルーに、クイッと制服の袖を引っ張られた。新島春香はストンと席に着席する。

「今の真中聡子さんですよね?」

「アンタよく知ってるわね?だけどあの人、今まで私のリストに名前もあがってなかった」

「リスト?」

ルーは不思議そうな顔で聞き返した。すると新島春香は、グイッとルーに顔を近付け囁いた。

「害虫駆除のリストよ。言っとくけど、今はアンタが一番上だから!」

「へー、それは光栄です」

ルーは目を細めて妖しく笑った。

「私が一番、可能性があるってコトですね」

「アンタ、いい度胸してるじゃない」

二人の視線が交錯し合い、バチバチと火花が散る。

「で、恵太はどうするんだ?」

春日翔が新島恵太に問い詰めた。

「そーだな、確かにヤバイっちゃヤバイから頼んでみるかな」

「ちょっと恵太…」
「おー、そーしろそーしろ!」

新島春香の細やかな抵抗は、しかし春日翔に呆気なく未然に防がれた。
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