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14 もうひとりの配下①

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 宝来尊ほうらいみことはシラネを伴って、再び地下の一室の前に立っていた。

 そうしてシラネが進み出て、再び同じように扉をノックする。

「魔王さまのお目通りである。ここを開けよ」

 しかしながら、やはり歴史は繰り返す。

 いつまで待てども返事はなかった。

 その時シラネが右手を頭上に振り上げた。途端に漆黒の大鎌が、その右手に出現する。

「ミコトさま、ここはやはりわたくしが」

「いやいや待て待て。ここは俺が話してみるから」

 光の消え失せた大きな瞳でニッコリ笑うシラネを制して、宝来尊が扉の前に進み出た。

「あーあー、聞こえるかー」

 ここに来る前に確認したところ、やはりここはトレーニングルーム。いくら何でもまさかとは思うが、中の住人は、ずっとトレーニングを続けているのかもしれない。

 だとしたらこう言う体育祭的なイベントには、興味を示す可能性がある。

「魔界大綱引き大会が催される事になったから、良かったら参加してくれないかなー?」

 しかし暫く待っても反応がない。

 駄目か…宝来尊が諦めかけた時、扉がガチャリと開いた。

 次の瞬間、真っ白な湿気を含んだ熱気がブワッと吹き出し、表に立っていた二人に襲いかかる。

(うわー、汗臭ー…)

 宝来尊は思わず顔をしかめた。シラネに至っては、放心状態で顔から血の気が引いている。

「魔界大綱引きとは久しいな。この魔王城に挑んでくるなど、どんな命知らずだ」

 真っ白な湯気の中から、ちんちくりんな人影が姿を現す。

 身長は宝来尊の半分程しかない。しかし筋骨隆々の赤い体躯と、頭髪のない前頭部から伸びる一本の黒い角は、彼の知識から照らし合わせると赤鬼と言ったところか。

 そんな上半身裸の赤鬼が、白いスポーツタオルを肩にかけて、白目の大きな三白眼をギロリと宝来尊に向けていた。
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