10 / 31
10 夕飯①
しおりを挟む
「それではミコトさま、お時間も宜しいようですので、夕食の支度を始めさせて頂きます」
移動用魔法陣で玉座の間に戻ってくると、シラネがそう提案した。
「シラネが作ってくれるの?」
「はい。と申しましても家庭料理レベルですので、ミコトさまのお口に合うかどうか…」
「いやいや、是非お願いします」
シラネの手料理が食べられるなんて、考えただけでもウキウキする。それだけでも、この仕事を受けた甲斐があるというものだ。
「はい。それでは準備を始めますので、暫くお時間を頂きます」
シラネは宝来尊の様子にクスッと笑うと、玉座の奥の部屋へと入っていった。
あそこが食堂なんだろうか。
そういえば、まだこの城の事を充分に把握していない事に気付き、宝来尊は時間潰しも兼ねて玉座に腰を下ろす。
それから背もたれへと身体を預け、ゆっくりと目を閉じた。
どうやら背後の部屋は、魔王専用の寝所と食堂になっているようだ。そして下の三階が、配下用の居住スペースとなっており、大食堂もそこにある。
一階二階は迷宮になっており、まあ恐らく侵入者対策という事か。
そうして地下には、トレーニングルームや娯楽施設、大浴場が設置されていた。
「まさかアイツ、ずっとトレーニングしてる訳じゃないよな?」
無意識にボソッと呟く。それから「ないない」と首を横に振った。
聞いた限りは三億年。いくら何でもそれは無い。
そんな事を考えていると、奥の部屋から良い匂いが漂い始めた。途端にお腹が、空腹の意思表示を高らかに鳴らす。
考えてみたら母親以外の女の子の手料理なんて、一度も食べた事がない。しかもそれが絶世の美少女ときたもんだ。
「いやいや違う。俺はロリコンじゃない!」
思わず緩んだ自分の頬を、宝来尊は両手でパシンと強く叩いた。
「ミコトさま、ご用意が出来ましたので、コチラにお越しください」
そのとき玉座の背後から、シラネの澄んだ声が響き渡る。
「はーーい」
宝来尊は何とも間の抜けた返事を返すと、嬉しそうに玉座から立ち上がった。
移動用魔法陣で玉座の間に戻ってくると、シラネがそう提案した。
「シラネが作ってくれるの?」
「はい。と申しましても家庭料理レベルですので、ミコトさまのお口に合うかどうか…」
「いやいや、是非お願いします」
シラネの手料理が食べられるなんて、考えただけでもウキウキする。それだけでも、この仕事を受けた甲斐があるというものだ。
「はい。それでは準備を始めますので、暫くお時間を頂きます」
シラネは宝来尊の様子にクスッと笑うと、玉座の奥の部屋へと入っていった。
あそこが食堂なんだろうか。
そういえば、まだこの城の事を充分に把握していない事に気付き、宝来尊は時間潰しも兼ねて玉座に腰を下ろす。
それから背もたれへと身体を預け、ゆっくりと目を閉じた。
どうやら背後の部屋は、魔王専用の寝所と食堂になっているようだ。そして下の三階が、配下用の居住スペースとなっており、大食堂もそこにある。
一階二階は迷宮になっており、まあ恐らく侵入者対策という事か。
そうして地下には、トレーニングルームや娯楽施設、大浴場が設置されていた。
「まさかアイツ、ずっとトレーニングしてる訳じゃないよな?」
無意識にボソッと呟く。それから「ないない」と首を横に振った。
聞いた限りは三億年。いくら何でもそれは無い。
そんな事を考えていると、奥の部屋から良い匂いが漂い始めた。途端にお腹が、空腹の意思表示を高らかに鳴らす。
考えてみたら母親以外の女の子の手料理なんて、一度も食べた事がない。しかもそれが絶世の美少女ときたもんだ。
「いやいや違う。俺はロリコンじゃない!」
思わず緩んだ自分の頬を、宝来尊は両手でパシンと強く叩いた。
「ミコトさま、ご用意が出来ましたので、コチラにお越しください」
そのとき玉座の背後から、シラネの澄んだ声が響き渡る。
「はーーい」
宝来尊は何とも間の抜けた返事を返すと、嬉しそうに玉座から立ち上がった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、マリアは片田舎で遠いため、会ったことはなかった。でもある時、マリアは、妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは、結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
私のお父様とパパ様
棗
ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。
婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。
大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。
※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。
追記(2021/10/7)
お茶会の後を追加します。
更に追記(2022/3/9)
連載として再開します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる