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「次にミコトさまの帰還方法ですが…」
「あーシラネ、それはもういいよ」
宝来尊は軽く右手を挙げると、シラネの言葉を遮った。
「それは日本に帰る時に改めて聞くよ。とにかく今は契約期間として、180日間でお願いしたい」
宝来尊の言葉を聞いて、シラネの両頬がみるみると上気していく。
「ほ、本当でございますか⁉︎」
「ああ。だけど確認として、もし180日間で目標が達成出来なかった場合はどーなるんだ?」
「そうでございますね…わたくしとしましては契約の更新を希望しますが、ミコトさまがご希望されない場合は、他の者を探す事になります」
少しシンミリした表情で、シラネが微笑んだ。
「なるほど…まーその時になってみないと分からないけど、可能な限り頑張るよ」
「は、はい。宜しくお願い致します」
嬉しそうに深々と頭を下げるシラネに頷きながら、宝来尊は四天王の最初のひとりにシラネの名前を登録する。
と、その時……
ピンポーーンと馴染み深い呼び出し鈴が、玉座の間に鳴り響いた。
~~~
玉座の間の中空に巨大なスクリーンが出現し、城門の様子が映し出される。
そこには黒髪オールバックで青い皮膚の男性が、黒の燕尾服姿で立っていた。
「え…誰?」
「あちらの魔王城の使いの者です」
宝来尊のコソッとした質問に同じく小声で答えると、シラネは画面に向き直って凛とした声を張り上げた。
「何用か?」
「これはこれはシラネさま。お元気そうで何よりです。ご決断の方は出来ましたでしょうか?」
何だか軽薄そうな男の声が、玉座の間に響き渡る。
「その話は、何度もお断りした筈です」
「とは言え、この様な既に終わった魔王城に残られて、一体どうなさるおつもりです?」
「口を慎みなさい! 魔王の御前ですよ!」
ピシャリとシラネが言い放つ。
「え、魔王⁉︎ 戻っておられたのか?」
「いいえ、この度ご襲名された新生魔王です。今の会話も全て、この場でお聴きになっておられますよ」
「し、知らぬ事とは言え失礼した。この度の御襲名おめでとうございます。改めてご挨拶に伺いますので、本日はこれにて」
男が踵を返すと同時に映像が途切れる。
何やらやり切った感のあるシラネの横顔を眺めながら、宝来尊は今のやり取りに一抹の不安を覚えるのだった。
「あーシラネ、それはもういいよ」
宝来尊は軽く右手を挙げると、シラネの言葉を遮った。
「それは日本に帰る時に改めて聞くよ。とにかく今は契約期間として、180日間でお願いしたい」
宝来尊の言葉を聞いて、シラネの両頬がみるみると上気していく。
「ほ、本当でございますか⁉︎」
「ああ。だけど確認として、もし180日間で目標が達成出来なかった場合はどーなるんだ?」
「そうでございますね…わたくしとしましては契約の更新を希望しますが、ミコトさまがご希望されない場合は、他の者を探す事になります」
少しシンミリした表情で、シラネが微笑んだ。
「なるほど…まーその時になってみないと分からないけど、可能な限り頑張るよ」
「は、はい。宜しくお願い致します」
嬉しそうに深々と頭を下げるシラネに頷きながら、宝来尊は四天王の最初のひとりにシラネの名前を登録する。
と、その時……
ピンポーーンと馴染み深い呼び出し鈴が、玉座の間に鳴り響いた。
~~~
玉座の間の中空に巨大なスクリーンが出現し、城門の様子が映し出される。
そこには黒髪オールバックで青い皮膚の男性が、黒の燕尾服姿で立っていた。
「え…誰?」
「あちらの魔王城の使いの者です」
宝来尊のコソッとした質問に同じく小声で答えると、シラネは画面に向き直って凛とした声を張り上げた。
「何用か?」
「これはこれはシラネさま。お元気そうで何よりです。ご決断の方は出来ましたでしょうか?」
何だか軽薄そうな男の声が、玉座の間に響き渡る。
「その話は、何度もお断りした筈です」
「とは言え、この様な既に終わった魔王城に残られて、一体どうなさるおつもりです?」
「口を慎みなさい! 魔王の御前ですよ!」
ピシャリとシラネが言い放つ。
「え、魔王⁉︎ 戻っておられたのか?」
「いいえ、この度ご襲名された新生魔王です。今の会話も全て、この場でお聴きになっておられますよ」
「し、知らぬ事とは言え失礼した。この度の御襲名おめでとうございます。改めてご挨拶に伺いますので、本日はこれにて」
男が踵を返すと同時に映像が途切れる。
何やらやり切った感のあるシラネの横顔を眺めながら、宝来尊は今のやり取りに一抹の不安を覚えるのだった。
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