93 / 114
第十一章 フィアホルン攻防戦
93 番外編 9
しおりを挟む
「何が……起きたの…?」
地面に投げ出された鳴神ひかりは、頭を押さえながら何とか上半身を起き上がらせた。そばには白石和真や騎士団員が倒れている。
「カズっぺ⁉︎ 皆んなっ!」
鳴神ひかりの声に反応するように、騎士団員の面々が何とか起き上がり始める。しかし爆心地にいた白石和真はダメージが大きいのか、呻き声を漏らすだけで、うつ伏せのまま動かない。
「カズっぺ、しっかりして……あぅっ」
心配になった鳴神ひかりが白石和真のそばに寄ろうと身体を動かした時、その全身に激痛が走った。どうやら身体中に、打撲やら裂傷があるようだ。
「ひかり…ちゃん」
白石和真は、鳴神ひかりの小さな呻き声に細目を開けると、必死に右手を伸ばした。
「エリア…ヒール」
その瞬間、若緑色の魔法陣が輝きを放ち、6人の身体を優しい光が包み込む。直後に、白石和真は跳ねるように立ち上がった。
「アーイーツーらー…ひかりちゃんを、こんな目に合わせやがってーーっ!」
(起きたか、小僧)
同時に白石和真の頭の中に、少女の声が響き渡る。
「な…っ⁉︎」
「えっ…?」
白石和真が自分の頭を押さえて目を見開いた時、同じように鳴神ひかりも驚きの声を漏らした。見ると周りの騎士団員も、同じく騒ついている。
(まー何と言うか…申し訳ないが今のお主では、どう逆立ちしても奴らには勝てん)
「はあっ⁉︎ お前何言って…」
(じゃから、一撃…渡したダガーで何とか一撃入れてくれ)
「それなら自分で…っ」
(声を出すでないっ!)
反論を即座に遮られ、鳴神ひかりは撫然としつつも心の中で思い浮かべた。
(一撃だけなら、自分でやればいーじゃない。何でカズっぺに頼むの?)
(儂で同じ結果を求めるならば、半殺しにまで追い詰めねばならん。2対1のこの状況で、流石にそれは骨が折れる)
(それって…どーいう意味?)
(お主らは、所詮は人間…と言う事じゃ)
「答えになってねーよっ!」
白石和真は聖銀の大盾のそばに落ちていた黒いダガーを拾い上げると、左手で鞘を抜き放つ。
「何をする気か知りませんが…全く無駄ですわよ」
するとルサルサが、白石和真のその行動に、目を細めて嘲笑った。
「当てるだけなら、ウチだってーーっ!」
そのとき鳴神ひかりが、冥杖バルキエラを両手で構えてルサルサに向ける。直後に杖の先端に、1メートルに達する金色の魔法陣が浮かび上がった。
「サンダー…ビィーーム!」
次の瞬間、波動砲のような巨大な光線が、一瞬でルサルサの全身を包み込む。
そのままその後方にあった丘の一角を、地形が変わる程に吹き飛ばした。
モウモウと舞い上がる土煙りの中、10秒にも及んだ光線が静かに収束していく。
やがて風が少しずつ土煙りを運んでいくと、その中から人影が姿を現し始めた。
「ウ…ソ」
鳴神ひかりは、言葉に詰まって目を見開く。
「今、何かしたかしら?」
ルサルサは涼しい顔を見せながら、少し乱れた髪を右手でフワッと整えた。
地面に投げ出された鳴神ひかりは、頭を押さえながら何とか上半身を起き上がらせた。そばには白石和真や騎士団員が倒れている。
「カズっぺ⁉︎ 皆んなっ!」
鳴神ひかりの声に反応するように、騎士団員の面々が何とか起き上がり始める。しかし爆心地にいた白石和真はダメージが大きいのか、呻き声を漏らすだけで、うつ伏せのまま動かない。
「カズっぺ、しっかりして……あぅっ」
心配になった鳴神ひかりが白石和真のそばに寄ろうと身体を動かした時、その全身に激痛が走った。どうやら身体中に、打撲やら裂傷があるようだ。
「ひかり…ちゃん」
白石和真は、鳴神ひかりの小さな呻き声に細目を開けると、必死に右手を伸ばした。
「エリア…ヒール」
その瞬間、若緑色の魔法陣が輝きを放ち、6人の身体を優しい光が包み込む。直後に、白石和真は跳ねるように立ち上がった。
「アーイーツーらー…ひかりちゃんを、こんな目に合わせやがってーーっ!」
(起きたか、小僧)
同時に白石和真の頭の中に、少女の声が響き渡る。
「な…っ⁉︎」
「えっ…?」
白石和真が自分の頭を押さえて目を見開いた時、同じように鳴神ひかりも驚きの声を漏らした。見ると周りの騎士団員も、同じく騒ついている。
(まー何と言うか…申し訳ないが今のお主では、どう逆立ちしても奴らには勝てん)
「はあっ⁉︎ お前何言って…」
(じゃから、一撃…渡したダガーで何とか一撃入れてくれ)
「それなら自分で…っ」
(声を出すでないっ!)
反論を即座に遮られ、鳴神ひかりは撫然としつつも心の中で思い浮かべた。
(一撃だけなら、自分でやればいーじゃない。何でカズっぺに頼むの?)
(儂で同じ結果を求めるならば、半殺しにまで追い詰めねばならん。2対1のこの状況で、流石にそれは骨が折れる)
(それって…どーいう意味?)
(お主らは、所詮は人間…と言う事じゃ)
「答えになってねーよっ!」
白石和真は聖銀の大盾のそばに落ちていた黒いダガーを拾い上げると、左手で鞘を抜き放つ。
「何をする気か知りませんが…全く無駄ですわよ」
するとルサルサが、白石和真のその行動に、目を細めて嘲笑った。
「当てるだけなら、ウチだってーーっ!」
そのとき鳴神ひかりが、冥杖バルキエラを両手で構えてルサルサに向ける。直後に杖の先端に、1メートルに達する金色の魔法陣が浮かび上がった。
「サンダー…ビィーーム!」
次の瞬間、波動砲のような巨大な光線が、一瞬でルサルサの全身を包み込む。
そのままその後方にあった丘の一角を、地形が変わる程に吹き飛ばした。
モウモウと舞い上がる土煙りの中、10秒にも及んだ光線が静かに収束していく。
やがて風が少しずつ土煙りを運んでいくと、その中から人影が姿を現し始めた。
「ウ…ソ」
鳴神ひかりは、言葉に詰まって目を見開く。
「今、何かしたかしら?」
ルサルサは涼しい顔を見せながら、少し乱れた髪を右手でフワッと整えた。
0
お気に入りに追加
38
あなたにおすすめの小説
アホ王子が王宮の中心で婚約破棄を叫ぶ! ~もう取り消しできませんよ?断罪させて頂きます!!
アキヨシ
ファンタジー
貴族学院の卒業パーティが開かれた王宮の大広間に、今、第二王子の大声が響いた。
「マリアージェ・レネ=リズボーン! 性悪なおまえとの婚約をこの場で破棄する!」
王子の傍らには小動物系の可愛らしい男爵令嬢が纏わりついていた。……なんてテンプレ。
背後に控える愚か者どもと合わせて『四馬鹿次男ズwithビッチ』が、意気揚々と筆頭公爵家令嬢たるわたしを断罪するという。
受け立ってやろうじゃない。すべては予定調和の茶番劇。断罪返しだ!
そしてこの舞台裏では、王位簒奪を企てた派閥の粛清の嵐が吹き荒れていた!
すべての真相を知ったと思ったら……えっ、お兄様、なんでそんなに近いかな!?
※設定はゆるいです。暖かい目でお読みください。
※主人公の心の声は罵詈雑言、口が悪いです。気分を害した方は申し訳ありませんがブラウザバックで。
※小説家になろう・カクヨム様にも投稿しています。
【完結】婚約破棄されて修道院へ送られたので、今後は自分のために頑張ります!
猫石
ファンタジー
「ミズリーシャ・ザナスリー。 公爵の家門を盾に他者を蹂躙し、悪逆非道を尽くしたお前の所業! 決して許してはおけない! よって我がの名の元にお前にはここで婚約破棄を言い渡す! 今後は修道女としてその身を神を捧げ、生涯後悔しながら生きていくがいい!」
無実の罪を着せられた私は、その瞬間に前世の記憶を取り戻した。
色々と足りない王太子殿下と婚約破棄でき、その後の自由も確約されると踏んだ私は、意気揚々と王都のはずれにある小さな修道院へ向かったのだった。
注意⚠️このお話には、妊娠出産、新生児育児のお話がバリバリ出てきます。(訳ありもあります)お嫌いな方は自衛をお願いします!
2023/10/12 作者の気持ち的に、断罪部分を最後の番外にしました。
2023/10/31第16回ファンタジー小説大賞奨励賞頂きました。応援・投票ありがとうございました!
☆このお話は完全フィクションです、創作です、妄想の作り話です。現実世界と混同せず、あぁ、ファンタジーだもんな、と、念頭に置いてお読みください。
☆作者の趣味嗜好作品です。イラッとしたり、ムカッとしたりした時には、そっと別の素敵な作家さんの作品を検索してお読みください。(自己防衛大事!)
☆誤字脱字、誤変換が多いのは、作者のせいです。頑張って音読してチェックして!頑張ってますが、ごめんなさい、許してください。
★小説家になろう様でも公開しています。
誰でもイイけど、お前は無いわw
猫枕
恋愛
ラウラ25歳。真面目に勉強や仕事に取り組んでいたら、いつの間にか嫁き遅れになっていた。
同い年の幼馴染みランディーとは昔から犬猿の仲なのだが、ランディーの母に拝み倒されて見合いをすることに。
見合いの場でランディーは予想通りの失礼な発言を連発した挙げ句、
「結婚相手に夢なんて持ってないけど、いくら誰でも良いったってオマエは無いわww」
と言われてしまう。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
召喚された聖女? いえ、商人です
kieiku
ファンタジー
ご依頼は魔物の回収……転送費用がかさみますので、買取でなく引取となりますがよろしいですか?
あとお時間かかりますので、そのぶんの出張費もいただくことになります。
婚約者は幼馴染みを選ぶようです。
香取鞠里
恋愛
婚約者のハクトには過去に怪我を負わせたことで体が不自由になってしまった幼馴染がいる。
結婚式が近づいたある日、ハクトはエリーに土下座して婚約破棄を申し出た。
ショックではあったが、ハクトの事情を聞いて婚約破棄を受け入れるエリー。
空元気で過ごす中、エリーはハクトの弟のジャックと出会う。
ジャックは遊び人として有名だったが、ハクトのことで親身に話を聞いて慰めてくれる。
ジャックと良い雰囲気になってきたところで、幼馴染みに騙されていたとハクトにエリーは復縁を迫られるが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる