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第二章 メイの再生屋

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高校進学に向けて二週間ほど既に一人暮らしを始めていた佐敷瞳子は、ここでその能力を発揮した。

さすがに「テキパキ」と云うレベルではないが、オロオロする神木公平を巧く使って、せっせとひとつずつ片付けていく。

彼女の意外な一面に、神木公平は自然と尊敬の念を抱いた。

「瞳子、こういうの得意だったんだな、知らなかったよ」

「わ、私…春から一人暮らしだから、やるしかなかっただけ」

「えっ…お前、一人暮らしやってんの?」

チリトリを持って屈んでいた神木公平が、ホウキを持つ佐敷瞳子を思わず見上げる。

「何で?」

「……こ、公平くんに、逢いたくて…」

佐敷瞳子はホウキの柄を両手で握りしめると、顔を真っ赤にして俯いた。

「お、おう、そうか…」

神木公平も照れ臭くなり、鼻の頭をポリポリと掻きながら、顔をソッポに向ける。

それ以降、何だかギクシャクしながらも片付けが終わり、二人並んで達成感を噛み締めていた時にハタと気が付いた。

シングルのベッドがひとつしかない…

六畳ほどの部屋だから当然かもしれないが、他には二人ならゆったりと座れるソファーと小さな丸テーブル、それと大きめのクローゼット。

「えっとー…」

どうするべきか困ってしまい、神木公平は横に立つ佐敷瞳子に顔を向けた。

しかし当の彼女は無言のまま顔を伏せており、その表情は確認出来ない。

「お、俺、ちょっとメイさんに…」
「調子はどうだい、お二人さんっ!」

そのときバンと扉を開けて、メイが勢いよく姿を現した。

「おおー、スッカリ片付いてるじゃないかい。思ったよりやるねー」

部屋をクルリと興味深そうに一回りして、二人の前にスックと立つ。それから小さな巾着袋をひとつずつ差し出した。

「あの、これは…?」

「握り飯と水筒だ。急いでるからな、飯は移動しながら摂ってもらうよ」

   ~~~

店から一歩外に出ると、そこは雑然とした住宅街だった。木造、石造り、煉瓦造り、様々な家屋が所狭しとひしめき合っている。

そこから周りを見渡すと山の手エリアが目に入り、大きなお屋敷が建ち並ぶ。

その山の手の更に頂上に、モンサンミッシェル城を彷彿とさせる荘厳なお城が佇んでいた。

「物珍しいのは分かるけど、余所見してはぐれるんじゃないよ」

自身の頭部より大きな柄の長いハンマーや、登山用ほどのリュックを背負ったメイが、それだけ言い残してサッサとひとりで歩いていく。神木公平と佐敷瞳子は、慌ててその後をついて行った。

15分ほど歩いたか、街をグルリと取り囲む高い外壁にたどり着く。メイが目指していたのは、馬車が一台通れるかのような、小さな裏門であった。

そのそばに建つ馬小屋から、メイが馬一頭だての馬車をレンタルして現れる。

「後ろに乗りな」

メイに言われるがまま、神木公平は軽トラック程の荷台によじ登り、佐敷瞳子を引き上げた。

「あの、これから何処に…?」

不安そうな表情を浮かべながら、神木公平がメイの背中に問いかける。

裏門の門番に市民証を見せて許可を得ると、メイがチラリと振り返った。

「南の森で、素材の収集だ」

それだけ言って前を向くと、メイは「ハイヨ」と馬に鞭を入れた。
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