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態勢を立て直した車の窓から見える光景が、夜空へ流れる3人を照らしていた。
巨大な光の流体が掲げる手から遥か頭上にある、黒い球体へ激しい遠心力で引きずり込まれるように、空を舞うドス黒い流体が遥か天空へ呑み込まれてゆく。強力な発光を伴って吸収する球体に、空間が歪むように星々の光が屈折し、ドス黒い流体を吸収する度に地上へ光を放つ球体は一段と巨大化しながら、空を覆い始めた。激しい引力はドス黒い流体のみに働いているようだった。
「どーんだけ高いトコにあんだ?あれ…」
美雪が呟く。レイナも首を傾げる。
「成層圏は越えてる…わよね」
「ぁあっママが消えちゃうっ」
レイナの言葉に、ユッコの焦った声が被さる。
球体の吸収に伴う、強力な発光が街を照らし出す度に光の流体は縮小してゆき、黒い球体も大きさや引力に変化は見られないものの中和されるように色を失っていった。
ドス黒い流体が完全に消える時と同じくして球体は無色となり景色へ溶け込み、光の流体は消滅した。
「ユッコ…」
消える光へ視線を向けるユッコを見て悲しげに呟く美雪。
直後、激しい振動が車を襲った。
「ふぇええっ」
「きゃああっ」
「今度は何っ⁉︎」
悲鳴を上げるユッコと美雪。レイナは外を見た。
窓は割れバンパーがひしゃげていた。地上の海沿い、免震である筈のユッコ達が住む寮、ブリリアント・オーシャンタワーが倒壊している。
先程の衝撃の比では無い…不安定に浮遊する車。いつ墜落してもおかしくない…レイナが緊急脱出ボタンを押す。しかし何度押しても脱出ポッドが2つしか作動しない。
唇を噛むレイナ。困り顔のユッコと動揺する美雪へ目を向け言った。
「2人共、先にこれに乗って脱出しなさい!」
「な、何言ってんのよ!」
狼狽える美雪の声を無視しレイナは運転席に座ると、2人の席にある脱出ポッドを閉めた。
「大丈夫…私は死にません。これを操縦して着陸します」
「レイナ…」
「そうしたら皆んなでそうすればいいじゃん!」
無邪気な顔で提案するユッコを横目に美雪は呟いた。
「…ゴメンね…」
そう言うと美雪はポッド内のボタンを押した。
車体から切り離されて地上へ急降下してゆく美雪。それを眺めるユッコ。
「ふぁ…」
ぼーっと眺めるユッコに目を向けてレイナは言った。
「あれでいいの…美雪は正しいのよ、ユッコ」
レイナと目が合う…違う…こんなの、悲しいよ。
「元気でね、ユッコ」
レイナはユッコを優しく切ない目で見つめ、ポッドを抱きしめると、ユッコが座る席の横にあるスイッチを押した。
切り離される、ユッコが乗るポッド。小さくなってゆく、レイナを見つめるユッコ。
「ふぇ…」
ふいに、ユッコの目から溢れる涙。
「ふぇえええぇっ」
なんでっ?わからないよ!ミユ、レイナ…
泣きじゃくりながら小さくなってゆくユッコを、見届けるレイナ。
レイナは胸にある母から貰った父の形見であるロザリオを握りしめた。お父様…貴方が貫いたnoblesse oblige、私は女ですが大切なものの為に闘う気持ちは同じ。貴方が託した戦地で落とした命の遺志を受け継ぎ…守り抜いてみせます。
溢れる涙の中で、ユッコの脳裏をよぎる、3人の楽しい思い出…
"ねぇ、ミユ…"
思い出の中で、屈託のない笑顔を浮かべる美雪へ問い掛ける。
"私達…友達じゃなかったの?"
巨大な光の流体が掲げる手から遥か頭上にある、黒い球体へ激しい遠心力で引きずり込まれるように、空を舞うドス黒い流体が遥か天空へ呑み込まれてゆく。強力な発光を伴って吸収する球体に、空間が歪むように星々の光が屈折し、ドス黒い流体を吸収する度に地上へ光を放つ球体は一段と巨大化しながら、空を覆い始めた。激しい引力はドス黒い流体のみに働いているようだった。
「どーんだけ高いトコにあんだ?あれ…」
美雪が呟く。レイナも首を傾げる。
「成層圏は越えてる…わよね」
「ぁあっママが消えちゃうっ」
レイナの言葉に、ユッコの焦った声が被さる。
球体の吸収に伴う、強力な発光が街を照らし出す度に光の流体は縮小してゆき、黒い球体も大きさや引力に変化は見られないものの中和されるように色を失っていった。
ドス黒い流体が完全に消える時と同じくして球体は無色となり景色へ溶け込み、光の流体は消滅した。
「ユッコ…」
消える光へ視線を向けるユッコを見て悲しげに呟く美雪。
直後、激しい振動が車を襲った。
「ふぇええっ」
「きゃああっ」
「今度は何っ⁉︎」
悲鳴を上げるユッコと美雪。レイナは外を見た。
窓は割れバンパーがひしゃげていた。地上の海沿い、免震である筈のユッコ達が住む寮、ブリリアント・オーシャンタワーが倒壊している。
先程の衝撃の比では無い…不安定に浮遊する車。いつ墜落してもおかしくない…レイナが緊急脱出ボタンを押す。しかし何度押しても脱出ポッドが2つしか作動しない。
唇を噛むレイナ。困り顔のユッコと動揺する美雪へ目を向け言った。
「2人共、先にこれに乗って脱出しなさい!」
「な、何言ってんのよ!」
狼狽える美雪の声を無視しレイナは運転席に座ると、2人の席にある脱出ポッドを閉めた。
「大丈夫…私は死にません。これを操縦して着陸します」
「レイナ…」
「そうしたら皆んなでそうすればいいじゃん!」
無邪気な顔で提案するユッコを横目に美雪は呟いた。
「…ゴメンね…」
そう言うと美雪はポッド内のボタンを押した。
車体から切り離されて地上へ急降下してゆく美雪。それを眺めるユッコ。
「ふぁ…」
ぼーっと眺めるユッコに目を向けてレイナは言った。
「あれでいいの…美雪は正しいのよ、ユッコ」
レイナと目が合う…違う…こんなの、悲しいよ。
「元気でね、ユッコ」
レイナはユッコを優しく切ない目で見つめ、ポッドを抱きしめると、ユッコが座る席の横にあるスイッチを押した。
切り離される、ユッコが乗るポッド。小さくなってゆく、レイナを見つめるユッコ。
「ふぇ…」
ふいに、ユッコの目から溢れる涙。
「ふぇえええぇっ」
なんでっ?わからないよ!ミユ、レイナ…
泣きじゃくりながら小さくなってゆくユッコを、見届けるレイナ。
レイナは胸にある母から貰った父の形見であるロザリオを握りしめた。お父様…貴方が貫いたnoblesse oblige、私は女ですが大切なものの為に闘う気持ちは同じ。貴方が託した戦地で落とした命の遺志を受け継ぎ…守り抜いてみせます。
溢れる涙の中で、ユッコの脳裏をよぎる、3人の楽しい思い出…
"ねぇ、ミユ…"
思い出の中で、屈託のない笑顔を浮かべる美雪へ問い掛ける。
"私達…友達じゃなかったの?"
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