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蒼い約束
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俊介が消えた後も、抱きかかえる恰好のまま暫く動かなかった隆哉がゆっくりと顔を上げた。無表情な顔で彬を見つめ、首を傾げる。
「彼、置いて逝った……?」
「へ?」
意味不明な言葉を吐いて、胸を押さえる。
訳が解らず視線を交わし合った彬と秀行が、その両側にしゃがみ込んだ。
「何? どうした?」
二人の問いかけになんの反応も示さない。根気よく待っていると、暫くしてやっと隆哉が呆然と言葉を吐き出した。
「嘘。――置いて、逝った」
「だから、何を?」
イラついた彬の声音に、硝子の瞳を向けて隆哉が低く呟く。
「あんた。何か『約束』してただろう、時任と」
「は?」
奇妙な空気が流れた後に、「いや、してたけど……」と彬は答えて怪訝に眉を顰めた。
「だから、何?」
「その約束の内容って――ああ、やっぱりいい。無理」
手を振った隆哉が額を押さえ、ブツブツと言葉を綴り始める。
「確かに高橋を助けたのは俺じゃなく時任だ。彼が押してくれなかったら死んでた訳だし、俺達も……。俺が『依憑』を叶えれたとは言えないけど。でもこれって、無謀……」
「彼、置いて逝った……?」
「へ?」
意味不明な言葉を吐いて、胸を押さえる。
訳が解らず視線を交わし合った彬と秀行が、その両側にしゃがみ込んだ。
「何? どうした?」
二人の問いかけになんの反応も示さない。根気よく待っていると、暫くしてやっと隆哉が呆然と言葉を吐き出した。
「嘘。――置いて、逝った」
「だから、何を?」
イラついた彬の声音に、硝子の瞳を向けて隆哉が低く呟く。
「あんた。何か『約束』してただろう、時任と」
「は?」
奇妙な空気が流れた後に、「いや、してたけど……」と彬は答えて怪訝に眉を顰めた。
「だから、何?」
「その約束の内容って――ああ、やっぱりいい。無理」
手を振った隆哉が額を押さえ、ブツブツと言葉を綴り始める。
「確かに高橋を助けたのは俺じゃなく時任だ。彼が押してくれなかったら死んでた訳だし、俺達も……。俺が『依憑』を叶えれたとは言えないけど。でもこれって、無謀……」
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