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蒼い約束
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「俺は只、あんたの依憑を叶える為に」
「あいつが死にたがってるのはな」
突然の俊介の言葉に、隆哉がビクリと反応する。地面に頬を乗せた俊介は目を閉じて、薄っすらとその口許に笑みを浮かべた。
「俺の所為だな。――あの時。彬が自分を責めるあの表情を見せた時、俺、一瞬思っちまったから。『このまま彬を、連れて逝っちまおうか』ってな。あいつにはそれが、判ったんだろう」
「でも高橋は、あんたの声は聴こえなかったって」
隆哉の台詞に、チロリと俊介が瞼を開く。
「前にも言ったろう? 声に出さなくても気持ちは伝わるって。あいつには、隠し事なんか出来ねぇよ」
この場面に不似合いな、ニヤリとした笑み。
それはきっと、俊介の心の奥底にある本当の『望み』だったのかもしれない。一瞬だけではなく、死んでからずっと抱いていた『想い』だったのかもしれない。――だから、隆哉には聴こえず、『親友』の彬にだけその『声』は届いた。
「それでも」
その笑顔から視線を逸らせた隆哉は、いつも通りの抑揚のない低い声で言った。
「あいつが死にたがってるのはな」
突然の俊介の言葉に、隆哉がビクリと反応する。地面に頬を乗せた俊介は目を閉じて、薄っすらとその口許に笑みを浮かべた。
「俺の所為だな。――あの時。彬が自分を責めるあの表情を見せた時、俺、一瞬思っちまったから。『このまま彬を、連れて逝っちまおうか』ってな。あいつにはそれが、判ったんだろう」
「でも高橋は、あんたの声は聴こえなかったって」
隆哉の台詞に、チロリと俊介が瞼を開く。
「前にも言ったろう? 声に出さなくても気持ちは伝わるって。あいつには、隠し事なんか出来ねぇよ」
この場面に不似合いな、ニヤリとした笑み。
それはきっと、俊介の心の奥底にある本当の『望み』だったのかもしれない。一瞬だけではなく、死んでからずっと抱いていた『想い』だったのかもしれない。――だから、隆哉には聴こえず、『親友』の彬にだけその『声』は届いた。
「それでも」
その笑顔から視線を逸らせた隆哉は、いつも通りの抑揚のない低い声で言った。
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